第35話

手頃な人間を見つけ、道を聞くか。


「すみません。商業ギルドを探してるのですが、道を教えてもらえませんか?」


10代後半くらいであろう少年に声を掛ける。


「......は、はぁ...この道をまっすぐいってパン屋さん過ぎたら右に進み…」


少年は臭そうにしながらも丁寧に教えてくれた。

だが、最後まで聞いたが道順多すぎて一度で覚えきれなかった。

途中までいってまた他の人に聞こう。



「ありがとう少年。こんな身なりのおじさんにも親切にしてくれて。では失礼する」


とりあえず覚えている範囲のところまで行くか。


歩きながら街並みを観察する。




「ここは...住宅街だな...」


まだ都市に入って10分も歩いてないが、辺りはどの道を覗いても4階建ての建物、地球の中世ヨーロッパで好んで建てられたハーフティンバー様式の民家がズラリと建ち並んでいる。 


建物の1階部分はお店をやっているところもあれば、全て住宅にしているところもある。


2階、3階の出窓には花を飾っていたり、洗濯物を干していたり、顔を出してぼけーっと下を見てる人など様々だ。

生活感が溢れている。


道は真っ直ぐではなく、くねくねと曲がっており、建物の見た目と相まって情緒を感じさせる。


また、道路はきっちりと段差、隙間なく暗めの石が敷き詰められており、馬車が通ってもガタガタと騒音を立てることはないだろう。





そんなこんなで道を聞きながら終焉の塔近くにある商業ギルドへ到着した。


当然ここの商業ギルドの建物は規格外の大きさを誇り、ゲルンダルの3倍以上はあるだろう。


建物の入り口を見る。


「うわぁ...最悪だ...見張りが2人いるじゃん...」


嫌な思い出が浮かぶ。

どうしよう...


仮に私の指名手配がこっちまで出回っていたらバレるのだろうか?

髭も汚らしくボーボーに生えてるし、髪の毛もボサボサで首到達するくらい延びた。


大丈夫なは「なぁんだおっさんっ!変なかっこして、道の邪魔だよっ!どぉいてっ!......うっわぁっ!くっせぇぞぉっこのおっさんっ!!キャハハッ!!」


後ろから、生意気そうで可愛らしげのある声が聞こえたと思えば、横に押しのけられたので、抵抗はせず、道を即座に譲る。

声からして10代後半だろう。


「す、すみません...」

「ちょ、ちょっとっ、失礼なこと言わないのっ!...あの...すみません。妹が大変失礼いたしました。ほぉら!謝って!」

「...いえ、お気になさらず...さぁ...どうぞ」

「......失礼いたしました...」


姉妹のようだ。

姉妹と目線合わせないように、顔を見ないように自分の顔を伏せて言う。


どうせ姉妹揃って美少女なのだろう?


おじさんは野獣パワーが振り切っておられますゆえ、姉妹の顔、身体を見た瞬間に飛びかかり、即座に拙者は処刑されるであろう。


飛びかかるのを堪えられたとしても、この魔物スカートだ。

自信がある訳ではないが、またたく間に魔物の皮テントが完成だろう。


姉妹をギルドに入ることをなるべく見ないように見送った後、私も入り口へ向かった。





「そこの御仁、商業ギルドに何用だ?見た目で判断してしまって悪いのだが、怪しい」


そうだよね!これで呼び止められなかったら逆に大丈夫!?ってなってたところだよ!


「......山で魔物狩りしていたら全身の服を引き裂かれてしまいまして...大変な目に遭った...それで、狩った魔物を売りにここに来たのですが、どこで受け付けて貰えますか?」


