第43話


「さっきの施設からの説明だ。試験で聞かれる事を中心に話すから覚えておいてね」

「...はい!お願いします!」

「うん、知らないと思うけど、あの施設の名前というか組織名は"ヘラルド・オブ・デストルドー"と言うんだ」



意味は理解できないけど、やばそうな名前だ。変な組織じゃない事を祈る。



「...ヘラルド・オブ・デストルドー」

「うん、長いからみんなヘラデスって縮めて言うんだけど、どんな人たちがどんな理由で集まってるかわかる?」

「...どんな人...?それは、名声を求めてとか、一攫千金とか夢見て集まってるのでしょうか?」



冒険者ギルド風ならそんなところだろう。



「ん〜正解と言えば正解だけどぉ、おじちゃんほんとに何も知らないんだね!めんどくさ!お肉っ!追加してほしいぜ!」

「ニコーレさんごめんなさい!」

「ほんとにそう!ん〜とね〜......そうだな〜......終焉の塔に入る目的は何か知ってる?」



それはエルフ先生から聞いた。



「深淵の赤霧に世界が覆い尽くされるのを防ぐためです」

「そうそう!近い将来、終わりを迎える世界を救うため。その最前線がこの都市、"テロス・カニエース・エンド"だよ。みんな縮めてテロカニエンと呼んでるんだ!」



ニコーレちゃんほんとかなぁ〜?

縮めるのが好きなだけじゃないの〜?



「...テ、テロカニエン」

「そう!っで!この都市、テロカニエンの最終目標は世界を救うこと!」

「はい。なんとなくわかります」

「因みに食べ物も塔の中の魔物とか植物とかを採ってきて都市によこしているんだ」



こんなでかい都市なのに畑とか見当たらないし、どうやって食料調達してるのか不思議だと思っていたが、塔の中から採ってきてた訳だ。



「戦えない一般市民、商売人を除いて、いかに塔の中で活躍できるかで立場が決まり、より深くまで行ける人が評価される変わった都市だ。ここまでいい?」

「はい。わかります」



「で、遥か昔から先祖代々塔の中を探検して世界を救う方法を探している人たちがいるのさ!」

「......先祖代々?」

「そう!それが貴族の人たちだ!」



ほほう。貴族たち頑張ってたのね。



「貴族達は、各々の家で独自で見つけた名のある神様を代々信仰していて、深淵の赤霧を捧げているよ。そして、その神様たちの恩恵が強いんだよ。おじちゃんも赤霧を捧げてその恩恵にあやかりたかっただろ?」

「...?...強力ならそうですね」

「でも、その神様に捧げられるのかどうか先祖の血か適正が必要みたいで、貴族たちも戦力増強のためにどんどん人を増やしたいのは、山々なんだけど、できないでいるんだ」

「は、はぁ...」

「だから、ここで産まれた人、外から入ってきた人みんなにどの貴族家の神様に適正があるか調べて、少しでも戦力を増やそうとしているんだ。おじちゃんもこの都市に入るときに調べられて、適正が無かったから"ヘラデス"にたどり着いたのだろう?」



へ?やった記憶ないけど!?そうなの!?



「...いぇっあなななぁっわっ!」

「ヴ??おじちゃん急にどしたの?」


っ!!あっぶねぇ!!思い出した!

リリス様にばらしちゃだめよ。って言われているんだった!!

調べられなくて良かった!!

ここは話しを合わそう!



「いえ!なんでもないですぅ!そ、そういうことだったのですね!は、は、ははい。て適正が無かったので、ヘラデスに案内されました!」



ニコーレさん嘘ついてごめんなさい!



「うん、そういうこと!つまり貴族家のどの神様にも適正が無かった。無適性と言い渡され、行き場の無くなった人たちがこのヘラデスに集まって名も無い神々を信仰しながらお仕事して生きているのだ!!わかったぁ!?」



テロカニエンは、つまり、落ちこぼれ集団ということじゃねぇか!!



「はぁい!わかりました!!ありがとうごさいます!」

「よぉし!テロカニエンの正体がわかったところで、次はどんなお仕事をしているか説明するぜ!お肉はまだまだ遠い!肉!」



お肉なのね。



「お願いします!ニコーレ先生!」

「先生!?先生だ!それでおじちゃんは掲示版の貼り紙の内容とか見たー?」

「いえ、まだ見てません...」

「うわぁ〜めんどくさいね〜!」

「本当にお手数をお掛けして申し訳無いです」



ニコーレさん眉毛を八の字にしてすごいがっかりしている。見ておけばよかった。



「う〜ん...口ばっかで説明してもわからないだろうから、実際に見ながら説明するね」

「すみません。お願いします」



ニコーレさんは立ち上がり、辺りを見渡す。



「おっ!ちょうどいいのがいるぜ!」



ニコーレさん見てる方向へ目を向けると、大きな集まりが出来ている。



金色の刺繍が施された黒いローブを身に纏った人が10人以上、横にも縦にも背丈の3、4倍大きなかばんを背負った人も10人以上いて、同じような刺繍が施され、統一感のある防具を身に着けている人が10人以上、さらに防具に統一性が無いゴロツキみたいな連中が30人以上いる大規模な集団だ。



「今にも行きそうだから、おじちゃん説明は飛び入りしてからにするよ!ついてきて!」



ニコーレさんはそう言い終わると、お尻をプルンプルンさせながら集団に向かって走る。

速い!



引き離されないように全力で走るがどんどん距離が離れていく。



ニコーレさんに追いついた頃には、ニコーレさんは既に黒ずくめのローブの人たちの前で跪いていたので、同じような格好を急いで取る。



「会議中のところ失礼いたします!ニコーレと言います!飛び入りで低層にてお力添え致したい!報酬は現在教育中につき遠慮いたします!」

「...そうか。助かるよ。よろしく頼む」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます」



周りも特に気にすることなく、何事もなかったかのように、視線をもとに戻す。



「おじちゃん、動きがあるまで待機だよ。いこ」

「はい!」



ローブの集団から離れ、ゴロツキ連中が集まってるところで待機する。



「さっきの黒い人たちは"ビフロン家"の貴族様達だよ。比べ物にならないほど、とっても強いから変なことしないように気をつけてね」



あれが貴族だったのか。

たしかに雰囲気が違うような気がする。



「もちろんです。話は戻りますが、貴族の護衛?がテロカニエンのお仕事ですか?」

「貴族達はとっても強いから護衛という言い方も違うんだけど〜...深層に辿り着くまでの道を作るというのが主な仕事かな〜」

「そういうことですか」



ニコーレ先生が強いと言うくらいだ。

確かに護衛は必要ないけど、彼らだけで塔を進めていたら、深層とやらに到達する前に赤霧を蓄積して、塔の攻略どころじゃ済まないはずだ。


そこで、無適性のあぶれもの集団に道中の敵は倒してもらうことにより、深層を赤霧が蓄積されていない万全な状態で探索できるということか。



「...つまり、貴族様のお手を煩わせることなく、魔物を処理して、貴族の方々の赤霧を蓄積させず、深層まで送り届けることがお仕事ということで間違いないですか?」

「せーかい!よくわかったな!今回のお仕事はそれだ!他にもいろんな種類の仕事もあるけど、大体は同じような流れだ」

「わかりました」




「んぅ?」



ニコーレさんが耳をピクつかせる



「そろそろ行くみたいだぜ!現場の実際の動きは見ながら教えるから、ついてきて!」



かわいいニコーレさんの後を追う。

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