第25話

どうしよう!


「ア、ァァベマぁ...ぁ...アッ」

「...?街まで戻ります」


よし!ここだ!


「そ、そそうか!では、ぅわ私は、もう少し自主練してからもどるよ!きき気をつけて帰ってね」

「一人は危ないですよ?」


なんだと?

なんで食い下がるんだ!!ほっとけよ。

美少女と帰るのは無理なんだよ!


「お、おじさんなら大丈夫だご飯の時間までには戻る。そそそれより、おじさんのししんぱいより、じじ自分のししんぱいをししなさい。では失礼」

「.........あ」


こんな気まずいのは耐えられない!!

マヤさんを置いて兵士が走り去った方向に全力疾走する。





「ここまでくれば大丈夫」


よし、少女を森の中に置いていくのは人間としてどうかと思うが、大丈夫だ。

元からどうかしてる。


だが、これで美少女マヤさんに死なれたら後味が悪いので街道に出るまではストーキングしておこう。

そうっ!!これは敵を尾行する訓練だ!


木々の幹を使い、隠れながら低い姿勢を保ち、走った道を引き返す。




なにぃ?まだいたのか?何をやっているのだ!

危ないから早く戻って!


マヤさんは別れたときと同じ場所で立ち尽くしている。


今更出てきて、

あれまだ居たんだ。じゃあ一緒に帰ろうか。

なんて口が裂けても言えない。


5分くらい見ていると、マヤさんは街道方面に歩き出した。


そう!それでいいんだ!

まったく君は何を考えているんだっ!!

人のこと言えないけど。




無事何事も無く、気が付かれることも無く、マヤさんを街道まで見守った。


「よし、進行方向もあっているな」


これで一人で街まで帰れる!

食事も気楽にできる!と思うと、気持ちが一気に楽になった。


10分後くらいに私も街へ向かってゆっくり歩く。

もちろんマヤさんと一緒になることを避けるためだ。


街へ到着し、そのまま兵舎の食堂まで来た。


入口のおばちゃんへ訓練受付用紙を見せ、中へ入ると、マヤさんが、食堂の端のテーブルで食事をしているのが、横目で見えた。


絶対に目を合わせてはいけない!

気まずくなる!


気が付いていないフリをして、おばちゃんに食事を配膳してもらい、マヤさんとは一番遠い席に背を向けるように座って、食事をする。


「うっま!2日ぶりの食事うっまぁ!!」


シチューらしき料理と肉を柔らかく煮た角煮みたいなの、パンもある。

どれも時間内までおかわりし放題。

素晴らしい!!


お腹空いた!食事は二日に一度!

できるだけ食べておかないと!!


前回はマヤさん目の前に居たから、味もあまり感じられなくて、おかわりもできなくて、すぐにお腹が空いた。本当は吐く寸前まで食事を追い込みたかった。


少なくとも五食分は食べなければ...気合を入れろ!おっさん!!


咀嚼そしゃくの回数と飲み込む回数でお腹いっぱい指令を脳に出すと、どこかで聞いたことがある。


つまり!必要最低限の咀嚼でなおかつ、一回に飲み込む量を増やす!!

これはフードファイトだ!!

時間との戦いだ!

満腹を感じる前に、ひたすら流し込むのだぁぁぁぁ!!


ゔぉぉぉぉ〜〜〜!!うぉ〜〜〜「あの......ご一緒してもよろしいですか?」


っっばぁぁぁかなぁぁぁっ!!

なぁぁぁんできたぁぁっ!!

あなたぁ!さぁぁけたはずでしょうっ!?

なぁぁんでくるかなぁぁっ!!!


「.........」


頬をリスみたいに膨らましたおじさんは声がした背後へ振り向く。


案の定、マヤさんだった。


「......ゔぉ゛ごどあ゛い゛じばふぅ」

「......なんでしょう?」


口に入っている物を飲み込む。


これ以上付きまとわれても困る。

覚悟を決めて、伝えるしかない。


「......わ、わたしは、おじさんは、わ、若くてききききれいな女性と行動をとともにすることが、にににがてなんだ。見られるのも慣れていない。かかかってに緊張してしまう。しょしょ食事とかも......だから、お、おお、お断りしたい。二日に一度しか、たた食べられないので、食事にしゅしゅ集中したい...」

「......そう...でした...か...で、では、近くの後ろ席にいますね?」


なぁぁんで話が通じないのだ!!

近くにいると緊張するっつってんの!!!

関わらないでほしぃっ!!


「そ、そそれもお断りしたしたい...おじさんは三日前から身体も洗えていないのだ...自身が臭いので、ででできれば、臭いもかか嗅がれたくないので、近くに居てほしくないのだ...すすすまない。せっかくのご厚意なのに...ほほんとうは、マ、ママァ、マヤさんみたいなき綺麗な子と、いっし、一緒に食事が出来ることは、世のお、お、男にとっていっし、一生のほまれだ。けど、お、おじさんにはやっぱりむ、むりだぁ...す、すまない...」


大人のお姉さんはなんかこう、今まで溜め込んできたものが抑えきれなくなってしまいそうで、襲いかかってしまいそうで無理だ。

マヤさんは可愛くて、見つめられると緊張して、心臓が止まりそうで、行動がおかしくなる。

こじらせたおじさんは重症だな。


「...わかりました...ごめんなさい」

「悪いのは私なんだ...ごめんなさい」


マヤさんは先程座っていた席に戻る。


はぁ〜〜...

良かったぁ〜

これで今後も関わらなくて済むかな?

色々と考えてしまうのも億劫おっくうに感じながら関わるより、だったら最初から関わらないほうが楽だ。


邪魔が入って集中が切れてしまったが、気合を入れ直し、今度こそ食事に集中する。





「おかわりしたいやつはいるか〜い?今日はこれで最後だよ〜っ!」


おばちゃんの大きな声が食堂中に響き渡る。


もうラストオーダーか。

だけど、おかわりは無理だ。

今食べてるやつでギリギリ入るかどうかだ。

残したらもう二度と食堂に入らせてくれないかもしれない。



何とか気持ち悪くなりながらも食べ終え、食堂を離れ、北城門外の道の脇の地面に横たわり、体調を整えている。


「あぁ〜気持ち悪い。食べすぎた」


午後の狩りの為に、気持ち悪くなるほど食べる必要がなかったのだ!

お腹空きすぎて、食べることしか考えてなかった。


「はぁ〜...落ち着くまでここで休憩しよう」



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