現人神

統一暦499年8月15日午後3時12分

「ところで……。不躾であることは承知なのですが、三種の神器をお借りすることはできますでしょうか?」

 苑仁うつひとが装置で測定している待ち時間に朝倉輝はそんなことを言い出した。

「仰っていることの意味は分かっていますか?三種の神器は私たちが古より管理してきた重要な文物。長く一般に公開したことすらありません。この私ですらその実物を目にしたことはありません。」

「まあまあ、私もそういうことは理解しています。理解した上での、これは交渉です。」

 苑仁を宥めるように輝は言う。

「神……なんて突然言っても信じないでしょう。ならば、天皇の威光の復古……と言えばどうでしょう。」

「どういう意味でしょう。」

「そのままの意味です。天皇が現人神として信仰されていた時代に戻すのです。」

「未だに我々を特別視してくださる方は存在しますが、かつてのように広く信仰を集めるほどの力が残っていないのは私もよく理解しています。そんなことできるわけがないでしょう。」

「可能です。実際に神になればよいのです。」

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