第6話 純系の儀式


場所: ドイツ、ハルツ地方にあるブロッケン山

日時: 4月30日の夕暮れ


Walpurgisnacht(ヴァルプルギスナハト)が始まる。

Walpurgisnacht(魔女の夜)は魔女達の年に1度の祭である。


しかし今回は特別な意味を持っていた。


Lia Krull(リア クルル)が純系の儀を受けて、はれて純系魔女になるのである。


純系魔女になるには順当な継承者であることが必要で、その順当な継承者の中から3人選ばれる。

純系魔女が死なない限り500年毎に行われ、継承者の寿命、魔力を伸ばす。それによって、魔女の知識、歴史を後世にしっかりと受け継がせ、魔女達を統制するためにも重要な役割を果たす。純系魔女が500歳になると、その純系魔女が継承者を選定し、純系の儀を行う。そして純系の儀を行った純系魔女は責務を全うし、魔力を失い、やがて死ぬ事になる。


ドイツ、フランス、イギリス系の3系統の純系魔女が存在し、その系統毎に3人の純系魔女たち(計9人)が現代の魔女達を管理統率していた。その中でもドイツ系が本家でブロッケン山に本部をおいていた。


今回、リア クルルが純系魔女になることは、現代の魔女達にとって重要な意味を持っていた。そのため、世界中からこの日のために魔女達が集まった。3系統の派閥の勢力関係を決めるのが純系魔女なだけに、今回どのようなものが純系魔女になるのか、全ての魔女達が注目していた。


今回純系の儀を行うSabine Krull (ザビーネ クルル)は穏健派として480年間3つの派閥をうまく取り持ってきた上、劇的に変わった人間社会に適合し、魔女の近代化を推し進めてきた偉大な純系魔女である。



ブロッケン山の頂上には祭壇が建てられ、火が炊かれている。

炎の横には正装である赤のガウンをまとった8人の純系魔女達が立っていて、祭壇の下では多くの魔女達でごった返していた。


始まりの鐘がなり、ザビーネが登場した。


「これより、純系の儀を執り行う!!」と大きく太い声でザビーネが叫び、観衆は「おぉーー!!」と叫び返した。


祭壇の袖からリアが現れ、ザビーネの前まで行って跪いた。


ザビーネはガウンから大きなダイヤのついた首飾りを取り出し、


「Heiligen Geister von Feuer, Wasser, Erde und Himmel, ist das der neue Erbe meiner magischen Kräfte. Bitte stimme mir zu.」


と唱えた。


すると空や森が光りだし、その光が首飾りの大きなブルーダイヤに吸い込まれてダイヤが光り始めた。そして、その首飾りを跪いているリアの首につけた。そして、その瞬間にはリアは青い光に包まれた。


「これからリアは純系魔女だよ、みんなよろしくやるんだよ!!」

とザビーネが叫び、観衆はまた「おぉーー!!」と叫び返した。


ここに純系魔女リア クルルが誕生したのである。


花火がいっせいに打ち上がり、純系魔女の誕生を祝福していた。中にはホウキに乗って飛び回っているものもいる。


みな喜びの表情を浮かべているが、全てというわけではなかった。

ウワベだけ喜びの表情を見せ、内心、良からぬ事を考えている者もいたのである。


純系魔女の中にも...



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