背負っていた鞄の中身を見張りの人見せながら説明する。


「あぁ...そういうことでしたら、こちらです。ついてきてください」


見張りは、相方に目配せをする。

案内をしてくれるようだ。






建物の右側に案内され、魔物受付カウンターに到着した。


かなり広い部屋になっていて、馬車をそのまま入れ、荷卸ができる造りなっており、区画は分かれているが、受付、解体、査定もこの部屋でまとめて行われている。


受付窓口が十以上もあるがどこも、人間、獣人など沢山の人が狩った魔物を売りに列を作っている。



「こちらで手続きをしてください」

「わかりました。ご案内ありがとうございました」


見張りに言われた通りに列に並び、順番を待つ。


馬車とか入れる大きな入り口が開いているので、今は風が吹いているけど、自分の臭いが心配だ。



「......っぅおっほんっ...」

「......ッチ...」

「...ックッセェ...ァンダヨ...ラァ...」

「くっさぁ〜ぃ...なーにーこのにおい...」


やっぱりダメだったかあ。

くせぇもんな。自分でも自分がくせぇ。

そりゃあ他人からしたら余計臭いわぁ。


「...ぐお゛っほん......クッせぇなぁぉぃ...誰だぁ?」


とりあえず周りに合わせて、自分も咳払いして、同じような反応をして誤魔化ごまかす。


「......ッチ...ぉめぇだよおっさん...」

「...何しにきたんだよおらぁ...」

「咳払いで誤魔化せてると本気で思ってるのかぁ?...やべぇよ...」

「一緒にキョロキョロするなっ...こんなかで臭そうなやつオメェしかいねぇだろっ...」


コソコソとしているだけなので、脅威ではない。

突っかかってくる奴がいなくてよかった。




そんなこんなで自分の番となり、無事売却を済ます。

金銭の受け取りは早ければ3時間後くらいに出来るそうだ。


通貨が予想していた通り、変わっていた。

そして、ゲルンダルで作った商業ギルドの身分証明が使えない。

身分証明は新たにこの都市用をこの部屋の反対側の建物で出来るということだ。


異世界なんだから、どこの街のギルドも謎の通信魔法みたいなのでお互いに繋がっているんじゃないの?

ギルドカード作ったその日から世界どこでも提示すれば身元が保証されるものだと思っていたのに。

『そ、その黒光りしているのカードは.........まっ間違いない...黒竜の皮だ...ま、まさか...エス、Sランク冒険者だと!?』

『ぁんだと!?この街にSランクが何用だ!?それほどの緊急事態か!?』

『...王都から来たんだが、この森周辺に出た白くべたつく魔女の討伐依頼を受注した者だ。その森に案内してくれ。早く私のでもっと魔女を白くベタつかせてたい...ハァハァ』

『......?......バッ、バカナ...ギルドに依頼を出したのはつい6時間前だぞ...王都からここまで早馬で片道三週間...どうやってここまで来たんだ…』

というような、胸熱な展開は期待できないのか!?


「くっしぇおっしゃん!用がしゅんだらしゃっしゃとでろぉっ!!みてぃの真ん中でちゅったてんなっ!!邪魔だっ!!」


...おっといかん。ついまた妄想癖が。

知らない歯抜けのおっさんに注意される。


「しゅ、しゅみましぇん」

「んだと!?ばかにしゅるなっ!」


身分証明も問題なく作り終えたことだし、逃げるように商業ギルドを出る。


「さて、お金受け取るまでどうしよう」


これ以上この格好でうろちょろ歩いててもいいのか?聞いてみるか。


「見張りの方、少しよろしいでしょうか。この格好で街を練り歩いてたら捕まったりしますか?何分この都市は初めてでして...」

「...はい....臭いはさておき、様々な人種がこの都市には居ますので、見た目に関しては寛容です。貴族街ではその格好で歩いたら捕まるでしょうけど、そもそも衛兵に入り口で止められます。ですので、陰部をさらけ出して歩かない限り捕まりませんよ」


よかった〜。

貴族街というのは、山から見えた壁で囲われている箇所の所を指しているのだろう。


「わかりました。ありがとうございます」

「いえ」


商業ギルドを離れ、街を散策しようかと思ったが、この格好、この臭いだ。

大人しくお金を受け取るまでじっとしているか。


「見張りの方、何度もすみません。魔物を狩ったお金を受け取るまで、目の前の庭のベンチで座ってていいでしょうか?」

「それは一向に構いませんが......先に旅の疲れと共に身体の汚れを落とされてはいかがでしょうか?無料で利用できますので、そうしていただけると、助かります...大変失礼ですが、風評被害になりかねないので...すみません」


バカなぁ!!ここも浴場無料なのか!?

是非とも行きたい!!

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