第8話呪紋失敗
黒い龍が鎌首をもたげた。
推定属性闇。
「よく来れましたね?」
大剣を軽々と肩に担いだクロエは
「悪りぃな。話すことはねぇ!その石もらい受ける!」
他のと違って三合目だけはボスが持ってるんだ。
「いいでしょう。かかってきなさい」
言葉と同時に辺りがより深い闇に覆われた。
かと思えば相手はちゃんと見える。
属性の空間ってだけで目眩ましではないんだね。
_私にはうっすらしか見えないけど。
カンカンッ
ガンガンッ
「ッ堅ぇなやっぱり」
そこそこ離れたこの場所からでもわかるほどの火花が散ってクロエの姿がその度に見える。
_?
クロエの髪が白くなっていた。
真っ白に染まった髪に混じって見えたのは、藍色の髪。
_それにあれは目?
閃光のように二つの蒼い光が揺らめく。
それで大体の動きはわかった。
そこに火花が散ってまるで花火のようになっていた。
「手伝ってくれよ!」
あ、ごめんなさい。
私も微力ながら戦闘に参加する。
「勇者の呪紋。使い方は?」
何それ?
「ッわかった。俺が教えてやるよ!」
言ってクロエは首元に手を当てた。
ベタッとした自分の血を見て、
「ッ少し食らったか」
さっき食らったブレスが避け切れなかったらしい。
_そんなもんですむの?
ドラゴンのブレス浴びてあちッですむんだ。
「受け継いではいるよな!?」
龍の攻勢を巧みに避けながら私の言葉を遮ってクロエは言う。
自信がない私は
「王家の紋章なら「それだよそれ!」
被せぎみにくる言葉。
かつての勇者は各国の代表みたいなものだったので、それからは王家の紋章が勇者の呪紋とされている。
それよりあんまり人に見せられるようなとこに貰ってないため、「ほらっ」とは見せられない。
_右胸付近。
と言い訳じみたことを言っているが要するに谷間だ。
わざわざ選んでそんなとこにつけていたら王様は変態ってことになってしまう。
「俺が触りにくいようなところか?」
察してくれたクロエは助け船を出してくれる。
_やっぱ全部聞こえてるワケじゃないんだ。
黙って私は頷く。
「仕方ない」
コイツの目は俺が引きつけておくから、そこに指を二本添えて王様から教わった言葉を思い浮かべろ!
したら体が熱くなって下から光に照らされるようになる。
最後に髪の色が変わって終了だ。
その間指を離すなよ?
呪紋の使い方は以上だ。
おっと危ねぇ!
「試練だと言ったでしょう?
そんな素人を連れてきて一体どういうつもりですか?」
クロエは嘲った。
「ッ随分喋るじゃねぇか?」
余裕ないんじゃないの?
と言ってクロエはさらに攻勢を強めた。
クロエが足止めをしてくれている内に、私は胸に指を当ててみた。
じっとりとした嫌な汗が指に絡む。
_これ大丈夫なのかな。
暗唱し終わる頃に、背中がじわりじわりと熱くなってきた。
しかし、嫌な熱さではない。
むしろ、体が軽くなる感じの熱で心地よかった。
コォォォォォ
下から光もきた。
気を落ち着かせて最終行程にに入る。
と光が消えた!
「何やってんだ!」
少し圧されながらクロエは私の状況に驚く。
えっともう一度。
私はまた胸に指を当てて最初からやる。
しかし、キャンセル。
_アレ?
マジで?
勇者の呪紋使えないんですけど?
おかしいなぁ。
言ってる間にクロエが吹っ飛ばされて私のところまで転がってきた。
_髪の色が戻ってる。
クロエが倒れて私に目を向ける黒龍。
「ふぅ」と鼻でため息。
「勇者気取りがこんなところまで連れてこられて大変でしたね。
貴女はかかってこないのですか?
呪紋に頼るより、まずは自分の力だと私には思えますが?」
全くその通りだった。
瞬間、深く頭を下げた私は、
「勢いだけで来てすみませんでした!
出直してきます!強くなって私一人でも貴女に勝てるくらいに!」
言葉と同時に私は龍の玉座を抜けた。
「期待していますよ?」
勇者カナのいなくなった部屋で黒龍は呟くように溢した。
「がんばれよ」
クロエはうつ伏せたままその言葉に継いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます