第32話
「..............................っっっっっっサキュッ『なぁんだかぶつくさ
最後までお名前を言うことができずに申し訳ございません。ここまでのようです。
「...............っ.....................っ...…」
『なぁぁんだ?おっさんやなぁ?煩いの...死にかかってるなぁ』
地獄送りを希望致す。
すぐにあなた様の元へ会いに行きます。
『おぉぃいい?おっさんやぁ。聞こえなぁい?一旦少し止めとくなぁ?』
「............」
意識が遠のいていく。
さすがに今回は強制的に覚醒させられないようだ。
『やぁだぁ...濃いのいっぱい溜めてるんじゃぁぁん〜。おじさんのくれるぅぅ??...勝手に吸えるなぁ?吸っちゃお〜』
今まで上から見えない力で押しつけられたかのように、重く、身動きが取れなかったのに、フッとその重みが消え、宙に浮くような、身体が風になったかのような、身体が軽くなっていく。
死ぬと言うのはこういう感覚なのか。
実際に浮いているのだろうか。
とても気分がいい。
いやいや、ダメダメ。お空に行ってはだめなのだ。私は神ではなく、ある特定の悪魔を崇拝しているのだ!
神は敵だ!!地獄行きを所望致す!!
地中深くに沈み、肉体、魂もろとも地獄の業火で焼いてほしいのだ。
浮くダメ。ダメダメ。
そんな思いとは裏腹に身体はどんどん軽くなっていき、空を飛んでいる気分だ。
『久々だなぁ...たまらんわぁぁ〜』
ん!?だぁれぇっ!?この声は!?
女性の妖艶な声が2つ3つ合わさってだぶったかのような声だが、この耳をくすぐるような、男の子本能を掻き立てられるような、妖艶な美声は!?
天に向かいつつあるから天使か!?
それは困る!お引取り願おう!
天使ではなく悪魔に会いたいのに!!
『んっん〜?おっさん聞こえるぅぅう?』
っんぁぁんという素晴らしいお声なのだっ!!もっとお聞かせ願いたい!!
もももももしやっ!!貴女様はっ!!!
失礼いたしました!!
わたしっセイノスケと申しますぅ!!
『勝手に溜めてた霧吸っちゃったけど、いいよねぇ?承諾が無いと勝手に吸えないしぃ』
霧吸っちゃった!?間違いない!
悪魔様だ!!本当に繋がった!!!
『遠くから恋文みたいのぶつぶついってたのおっさんでしょう?煩くてつい覗いてしもぅたわぁ...』
はい!!そうです!!私の想いが届いていたのですね!!嬉しいです!感無量です!!
恋い焦がれ待ちに『はぃなぁ。煩い』
失礼いたしました!!
御姿が拝見できないので、判断いたしかねますが間違いがあってはいけませんっ!
サキュバス様でお間違え無いでしょうか!?
『ざ〜ぁんねんっ。わたしはリリスだ』
サキュバス様じゃなかったぁぁ!!!
リリス様だったぁぁぁ『小娘共じゃなくて気に入らぬかぁ?』ぁっ。
とととと、とんでもないことでございますぅっ!!!
リリス様を直接お呼びたてするなど、あまりにも恐れ多く、身に余ることでございますゆえ、まずはサキュバス様にと、いえ、決してサキュバス様なら私でも呼びつけられるということでは『ほんとぉ煩いおっさんやぁ』
すみませんでした!!
『いい心掛けだなぁ?だぁがよくサキュバスなんて知ってるのぉ?サキュバス共も嬉しかろうなぁ』
もももちろんですともっ!!
なにをおっしゃいますやら!
サキュバス様を知らぬ男などこの世におりませぬ!!
男共の憧れの存在であります!!
夜な夜な寝床に付いた野郎共はサキュバス様が現れないか、毎日眠りこける直前まで祈りながら寝ます!!
至極当然!リリス様におかれましては、存じ上げております!
『サキュバス、わたしの事を知っているだぁ?きさまぁ...何者だぁ?ん〜ぁ?殺すかぁ?』
私は決してリリス様に不利益を生むような真似は致しません!なんでしたら、奴隷にし『うるさぁぁい。なんで知ってるのぉ?』
リリス様。まずは、
そして、心からお慕い申し上げます。
『きぃもいわぁぁ』
っっ!!
では、包み隠さずお伝え申し上げます!
今までの経緯を伝える。
『...本当のようだなぁ。おっさんがぁわたしと会話できるのもそのせいかなぁ?...んふふっ...』
私はリリス様に絶対に嘘なんて言いません!
『ひとまずおっさんを目覚めさせるけどぉ、いいでしょう?それとも殺してほしぃ?』
死にゆく命です!!
リリス様の御心のままに!
ボロ雑巾になっても捨てずチリになるまで使い倒していただきたい!!
リリスさまのお気持ちが変わり、殺すなら喜んで!すぐにリリス様の元へ馳せ参じます!
