第5話 ブロンドの髪の女
達夫は昨日同僚といった居酒屋に行き、昨日と同じ帰り道を辿った。
「確かにこの道だ。」
しかし、昨日あったはずの場所に地下に行く階段もなければ、バーの看板すらなかった。
「どういうことだ。やはりあれは夢だったのか...」
万事が尽きて達夫は力尽きてしまった。
「くそっ」
達夫は仕方なく病院へ戻ることにした。帰る足取りは重い。
達夫が歩いていると、前方にいた女性が話しかけてきた。
「Excuse me, I'd like to go to Tama station, do you know how to get there?」
よくみるととても美しいブロンドの外国人女性だった。
「Sorry, I cannot speak English...」
そのブロンドの女性は達夫にニコッとわらいかけ、
「からかっただけですよ、達夫さん」と訛りのない、美しい日本語がとびだしてきた。
「え?なぜ僕の名前をしっているんですか?」
そのブロンドの女性は達夫にさらに歩み寄って顔を近づけ、
「昨日、大おば様からお話をお聞きになりませんでしたか?あなたのフィアンセです。はじめまして、リア クルルって言います。」
あまりの展開に達夫はあっけにとられた。
「あれ?昨日大おば様から、話はつけたから会っていいよって言われたんですけど...ずっと会いたかったんです、何せ私のパートナーになる方ですから。達夫さんイケメンでよかった~」
「あれは夢じゃなかったのか。ていうか今はそんなのどうでもいいんだ。悪いけど君とは一緒になるつもりはない、それに今は良子が...」
達夫は顔を曇らせた。
「りょうこさんというのは?」
「俺の彼女さ、だけど、今日事故にあって意識不明の重体なんだ。昨日君の言う大おば様が『運命』、『運命』っていうもんだから、今回の事故も何か関係があるのかと思って、あのばーさんを探してたんだ」
「そうでしたか。だからあなたの服は血がついているのですね。そうでしたか...」
リアに言われてよく見ると、上着はすでに脱いでいたものの、中に着ていたシャツには血がついていた。
リアは少し考えてこむ様子を見せてから、
「りょうこさんはどのくらい重症なんですか?私が治すことができるかもしれませんよ、魔女なので。」と言った。
「そういわれてみれば、あの話が本当なのであれば君も魔女って事か。非現実的なことは信じないたちなんだけど、この際それはどうでもいい、助けることができるなら是非力をかして欲しい...良子を愛しているんだ!!」
リアは一瞬少しムッとした表情を見せたが、また元の可愛い顔に戻り、
「フィアンセからそんな事を言われるのは嫉妬するので、へこみますが、フィアンセの悲しみを一緒に乗り越えるのもフィアンセの仕事ですから、できるだけお力になりたいと思います。」と言った。
様々なことがあって疲れ果てた達夫であったが、リアの言葉を聞き、また達夫に力が戻ってきた。
「是非お願いしたい。一緒にきてくれ!!」
二人は丁度通りかかったタクシーを捕まえ、良子のいる病院へ急いだ。
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