第12話 12月19日 朝


「ピンポーン」


達夫の家の呼び鈴がなる。達夫が靴を履きながらドアを開けるとリアが立っていた。


リアはブロンドの髪をアップにして黒のロングコートに黒のハイヒールと、いかにもキャリアウーマンに見えるいで立ちだった。その姿はまさにファッション誌の表紙を飾るモデルである。


「おはようございます。さぁお仕事いきましょうか。」



達夫とリアの出勤が始まる。



「朝一緒に出勤していいものなんだろうか...」


「いいんですよ、将来の伴侶なんですから。」


「いや〜でも見られたら同僚達の反感を買うと思うんだけど...」


「家が隣で、しかも一緒のプロジェクトなんですからしょうがないじゃないですか。」


リアは可愛いく笑った。


「ところで、昨日言ったクリスマスの件考えてくれました?」


「ん~クリスマスイヴは振替休日で休みだけど、区で催されるクリスマスの催し物に参加する予定で、良子と一緒に演奏するんだけど...それとプロポーズもしなきゃいけないし...」


「そうですか...それではその催し物に私も参加しようかな。あ、別に邪魔はしないので心配しないでください。観客としてみているだけですから。一般の方も参加されるんですよね?」


「うん。特設会場でやる小さな会だけどね。」


「達夫さん演奏されるんですね。楽しみです。ちなみに楽器は?」


「バイオリンだよ。二人ともね。」


「そうなんですね。二人は趣味つながりなんですね。」


「うん。大学時代からね。あの頃は時間を気にせず一緒に弾けて楽しかったなぁ」


達夫はその頃を思い出し、顔がほころんだ。


「惚気はそのくらいにして下さい。」


そう言うとリアはいきなり達夫の腕に抱きついてきて、上目遣いで「嫉妬します。」と言った。


達夫はその表情が「可愛い」と思ってしまった。


「腕組むのはまずいでしょ。」


「いいんですよ、将来の伴侶なんですから。しかも一緒のプロジェクトなんですからしょうがないじゃないですか。」


「それは関係ないでしょ!」


「駅まででいいでいいですから。これくらいドイツでは一般的ですよ。」


「ここドイツじゃないんだけどなぁ」


嫌ではないと思ってしまう達夫がいて、結局寒いからという理由で二人は駅まで腕を組んであるいていった。



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