第7話 12月16日の終わり

≪タクシー内にて≫


「それにしてもなんであんなところで立っていたの?俺があそこに行ったのなんてまったく行き当たりばったりだったのに。」


「それはこれのおかげです。」


そう行ってリアは達夫の首の後ろに手をのばして、1cmもないくらいの小さな虫をとって見せた。


「昨日大おば様に仕込んでもらっておいたんです。GPSみたいなものですよ。特別な周波数を羽で奏でるので、達夫さんがどこにいるか知らせてくれるんでよ。便利でしょ?」


「そんなものがついていたのか。」


「まぁでも、これからはいつでも連絡できるように携帯のアドレスを交換してください。携帯だったら通話もできるし、より便利ですから。」


「え?」


「嫌なんですか?」


「いや、そんなことはないよ。」


ふたりは、携帯のアドレスを交換した。


「ところで、どうやって良子を治してくれるの?魔女ってのは何でもできちゃうの?」


「魔女もできることとできないことはあります。たとえば、この虫を経由で達夫さんの動きは把握できますが、携帯のように直接話す事はできません。この点は携帯の方が便利ですよね?魔女は昔からの知恵と自然からのエネルギーをうまく使って、魔法というものを発動させているんです。だからもし、良子さんが亡くなったりした場合はエネルギーの移動ができないのでかなり難しいことになります。」


「そうなのか。なんかイメージと違うな。」


「そうだと思います。昔から魔女は悪役ですべてが誇張されてますから。」


リアは可愛く笑った。


「病院について、私がりょうこさんを治している間に、少しでいいので人払いをしてもらえますか?いろいろ問題になると困るので。」


「わかった。くれぐれもお願いする。それにしても、今日はなんて日なんだ」


そうこうしているに二人は病院についた。



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二人はノックをして良子のいる病室へ入った。


「お父さん、良子の容体は?」


「別段かわりないよ、眠ったままだ。その方は?」


「えーっと...」


「りょうこの友達です。りょうこ...」


リアは涙目で良子をみつめた。


「お父さんしばらく、ふたりにしてあげてもらえますか?」


「もちろんだ。」


そういって達夫は良子の両親を病室の外につれだした。


リアはみんなが外に出たのを確認するとカバンの中から小瓶をとりだし、なかに入っていたスライム状の生き物を良子の唇にぬった。


「Los!」とリアがいった途端に、スライム状の生き物は良子の口の中へ入っていった。


その後、「Erholen Sie sich die Wunde」と唱え、リアの手からは青い光がはなたれ、良子の体を包み次第にその光は消えていった。


「Fertig(おわった)」といい、リアは達夫をよんだ。


「達夫さん、治療はおわりましたよ。明日になったら目を覚ますでしょう。」


「本当なのか?」


「こう見えても私は魔女なんですよ?」


「そういわれてもな...でもありがとう。」


「達夫さんちょっと」といって手招きした。


近寄って来た達夫の肩に腕をまわして、リアは達夫にキスをした。


「今日はこれで我慢しておいてあげます。」


リアは可愛く微笑んだ。


「ちゃんと明日は休んで、月曜日には仕事に行くんですよ。」


そういうとリアは病室を出て、良子の両親にあいさつを済ませ、帰っていった。


「今日はなんて日なんだ」と達夫はつぶやいた。


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