第4話はじめの街は、、、

「えっとまずは」

 広大な草原を見渡して私は独り言のように呟いた。


「こっち」

 クリューが裾を引っ張ってきた。


_クリューの声結構キレイだよね。

 久しぶりに仕事モードのクリューの声を聴くと透き通ったいい声だと思った。


 ところで体格的にだいぶ差のあるクリューの背は私のお腹辺り、なので私の裾を遠慮がちにつまんで歩く。

 すると、


_意外に歩きにくい。

 歩きにくいので、


「ちょ、ちょっと待って」

 たたらを踏みながら、


「良かったら地図とか読んでもらえるかな?

私こっちの地図って読めないし」


 と困った顔をしてみせる。

_泣くかな?


 事実こちらの地図記号は知らないものばかりで、同じ記号があっても必ず「?」がついていた。


_そもそも何で地図記号が表示されるんだろう?

 私が余計なことを考えている間に、クリューの瞳孔が一回開ききった。


「わかった!」

 一瞬ムクれたように見えた顔がパッと咲いてクリューは嬉しそうにそう言った。


 ウチから持ってきたというより持ったままになっていたスマホの地図アプリを開く。


 しばしの読み込みの後、辺りの地図が何故か立体で表示された。


_このアプリそんな機能あったっけ?

_まぁいっか。


 それよりどうやらこの世界の魔素マナを電波と認識しているようで、電波には<?>はつくものの、安定していた。


 「♪」と漫画なら表示されそうなクリューの表情はとても満足そうだった。


 そして明らかにスピードが上がった。

「いや、ちょっ」


 置いていかれそうになった私は焦ってその後を追いかける。


 スマホを見ながら歩いているはずのクリューの速度はどんどん上がっていった。


_まぁ障害物もないしね。

 でも、魔物はいる。


 普通ホームタウン近郊でも魔物くらいは出る。

 自分の部屋から着の身着のまま出てきたため、武器は勿論防具らしきものもなかった。


_雑魚でも倒されるかもしんない。

_学校指定の制服で何ができんの?


 なんて考えながら歩いているとあっという間にクリューを見失った。

 走る。


 陸上部のスニーカーなので走りやすいが、辺りは砂混じりの草原なので、適してはいない。


 それでも歩くよりは速く、すぐに追いつくことができた。

「クリュー待ってよ」「ここ」


 クリューが指した方向を見ると、、、


 いきなり遺跡ですか!?

 もうちょっとレベル上げとか装備整えたりは、、


「剣がある」

 丸腰じゃねぇか!


 それにしても近かった。

 徒歩5分駅近。じゃねーよ。


 まぁ近いとこに遺跡があるってのもあるよね。

 しかし肝心の街が見当たらない。


「ここはじめの街」

 ふぇマジッすか?


 見た目世界遺産級の岩山。

 深い岩窟のような入り口はまるで鍾乳洞だ。


 その姿はどう間違っても「はじめの」ではない。

_村人とかじゃなくて魔物出てきそう。

 鍛工も兼ねた街だから装備も揃うのだとか。


 実は城に装備を卸している得意先なのだとか。

_クリューが何か自慢気だけど、依頼してんのキミじゃないんでしょ?


 たしかにメイド長にはそれくらいの権限はあるらしいが、発注するのは年齢制限の壁に阻まれるらしい。


 当然ながら皇室の口利きだった。

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