第39話
「…あぁあぁぁあああぁあ〜〜!!!.........あれ?」
門を潜る直前で瞑ってた目を開けると、遺跡みたいなところにいて、石とか瓦礫に腰掛け休憩している大勢の人々に冷ややかな視線で見られていた。
ここはおそらく塔に入った時に遠くに見えた遺跡の中だろう。
どうやら、賭けに勝ったようだ。
戻れた!!助かった!!
「...ッウ゛オ゛ォッホンッ......ッカーッペッ...ヴン!ヴォホンッ!ッフゥ゛ン゛ン゛!!」
とりあえず走りながら叫んでいたことを全力で誤魔化す。
「おいアイツやばくねぇか?…」
「きめぇ...…」
「もしかしてギルドで異臭放ってたやつじゃね?…」
「アイツ防具も付けずに潜ってたのか?…」
「ギルドに居たやつはもっと薄汚かったろ?…」
「咳払いで誤魔化せると思ってる所がやべぇ…」
「一人で潜ってたのか?…」
「くっせぇ...今頃さっき叫んでた息がここまできやがった…」
散々な言われようだな。
早くこの場を退散せねば。
目立ってしまうと色々と面倒ごとに巻き込まれる可能性がある。
「おい、そこ汚え髭面のおっさん。随分な慌てようだったな?仲間はどうした?自分だけ助かって置いてきたわけじゃねぇよな?」
言ったそばからこれだよ。
汚え髭面だと?お風呂さっき入ってきたけど。
いかにもモブキャラのおっさんに絡まれる。
「...おいおっさん何か勘違いしてるようだから、その汚ぇ耳の穴をかっぽじってよく聞け。私は今日この街にはじめて来た。塔の中の置いていく仲間も友達も知り合いも一人もいない」
「塔に一人で入った...?......怪しいな?なぜ塔に用があんのに防具を身に着けていないんだ?」
なんだこいつ?どうでもいいだろ。
おっさんには関係ないだろ?
いるよね、こういう仕切りたがりのおっさん。
「耳の穴きったねぇおっさんに怪しいと言われる筋合いは無いし、私が防具を身に着けようが、裸で狩りしていようが私の勝手だが、耳クソおじさんの質問にあえて答えるやるとするならば、防具を買う金が無いからだ。これで満足したか?では失礼する」
「....耳クソ?ぁあ?...ちょっと待て...お前何から逃げていた?ここに現れた時、走りながら慌てふためいて叫んでいただろうが。なぜ叫びながら現れた?」
「ップクク...」「...ッグフフフッ」「ブフーハハ」
周囲から笑われる。
「...耳の穴がゴミで塞がってるおっさんには想像できんか......」
「フゥワッワワ…」「ッブゥゥッ…」「ハハハ!ミミィッハハ…」
「さっきも言ったようにこの街には今日はじめて来た。興味本位でこの塔に入って、皆穴に飛び込んでいたので私も飛び込んだまではよかったものの、帰り方がわからなくてね。仕方なく出口を探す片手間で魔物を倒しながら進んでいると、3回目に現れた穴の横に肉の門が現れたからそっちに潜った。だが、その先に何が現れるのか予想が付かなかった。いきなり魔物が目の前に現れて噛み付かれるかもしれない。そうなった場合に備えて、魔物を音で威嚇し一瞬でも驚いて動きを止めてくれればその間に仕留めることができるよな?...それが、叫んでいた理由だ。その後は耳グソおじさんが見たとおりだ。もういい加減満足しただろう。先に失礼する」
「...待てっ!話はまだ終わっていない!!」
「声がでかい。耳クソで自分の声も聞こえないから声がでかいのか?...まぁいい。この街のことはよくわからないのだが、ここでは耳の穴が汚えおっさんの話は最後まで聞かなければならない決まりでもあるのか?」
「ッガッハハハハ…」「ッブハッハハ…」「ワハー…」
「みみっ..きた...あぁ?....」
「......どうやら違うようだな。どけ。邪魔だ耳クソ野郎」
ゆったりと、余裕を持ってその場から離れる。周りの話が聞こえてくる。
「いいぞっ、おっさん!!」
「ッククク...耳クソおじさん...ップククッ…」
「あのおっさん本当にこの都市はじめてみてぇだなぁ…」
「耳クソおじさん自分から絡んでおいて言い負かされるなよぉ〜…」
「一人で潜ってた?見かけによらずかなりの使い手か?…」
噂になるだろうな。
髭剃るか迷うけど、もうしばらくコイツらの動向を見て嫌なことに巻き込まれるようなことになったら、髭と一緒に髪の毛も切って整えれば、うまく隠れられるかも知れない。
終焉の塔を出て、適当に集めた魔物の素材を商業ギルドに売り、受け取りまで公衆浴場で時間を潰し、商業ギルドに戻る頃には夜になっていた。
魔物素材を売りに来ている人は朝の込み具合と打って変わって、数えられる程度しか並んでいない。
「お待たせいたしました。合計で6000アウルムです。お確かめください」
そんなにもらえるのか!
色んな魔物の腹開いて取り出した内蔵を適当に詰め込みごちゃまぜ状態でも買ってくれるのは助かる。
「ありがとうございます」
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