武力行使

統一暦499年12月2日午前11時2分

「どういうことですか?」

「申し訳ありません……。彼女らを追っていた、ということくらいしか判明しておらず……。」

 不機嫌なエルネスタ。憔悴した栖佳羅。

「……ちょうど今、情報が入りました。」

 動画だった。アカリたちを追っていた隊員の視点カメラが最後に捉えた映像である。

「……これは……。」


統一暦499年12月2日午前11時10分

 紅音を抱えた聡兎が恵吏たちの元に駆け寄ってきた。

「…………?」

 頭部から流血して倒れているアカリ、右半身を強打したと見られる恵吏、恵吏の目線の先には頭部が破裂したようで首から上のない死体の山。

「灯が……。」

 恵吏は小さく呟くが、それ以上は何も言わない。

「……この先に山小屋があるのを見つけた。とりあえずそこに行こう。」


統一暦499年12月2日午前11時15分

「彼女は想定以上に危険です。何としてでも無力化し、ACARIを再開させなければなりません。……武力行使も検討しましょう。」

 緊急の会合でエルネスタは言った。


統一暦499年12月2日午前11時30分

「知っての通り、ACARIは動作を停止した。理由は現時点では不明。でも、理由なんて重要じゃない。私たちがやるべきは、ACARI運用開始前同様の仕事。ただそれだけ。」

 在理沙は自身を代表として緊急で招集された「ネットワーク管理機構(仮)」のメンバーにチャットでそう告げる。

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