第22話

ふむ。

いずれにしても今日いきなり狩りには行けない。

魔物の情報不足と、今日は飯が食えないからだ。


つまりこの後の予定は、図書館でできるだけ魔物のお勉強をする。

明日は戦闘訓練開催日だから、午前中参加する。終了後、たらふく飯食って、午後。狩りの時間だぁ!



と言うわけで早速、図書館まで来ました。


図書館は高さ2階建て位の石造建築で、正面の石柱にも壁にも細かい彫刻がされており、何かの物語を表現しているのだろう。

地球にあった紀元前の図書館を復元したかのような立派な造りだ。

数段上がり、中へ入るとおびただしい数の本が本棚に保管されている。


わからないので、

入って右手の受付のおっちゃんに聞き、

魔物の本を持てるだけ拝借し、魔物コーナーに一番近い椅子に座る。




図書館は日が沈むまで開いているということで、さっきおっちゃんに時間聞いたら大体11時と言う事なので、日が沈むまで6時間位あるので、満足するまで魔物の勉強をする。


転移前、私がやっていたゲームの中で尊敬してやまない白髪の魔物狩りおじいさんは言った


魔物を狩る前の準備、情報の有無が勝敗を決める。

と言っていた気がする。


当然、今の私はその白髪の魔物狩りおじいさんになりきっており、生死に関わる事なので、モチベーションも高く、魔物勉強に手を抜くつもりは無い。

閉館まで時間を使い、少しでも不安があるようなら、明日の午後の狩りも中止にして図書館に籠もるつもりだ。


さて、雑念はこれくらいにしといて、早速はじめるとしよう。





────────────────────


「よし」


魔物の本最後の一冊を閉じる。

何種類も魔物の本があったので、ざっくりと目を通し、どれも似たりよったりで、最終的に詳しく魔物を記載していた4冊に絞って勉強した。


自分でも驚くほど、得た情報を記憶することができ、今日得た知識はたぶん忘れることは無いだろう。


これはあの状況によく似ている。

学生の頃、社会の授業で何年にどうたらこうたらしたのは誰だとか、理科の化学反応式とかの暗記問題とかいくら勉強しても覚えられなかったのに、ゲームのモンスターの知識とか、調合に必要な素材とか入手場所とか、登場人物の設定とか、ゲーム中に出てくることに関しては、チラッと一回見ただけで今でも覚えてる的なアレだ。

要は、どれだけ興味を持っているかの差だな。



これで、魔物の知識も抜かりない。

これなら明日は予定通りに行けそうだな。


本を棚に戻し、受付のおっちゃんに時刻を聞く。


「今は、大体5時だ」


意外と没頭していたんだな。

正直ゲームの設定を読んでいるようで、とても楽しかった。


今日はやることがなくなってしまった。

気が緩んだせいか、忘れられていた空腹感が戻ってくる。


「腹減った〜」

「そんなん知らないよ。用がないならさっさと出ろ。もうすぐ閉館だ」


おっとしまった。とりあえず出よう。


「はい。すみません。ぼーっとしてました」

「...」


受付のおっさんに一礼し、図書館を出る。

眠くなるまで行くアテが無いので、図書館入口の階段脇に座る。


私と同じようなおじさん達や、カップルなんかも階段に座り楽しそうに雑談している。


ふと、一人で座って黄昏たそがれている女性を見て思い出す。

戦闘訓練で一緒だった美少女マヤさんを。



クソッ!どうするっ!どうすればいいんだ!!

明日、マヤさんと一緒に戦闘訓練受けたくない!!

前回、訓練中は自分に必死だったので、大丈夫だったが、街に戻ってから別れるまで最悪だった!

気まずい。

このままだと、ァゥアゥア状態になってしまう!


どうする。

マヤさんは絶対に戦闘訓練を明日受けるはずだ。

問題はマヤさんが、午前と午後どっち出るかだ。

私は午前と決めていたが、どうしよう。

避ける方法はあるだろうか。


待て、落ち着け。

ここは一旦マヤさんの気持ちになってみよう。

マヤ『〜でねぇ、聞いてよ〜。今日受けてきた戦闘訓練なんだけどぉ。すごく臭くて気持ち悪い小太りのおじさんと一緒になったわけ』

友達A『うっわ〜くっさいおじさんむりぃ〜。そんで?』

マヤ『それがねぇ〜、訓練中も私の方をジロジロ舐め回すように見てきて、ほんときもち悪かったの』

友達A『え?ありえないんだけど。きっも!何もされてない?大丈夫だった?』

マヤ『ね。ほんときもい。で、とりあえず大丈夫だったんだけど、訓練終わって街に戻ったら、急に様子がおかしくなって、呂律ろれつが回らなくなって、臭さが今まで以上に臭くなったわけ』

友達A『え〜やばくない?病気?まじきっんもい』

マヤ『わからない。でもご飯タダだし、どうせ後でまた会うことになるから、一緒にいくことにしたんだけど、喋りたくないから後ろについてったの』

友達A『マヤ!そのおじさんと二人っきりなってはダメェェッ!!』

マヤ『ほんとだよね〜。後悔してる。後ろ歩いてたけど、呂律ろれつ回ってないのに話しかけてくるし、すっごいくっさいの。途中でさらに臭くなって、ほんと気持ち悪いの』

友達A『きっもぉ!!臭さが2段階上がるとか化け物じゃんっ!!マヤ!その人と一緒に訓練するの避けたほうがいいよ!午後受けたんでしょ??きっとマヤを狙って次も午後参加するはずだから、マヤは午前にして!』

マヤ『そうだね!午前にしよ!!きもいしもう会いたくないわ〜』


だめだ。シミュレーションの結果、

このままだと確実に明日マヤさんとち合う。


いや、もしかしたら、変態の思考を読み、あえてマヤさんはそのまま午後訓練の可能性がある。

あの子は賢い子だ。


...いやだぁが、賢すぎて裏の裏を読んで午前来たらどうする...ぁ...ぁぅぁ...


予定を変更し、腹ペコ状態で午前狩りに行き、力を発揮できずにフレッシュマンの仲間入りしてしまうかもしれない。

無事だったとしても、その後訓練だ。

訓練を終えてやっとご飯だ。

気力が持つ気がしない。

いずれにしても、私は予定をずらせないか。


明日、マヤさんが午前来てたらショックだな。

私と一緒にやりたくないから午後は避けたっということになるでしょう?


そして、マヤさんは戦慄する。

避けたはずの臭いおじさんがこちらを見ながらニヤついてる。

そう絶対に勘違いするはずだ。

私を追っかけて午前に来たんだと。

ストーカーされていると。


やばすぎる...

どんな顔して明日会えばいいのだろうか。

どんな顔してというか、顔を取り替えたい。


一度犯人扱いされたらどんな表情をしようが、マヤさんから見たら、不気味に映るはずだ。


よし、居たら無視しよう。

私はあなたには興味なんてありませんよ。

を全力でアピールするのだ。


接近する機会があれば、

あ、いたの。気が付かなかったよ。オホホ


避けられたことに対して、心に傷を負うが、これでいける!


明日の方針も固まったことだし、極力体力温存だ。明日の昼飯まで長い。


南城門前の昨日寝た所と同じ場所辺りで、眠くなくとも、とりあえず横になる。


次第にウトウトし始め、おじさんは眠った!




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