第11話 聖者の役割
仕事を終えた後、達夫は良子のいる病院へ向かう。
電車を降りて歩く。
気温が5度というのに全く寒さを感じない。
寧ろ暑すぎるくらいだ。
かならずプロポーズをうけてくれるだろう。
それはわかってる。
でもこの緊張感がぬぐえない。
顔が熱い。
脇には嫌な汗をかいている。
病院が見えた。
病院の入り口をはいる。
受け付けをすませる。
エレベーターに前まで行く。
エレベーターのボタンを押す手が震える。
エレベーターで上がる。
右脚が震える。
エレベーターを降りる。
良子のいる病室の前まで行く。
深呼吸をする。
病室の扉を開ける。
良子の両親の顔をみる。
顔が赤くなる。
病室の扉を閉める。
「今日のプロポーズはやめよう。」
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<<リア宅>>
「それで、プロポーズ失敗ですか、あ、それ、そこに置いてください。」
「おーけー。いや、失敗じゃなくてしなかっただけだよ。日を改めてするよ。今日は都合が合わなかっただけ。」
「別にしなくてもいいのになぁ」
「クリスマスイヴもあるしね。昨日の今日で思い立ったまま行ってしまって、計画性がなかっただけだから。」
「クリスマスイヴか...日本では恋人と過ごす日なんですよね?」
「うん。日本人はみんなだいたい無宗教だからクリスマスなんてもともと関係ないけど、まぁ何かとイベントを催して儲けようっていう企業の戦略なんだろうね。ヨーロッパでは違うんだっけ?」
「家族で集まるのが一般的ですね。日本の正月みたいなものですよ。」
「正月か...」
「それで、最後でいいです。あとは自分でできますので。」
「わかった。それにしても、やっぱり変なもの多いよね。植物いっぱい」
「全ていざという時に必要なものばっかりですよ。後は私は純系魔女なので、引き継いだものが多いですが。」
「いざという時か。そういえば、なんで俺が『聖者』で、君と契約を結ぶとどうなるの?確かあのばあさんは制約があるって言ってたきがするけど...」
「私は世界に9人しかいない特別な魔女で、世界の魔女を統べるために重要な役割を担っているのですが、私は半年前に純系の魔女になったばかりで、魔力をまだ本来の形に発揮できない状態なんです。純系魔女はそれぞれ『聖者』と契約することで、本来の力を発揮することができるんです。契約した『聖者』は偉大な魔女と契約しているのですから、当然身の危険があるということです。」
「ってことは契約しても危険なだけで、何も得なことないじゃん。」
「いいえ。逆にいえば、私の魔女の派閥を自由に使う権力をもつことができます。それともう一つは『聖者』の力も引き出すことができるのです。」
「『聖者』の力を引き出すって?」
「達夫さんは生まれながら聖なる力をもっていて、いま眠っているの状態なんです。人を癒し守る力で、攻撃的な魔力とは対をなすものです。」
「そう言うのって信じるの難しいよね。」
「実感がないとそうかもしれませんね。実感してみますか?」
そういうと、リアは達夫に近づいていき、肩に腕を回して顔を近づけた。
達夫は心臓が速く脈を打っているの感じた。
「ちょっとストップ!!まだ今は、今日はいいや。」
「
リアは可愛く笑った。
「君は...」
「ところで、私もクリスマスイヴにデートしたいなぁ、25日は達夫さんの誕生日だし、時間ありますか?」
「ちょっと今日は決められないので、また明日にしよう。」
達夫は自分のペースが全くとれないので、退散することにした。
「そうですか。残念。もう一押しだったのに...」
リアは小悪魔的に笑った。
「もう少しゆっくりね」
「泊まっていってもいいですよ?」
「だから君は... じゃーおやすみ!!」
そういうと達夫は逃げるように帰っていった。
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