第40話

商業ギルドを出て、適当な飲食店に入り、食事をする。


「そういやぁ、"カーシモラル家"が潰れた話は聞いたか...?」

「ッ!!!っ確かだろうなっ!?」

「まじか!?どこで!?」


隣のテーブルの冒険者風のゴロツキみたいな若い男三人組が面白そうな話しをしている。


「35付近という噂だ...」

「え!?そんなとこで?」

「何があった?」


貴族のボンボン共の家が潰れた話か?


「結果的に盗み聞きになっちまったが、一人だけ末端が塔から帰ってきたそうだ。何かを言おうとして口から身体を裏返すように死んだらしい...」

「「は?」」


は?


「...ッツ、だから、中身の詰まった袋の外側と内側を裏返すと中身諸共飛び出るだろ?それが人間の口からはじまって中身を辺りにぶちまけたそうだ...」

「......?......っ!っそんなことありえるのか!?」

「...魔物の仕業か?こぇぇよ...」


なるほど。想像しただけで悲惨だ。


「貴族一家潰されるなんて相当やべぇぞ...」

「あぁ...あの貴族様が潰れたのだ。よっぽど何かやべぇ事に首突っ込んだのだろうよ」

「まっ、貴族様のことなんて俺たちには関係ないがな。とにかく飲もうぜ」

「それも、そうだが、あと少ししたら戻って今日の成果を報告するぞ」

「あ〜忘れてた。やべぇ、酒飲んじまったぁッハハ」


カーシモラル家とやらの貴族が権力争いに敗れたか、なんかやらかしたんだろうな。

というか貴族も終焉の塔に入るのか。


「話は変わるが…」


どうでもいい他愛もない雑談が繰り広げられる。





しばらく、しているとまた別の話題になった。


「...そういえば貴族で思い出した。おれんとこの親戚の息子が"ビフロン家"に入れたんだ」

「まじか...羨ましいな」

「...適正があったか...」


こんなゴロツキみたい連中でも貴族家に入れるのかよ。訳分からんな。


「こればかりは運だよな...」

「どうせ俺らは一生、"ネイムレス"さ」

「いや...まだここに入ったばかりだしそうと決まった訳じゃねぇ。実力次第で替えられるって言うから頑張ろうぜ」

「替えられるっつってもよぉ…」


ネイムレス?名無し?


俺らは一生名無しと言っていた。

名が付くやつもいて、それを命名しているやつがいるということか?

こんなゴロツキを集めて束ねてるような組織があるのか?

それこそ冒険者ギルド的なのが。

直接聞いてみるか?


いや、もしかしたらコイツらは裏の世界のやばい連中の下っ端の可能性もある。

目をつけられたら面倒くさそうだ。


「じゃ、そろそろ報告に戻るぞ」

「おう「あぁ...」」


よし、ご都合がよろしいようだな。ここはとりあえずコイツらが何なのか白黒つけるために尾行するか。やばそうな裏路地とかに入ったら、裏の世界の奴らの可能性が高い。その場で尾行中止、健全そうならそのまま尾行。





先に会計を済ませ店を出る。

三人組が店から出たところで、適度に距離を空けて三人組を尾行する。


終焉の塔を背にして、特に怪しい路地とか入る様子もなく、楽しそうに雑談しながら酔いを冷ますかのように大通りをゆったりと歩いている。

夜にも関わらず大通りを行き交う人は多く、尾行がバレることは無いだろう。




ふむこれは冒険者ギルド説が有力だな。

確かにこの都市に入ってから筋骨隆々の獣人からいかにも見た目がファンタジー魔法使いの人まで多種多様な人を頻繁に見かけている。

この都市ならあってもおかしくない。




10分ほど尾行したところで大通りに面した商業ギルドによく似た建物に三人組が入って行った。


商業ギルド程ではないが、大きな建物にも関わらずそう言った看板とか旗とか吊り下げていない。


「これは...当たりだな」


入り口からちらっと中の様子が見える。


尾行した三人組が長いカウンターの向こう側に座っている人となにやら話し込んでいる。



中に入って確認したいところだが、一応あの三人組とは隣の席だった。

もしかしたらここで顔を合わせたことにより、何かしらのトラブルに巻き込まれるかもしれない。


「......」


もう夜遅いし、もしかしたら私がここの施設の説明を求めた事により、受付嬢に残業をさせることになり、嫌われるのかもしれない。

今日は宿に泊まって明日の朝に改めて来よう。






適当な安い宿を見つけ、

汚え髭面おじさんは眠った!









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