魂の昇華

U.E.500/1/28

 夜。東京の中心部に聳え立つネットワーク通信タワーの頂上が突如として爛々と輝き始める。「タワー自体が発光しているのではない」というのはそれを(比較的)冷静に観測していた人々は理解した。なぜなら、タワー自体が光るのであれば何もない頂点のみではなく地上から666メートルの地点より上部、高度1000メートルに達する最上部まで全てが光らないとおかしいからである。

 ただ、それを見抜いた人々は一定数存在してもその光の正体を理解していた人間はほんの一握りである。その光の裏に存在する計画を理解していた人間の一人、その計画の主導者とも言うことができる茶髪の少女はその光が収束するまでを廃墟のビルの屋上から眺めていた。

「よし。」

 光の収束を見届けてから茶髪の少女――佐藤恵吏えりは呟く。恵吏は振り返って後ろで立っている白髪の少女と目を合わせる。白髪で碧眼の彼女が恵吏を見つめるその目は、心配なのか、怯えているのか。

 恵吏は微笑んで白髪の彼女――朝倉あさくらあかりに向かって言う。

「ようやく、始まるんだよ。」

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