決闘
統一暦499年10月31日午後5時11分
苑仁は剣を握りなおす。
「僕は僕のためにお前と戦う。だから僕を止めたければ僕に勝ってくれ。」
「……本当にそれでいいのか……?」
聡兎は懐中電灯のような円柱を取り出した。側面についているスイッチを入れるとその先端から長いプラズマの刃が発生する。古代のSF映画で言うところの「ライトセーバー」に当たる。
「ようやくやる気になってくれたか。それでこそ僕が認めた人間だ。」
ライトセーバーを構えた聡兎は相変わらず無表情のアカリに言う。
「つーわけで、君は下がっててくれ。俺は抗鬱薬くんと戦わなきゃならない。」
しかし、アカリはむしろ前に出てきて言う。
「あなた一人で彼と張り合えるとでも思っているんですか?無謀というか、こう形容するのは少々憚られるのですが、馬鹿としか思えません。私の演算能力で補助することでようやく肩を並べられる程度では?」
「でもな、これは……」
「分かりません。決闘なんて非効率で明文化されていないルールを守る必要はどこにあるんですか?」
「……事実陳列罪って知ってる?」
「彼の思想は危険です。協力させてください。」
聡兎はため息をついた。
「……というわけだ。どうする?抗鬱薬くん?」
剣を構えたまま苑仁が言う。
「僕としても女子供をいたぶる趣味はないから下がっていてほしかったんだけどね。彼女がそう言うなら仕方あるまい。一瞬で終わるより手ごたえがある方が楽しいしね。」
「……言ってくれるなあ。」
「しゃがんでください。」
その直後、アカリに膝カックンされた聡兎の頭上を覚醒した草薙剣の斬撃が通り抜けた。
「命拾いしたな。」
苑仁はそう呟いた。
「分かったでしょう?あなた一人では彼に敵うわけがない。だから……私に体を任せてください。」
アカリの言葉に聡兎は首を傾げる。
そんな聡兎にアカリはいきなり抱き着く。思わず聡兎は振りほどこうとするが、
「じっとしていてください。通信に支障が出ます。」
抱き着かれるのと同時に聡兎の脳内に莫大な量のデータが流れ込む。
「私があなたを操作します。力を抜いて私に体を委ねてくれませんか?」
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