第41話

次の日



朝食を済ませ、昨夜尾行して発見した建物にへ向かい、堂々と中へ入る。


結構な人数がロビーのベンチあるいは椅子に腰掛け、グループで話し込んでいたり、掲示物の前で話し込んでいる。


何名かはこちらに視線を向けては興味を失せたかのように視線を元に戻す。


受付カウンターは今のところ、それほど混んでいない。





「はじめまして。この施設の利用方法を説明してくれる方はいますか?」


ブスな受付嬢に聞く。


「はい。新規でしたら向かって左側の窓口で対応しております。どうぞご利用くださいませ」

「わかりました。ありがとうございます」




「おはようございます。ここがはじめてなのですが、施設の利用方法を教えていただきたい」


ブスに言われた通り、向かって左側の窓口の手が空いている男性担当者に聞く。


「おはようございます。はい。利用方法としましては、掲示板に貼られた紙に記載された内容を把握したうえでその紙を剥がし、受付へ提出。依頼受理手続き致します。依頼内容を各々の実力と照らし合わせ精査し、問題なければ受注されます。依頼を記載されている期日までに達成してください。依頼主から直筆の署名、押印なり依頼完了の証拠をもらい、受付に提出すれば報酬を渡す流れです。ここまでご不明な点は?」


ふむ。要はテンプレですな。


「はい。依頼を失敗した場合の処罰は?」

「依頼難易度にも寄りますが、依頼内容が難しければ難しいほど失敗した際の個人の信用度が落ちますが、罰金は低額です。逆に、低難易度なほど罰金が増えますが、信用度はさほど落ちません」


そういうものか。


「信用度が高い低いで何が影響がしますか?」

「信用度が高ければ他の者と競合した場合に、必ずではないですが、信用度が高い方が受注され易くなります」


ふぅむ。


「信用度というのは仕事の達成率と言い換えても間違いない?」

「はい。また、信用度が高いものに生還率が高い依頼を受注され易くなるメリットがあります。逆に信用度が低くなるにつれて、依頼が失敗してもさほど影響が無いような、生還率が低い依頼くらいしか受注できなくなります」


優秀な人材を手元に残しておき、ミスばかりする使えないクズ野郎共はとっとと死ね邪魔だ。という恐ろしいシステムな訳ね。


「それでは、新規や新参者が不利ではないでしょうか?」

「それは大丈夫です。こちらで個人を特定するために身分証明を発行しておりますが、最初の依頼から10回までは失敗されても、こちらで保証致します。ただし、新規関係なく連続して依頼を5回失敗した場合、1ヶ月間依頼を受注が出来なくなりますのでご承知おきください。11回目の依頼から罰金、信用度に関わりますのでご注意ください」


結構厳しいな。



「次に…」



長い。



要は、新規がいきなり依頼受けるのもキツイだろうから、最初はこちらが指定した信用度が高い講師役に付いていき、慣れてきたら自分で仕事を受けて、そこから1回目としてカウントされ、11回目の仕事から評価しますよってところだ。

講師を頼める回数は4回。



「…戦闘に関する知識、終焉の塔に関する知識は、講師役に聞けば教えてくれますので、どんどん聞いてください。講師役は生徒役を引き連れて終焉の塔に入りますが、教育が主ですので低層までしか行かず、危険も少なく、高給なので人気の仕事です。また、講師役は生徒役が教育中に死亡した場合、信用度の低下が大きく、罰金も高額になるため、変なことをする人はいないと思います。ご安心ください」


それは初心者にとってすごく重要だ。

塔に引き連れられて、現場で置いてけぼり、殺害、略奪。報告では魔物に殺されたと報告にしてはいそうですか。残念ですねで終わらせられたらたまったもんじゃない。

責任持って連れ帰ってほしい。


「安心ですね」

「はい。4回目の教育の最後に生徒役に面接試験が受けられます。合格すれば、講師役、生徒役共に報酬を得られます。ここの仕事をしていくうえでの一般常識みたいなものですので、さほど難しくはありません。また、講師役がちゃんと仕事をしたのかを判断するために実施しております」

「不合格の場合は?」

「生徒役は特に影響はありません。合格報酬も防具が一式買い揃えられるほどの額ですので、合格するまで試験を受けたほうが賢明ですね」


おお!そんなにもらえるのか!試験に合格するのが一番の早道だな!!