私がリリス様のお考えに意見申し『はぃわかったぁ、煩いのぅ。霧が身体にある時に地面に手をかざせば会話できるようにしとくなぁ............起きてぇ』
その瞬間、ふわふわ浮いていた感覚から一瞬にして急降下する感覚になり、気がついたら赤黒い液体の中に深く沈められ、息ができなくて苦しい。
水面がどこにあるのかわからないが、必死に泳ぐ。
どんどん苦しさが増し、あっという間に限界を迎えた。
息をしたいがために勝手に口が開き、勝手に息を吸おうとする身体。
当然、空気など無いため、大量の赤黒いドロドロした液体が肺に吸い込む。
やばい、これは死ぬ、ここまでかと思い、
肺に入り込んだ液体を吐き出そうとむせた勢いで目を開くと、景色はもう切り替わっており、地面に四つん這いでいた。
「っごほぉぉごぼぉ!!っふぁぁぁぁぁっ!ごほぉぉっごほぉっごほっ!!…」
大量の赤黒い液体を吐き出す。
なんだったんだ!!何が起こった!?
全部夢か!?
『無事目覚めたようじゃなぁ。きずぅ治しておいたよぉ』
リリス様ぁぁ!!リリス様あああ!!!
夢じゃなかったのですね!!!
これで生涯リリス様に深淵の赤霧を捧げる事ができますっ!!感謝いたします!
『おぉうれしぃなぁ...よろしくたのむなぁおっさんやぁ』
こちらこそよろしくお願い申し上げます!
手始めに何が役立てることはございませんでしょうか!?
『今のおっさんには何も無いわぁ...おっさん弱すぎるもんねぇ。死なんようにしてなぁってお願いすることくらいしかないわぁ。強くなってからねぇ?』
わかりました。
リリス様のお側にお仕えするのに相応しい強さを手に入れてみます。
『ふふぅん?あとぉ、わたしと繋がったなんて言いふらしてはだめよぉ?殺されちゃうかもよぉ?』
そんな言いふらすだなんて!!
私は死んでもリリス様との約束を絶対に破ったりいたしませんっ!!
私とリリス様だけの秘密でございますっ!!ハァハァ
『せいぜい死なんようにやってねぇ。やることあるからぁ、またねぇ?』
ああ〜〜!!!リリス様ぁぁ〜!!!行かないでぇぇぇえ〜!!!!
リリス様!!美しいお声をもっと拝聴したかったでござるぅぅっ!!
いくら地面を抱き、呼びかけても返答が無くなった。
こちらからの呼びかけがあり、リリス様から会話がしたいというご意思が無いと繋らないのだろうか。
ひとまずこの世界に留まった。
個人的にはあのまま死んでもなんら問題もなかったのだが、奇跡が起き、リリス様に繋がり、生かして頂いた。
リリス様が私を生かしておいた理由があるのだろうか。
親愛なるリリス様の行いに疑問を持つなんてありえない。
ならばリリス様からいただいたこの命、全身全霊を掛け、リリス様の役に立てるように使い果たすまでだっ!!!
身体はすこぶる快調だ。
今まで通りやる事は変わらない。
リリス様からご用命があるまで、狩りをして、強くなる。
よし!まずは現状把握だ!
目覚めてから地面しか見つめていなかったが、辺りを見渡す。
景色は呑まれる前の森と同じだが、木々が何者かによってなぎ倒されている。
近くにはぐちゃぐちゃになった肉片が沢山あり、辺りの地面は血液と肉片で赤黒く染まっている。
目の前のかろうじて倒れなかった木の枝に、私が倒したディケイドベアの毛皮らしき破片が引っかかっている。
相当強大な魔物が通りかかり、この一体の死体の山を蹴散らしたのか?
では、なぜ私は無事だったのか。
もしかしたら、私もその肉片になっていたのかもしれない。
リリス様に美しい声で『治しておいたよ』と言われた。救っていただいたのだ。
きっとそうに違いないが、
もう一つの可能性がある。
リリス様がこの辺り一帯を吹き飛ばした。
その証拠に自分の服はボロボロでかろうじて股間が隠れているだけだ。
ん?よく見ると地面に転がった大量の肉片に色々と金属が挟まっているな?
なんだこれ?防具の切れ端か?この色...
ぐるっと一周回って見渡す...
私がさっき目覚めた場所を中心に肉片が円を作り、囲うように散らばっている...
リリス様が兵士魔物諸共吹き飛ばした?
私めのために...とても
だが、もう一つの可能性として、
私の仕業じゃないだろうな...?
...あの時...第7副作用まで発症していたとしたら?
副作用が増えた分だけ、身体能力が強化されるとエルフ先生が言っていた。
そして、第7副作用の症状といったら...
「第七、
狂人になって、ここ一帯の魔物、巡回にきた兵士諸共殺害した...のか...?
私が魔物兵士共々殺害していたことを逃げ延びた街の兵士達に目撃されていたら......?
そうだとしたら、
もう街では暮らせないのかも知れない。
この先どうしたらいいんだ...
魔物狩りを果たした喜びからの絶望からの喜びからの再びの絶望。
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