ACARI
あさねこ
「はじまり」編
始まりの終わり
統一暦499年7月??日??時??分
暗闇に浮かび上がる、ぼんやりとした明かりのついた培養器。その中に満たされた半透明の液体に浮かぶ白髪の少女の頭部には、いくつもの電極が貼り付けられている。
暗闇の中で一人、培養器の行っている作業の進捗を示す画面を見つめる茶髪の少女が腕を組んで立っていた。少し苛立っているのか、右手の人差し指を左腕にぺちぺちと打ち付けている。
……85%…………90%…………95%…………………………100%
「
茶髪の少女が勢いよくガラス製の培養器の蓋をこじ開け、半透明の溶液に両手を突っ込み白髪の少女の体を引きずり出す。頭の電極がポロポロと外れる。
「……あ……あう……うう……」
弱々しい声でうめく少女が少し開いた目は綺麗な碧眼だった。
「まだ肉体に慣れてないのか……」
少し安心したように茶髪の少女は呟く。
直後、壁を伝わって固い金属の床を走ってくる足音が聞こえてきた。足音からすると、来たのはどうやら1人だけらしい。
「もう誰か来た?足止めのダミー情報はもうバレたの?……1人と言えども見つかったらまずいことには変わりない。急がないと。」
茶髪の少女は培養器の中の少女を抱き上げ、そのまま走り出そうとするが、一糸纏わぬ姿でポタポタと液を滴らせる体に目を向け、自分の着ていたパーカーを少女の体に被せる。そして、茶髪の少女、佐藤
「畜生……!」
運動に慣れないためか足の遅い、白髪混じりのその研究者は広い研究所内を走り、ようやくそこに辿り着いた。
しかし、そこにあるのは扉の開け放された生体調整室と、その中の何かに使われた痕跡のある一基の培養器。急いで装置の使用履歴を調べるが、自動データ消去プログラムが仕込まれていたのか、すべての痕跡は消えていた。少し雑ではあるもののやるべきことはしっかりとされていた。
額の汗を拭いながら時代遅れの白衣を纏った研究者は呟く。
「まあ、いいだろう。いずれ起きるべくして起きたことだ。」
ここから、新時代の神話の激動が始まる。
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