「逆に講師役は生徒役が合格するまで若しくは生徒役が面接試験を放棄するまではサポートしなければなりません」


講師役頭の悪いやつに当たったら大変だな。


「また、講師役は指導方法に問題があったのでは無いか、そもそもちゃんと指導したのか、と色々と面談を受けることになりますね」


高額報酬なんだからしっかりやったのか?何も教えなかったんじゃねの?ええ?ということか。


「あぁ、生徒役に影響があるとすれば、講師役にさっさと合格しろと責めら続けることでしょうか。私の知っている範囲ですが、試験に落ち続けている人はいません。ご安心ください」


ちゃんと教えている講師役からしたら、さっさと合格するか放棄しろよ!ふざけんな!頭悪すぎぃ!!となるわけね。


「なるほど、大体わかりました。ありがとうございます」

「いいえ。他に聞きたいことはありますか?」

「早速講師を頼みたいのですが...」

「はい。ここの身分証はお持ちですか?」

「商業ギルドで作ってもらったものはありますが、それが使えないのであれば、ありません」

「では、お作りいたします。よろしいですか?」


各々違うのか。面倒くさいな。


「お願いします」


担当者が奥の方に消えて、何かを抱えて戻ってきた。


「では、この紙にご自分お名前を書きましたら血がまんべんなく染み渡るようにしてください」


クレジットカードみたいな大きさの硬い紙と短刀を渡される。

えっ。自分を傷つけるの怖いんだけど...



とりあえず、言うとおりにする。


「...紙に血が染み渡ったら、持ったままこの動物の口へ入れてください」


動物?

担当者は奥から小型犬くらいの大きさの丸い物体を持ってきてカウンターに乗せる。


「これは、ブラッドッグと言います。手から滲み出た汗、ニオイ、紙に染み付いた血の味などを覚えてくれる動物です。一番最初は手ごと口に入れますが、次回からは紙だけ口に近づければ大丈夫です」

「...は、はぁ...」


丸い物体がゆっくり回転して、こちらに向く。


豚の鼻だけをくり抜いて丸くデフォルメしたような薄いピンク色の丸い物体。

2つ黒い穴がある。


「どうぞ、紙を握った手を口に入れてください」

「............ど、どっちが口ですか...」

「.........お客様から見て右です」


言われた通りに、血を染み込ませた紙と手を右穴にかざす。


「.........ぁ。」


噛まれるとかそういうのを想像していたので、目を瞑っていたが、ヌメッと温かい感覚がしたので、目を開く。


左の穴じゃねぇかああ!!

間違えてごめんね!くち、左側だったのね!


「ブッ!ブヒッ」

「終わったようです。手を抜いてください」

「.........」


うわぁ...きったねぇ。


「身分証の発行は以上です。他にご質問が無ければ、講師役の手配を致しますがよろしいでしょうか?」

「はい、」

「また、講師役は原則、変えることはできません。」


ほーう。

最後まで同じ人に見てもらう感じなのね。


「はい。出来れば男性の方でお願いいたします」

「申し訳ございませんが、講師役の希望は受付けておりません。確認でき次第番号でお呼びいたしますので、お待ちください」


んだとぉ!?

番号札をもらい、呼ばれるまで待つ。



「番号札5番をお持ちの方、窓口…」


呼ばれたので、窓口へ向う。


「はい、今日の午後一番から講師役に空きがありますが、どうしますー?」


今度は軽い口調の女性担当者に変わる。


今日受けられるなら受けた方がいいな。

全然何もわかってないし。


「...ははい。そそれでお願いいたします」

「では、登録だけ済ませますので、身分証を鼻豚に嗅がせてください」


鼻豚?

あぁ?さっきの動物?

カウンター横にいたのね。


「はい」

「はぁい。では午後一番にこちらにお越しいただければご案内しますね。ありがとうごさいましたー」


今のブラッドッグはさっきのやつと同じなのだろうか?

私の匂いを覚えてる鼻豚は別の鼻豚と感覚が繋がってるのか?まぁそんなこと気にしても仕方ないか。




午後になるまで、適当に食事を済ませ、歯をものすごい磨いて、ものすごい身体を洗い、風呂に入り時間を潰す。


万が一女性の講師に当たった場合に備えるためと、馬鹿な連中にまたクサイクサイ言われるのを防ぐため、最低限のエチケットを行う。






午後


午前いた施設、名前聞くのを忘れた。にもどる。


「すみません。講師をお願いした者なんですが...」

「はい。ブラッドッグに身分証をかざしてください」


「...はい。では、講師役をお呼びいたしますので、その場で少々お待ちください」


誰か来るんだろう。緊張する。

男か、女性でもおばちゃんなら気楽なんだけど。






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