第2話 自分の運命


「さっき入ってきたときに、待ってたよっていっただろ?お前さんがここに来ることはもうすでに知っていたのさ。『決まっていた』と言った方が正確かな。」


と老婆はグラスにまた酒を注ぎながら言った。


「どういうことでしょうか。」

ウィスキーのせいか頭がぼーっとして達夫は少し混乱した。


「極東の地にきたる聖者と契約をもってこれを取り込み、子孫を残せという決まりがあってね。要はお前さんに魔女の子孫を残こすための種馬になって欲しいってことさ。」


「はぁ?僕は今日たまたまここにきただけですけど、これからまだひとが来るかも知れないし、人違いなんじゃないんですか?」


「くっくっく、そんな事はないさ。なにせここに来られるのは選ばれしものだけだからね。普通の人間には外の看板も見えないし、ここに入るドアさえ見えないんだからねぇ。」


「そんな...」


「お前さんの誕生日は12月25日だろ?そして後10日で25歳になる。」


「え?なぜそんな情報を!」


「当たっているのかい?」


「はい...」


「そうだろ?お前さんの生まれも、ここでこうしてアタシと会うと言う事も全て決まってる事なんだよ。お前の意思に関わらずね。」


達夫はショットグラスに手を伸ばして一気に飲み干した。


「僕にはれっきとした結婚を考えている彼女もいますし、魔女のための種馬なんてごめんです。それに貴方とですか?ありえなさすぎる!!」


「くっくっく、それは残念だったね。だがね、お前には朗報だよ。相手はアタシじゃないんだから。アタシはもう500年も生きたし、もうすぐ役目を終えて死に行く運命なのさ。魔女の寿命は人間のだいたい2倍くらいなんだけど、アタシみたいな純系の儀を受けた魔女は長生きで、その生命の終わりに、次の担い手対して純系の儀をして、その役目を繋げるのが役割なのさ。その純系の儀も、もう済ませたからね。お前の相手も時期に現れるだろうよ。楽しみに待っていな。それにお前さんにとっても悪い事じゃないんだよ。色々と制約はあるんだけどね。」


「現れるってどう言う事でしょう?制約って、いまの生活に支障が出るって事ですか?」


と達夫がそう言ったとたん、さっき一気に酒を飲んだせいか達夫の視界がぼやけてきて、強烈な眠気がやってきた。


「アタシたちの運命がかかっているから頼んだよ...」

朦朧として意識が遠のく中で、達夫の耳に老婆の声が残る。


「頼んだよ...」


そして達夫は深い眠りに落ちた。

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