第6話輝石の在り処
かくしていきなり世界遺産級の山を登ることになった。
のはいいが一合目から寒い!
名前から察するとさぞ熱いんだろうと思ったけど、違った。
「山の天気は変わりやすい」
_限度があるよ。
いくらなんでもこれはと思った。
クリューも羊さんも何で涼しい顔なの!
二合、三合、四合、山頂とそれぞれ環境が違うのだとか。
それぞれに隠された輝石を見つけて山頂に行く必要があるらしい。
私は早くも走馬灯が見えはじめていた。
羊さんは小さな体には不釣り合いなほど大きな斧を振り回し、クリューは護身用だろうか二丁拳銃型<?>の恐らく魔弾を撃ち出すタイプのもの。が宙にプカプカ浮いていた。
_何かの魔法具かな?
私はお店の残り物。
在庫といえば聞こえは悪いが、売り物にならないのではなく、しないパターンのものだった。
曰く紋章付きの一級品のロングソード。
鍛冶屋さんの帽子は闘いの中でよりワイルドになっているように見えた。
_その姿は闘牛にほど近い。
私を差し置いてバッタバッタと斬り倒し、後ろに転がってきた死体を避けながらクリューが残ったヤツにトドメ、それでも残ったヤツを私が相手するといった布陣だった。
因みにクリューはまだスマホを見たままだ。
よそ見しながら闘っててこんなに強いとかどゆこと?
もう二人で魔王倒せば?
「それは無理」
え?
思ってたことがバレた。
「ここの連中は弱いからね。
だからこんなことができるんだよ」
いつの間に戻ってきたんだ闘、、、羊さん。
そういや、一合目でこれだから街の方は、、、
「街は街、ウチはウチ」
マジで?
街は街の人達で守れるらしい。
自警団でもいるのかな。
「いないよ?」
「ウチの若ぇのが何とかしてるよ大体」
まぁ色々あるんだろう。
_もうツッコまない。
「ところでどうだいレベルの方は?」
聞かれてもわからない私が首を捻ったら
「後ろ向きナ」と言われる。
素直に背を向けてみると、羊はメェメェ文句を言いながら私の首筋あたりを見て微妙な顔をしたまま、
「6レベルか」と呟いた。
そりゃこぼれ球処理しかしてなかったからそんなもんだろうと思っていたら、
「しゃーねぇ、少し回り道すっか」
奇しくもそれは丁度回り道しなくちゃと計画していた付近だった。
輝石というアイテムを集めずに祭壇まで登っても意味はない。
5つの輝石なしに祭壇まで上がっても祭壇は動かない。
二合目付近でそのことに気づいたクリューが、私達を一旦止めてミーティングを行った。
「ひょっとしたらこのままいっても意味ないかもしれない」
一人そう呟くとクリューは
この時初めて三人でスマホを見ることになった。
そしてあることに私だけ気づく。
_バッテリーが減ってない!?
むしろ回復していた。
スマホが辺りの
_納得してはないけど。
呼吸してるの!?
放熱しながら足りない電気を補充して、、、
いやいやいやそんな高性能じゃないでしょ?
少なくとも私の知ってるスマホにそれは無理だった。
_あるとしたら。
太陽電池?くらいかな。
太陽くらいはここにもある、、はず。
昼も夜もある。
強い
環境が似通っているおかげで私も普通に生活ができていた。
ところでクリューはマップアプリを開き、解説を入れてくれていた。
スマホの操作は私より早いかもしれない。
わかりやすく作りこまれたマップにはトラップやアイテムのあるところを描き込んでくれていた。
_イラスト可愛い。
試しに指でつつくと噛まれた。
「ッ」
予期せぬ痛みにびっくりした私は
「イラストじゃないの?」
「うぅん」
クリューは首を横に振った。
それよりクリューの教え方はうまかった。
身ぶり手振りも加えて、ものすごくわかりやすかった。
前に通っていた塾の先生によく似た教え方で、じっくり染み込むように入ってきた。
_質問する必要もなかった。
クリューのおかげで打ち合わせはすぐ終わって今に至る。
_寄り道は決まってたんだよね。
今思いついたみたいに羊さんは言うけど。
羊さんは素知らぬ顔で大斧を担ぎ先頭を歩き、、、
「メェ?」
_わざとなのか?
可愛いからまぁいっか。
瞬間、クリューの殺気を感じた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます