第19話

さて、次は商業ギルドにいこうか。


兵舎の窓口のお姉さんに商業ギルドの場所を聞き、東の大通りまで来た。


辺りを見渡すと、2階、3階建ての建物が同じように隙間なく建ち並んでいる。

多種多様なレストランに宿、居酒屋が建ち並ぶ。

立派な神殿みたいな石造建築がここにもある。白ひげもじゃおじさんがたくさん出入りしているな。図書館とかか?


雑多に建ち並ぶ建物の中に、馬車2台は余裕で通れる道に囲まれた一際大きな石造りの建物があり、入口には二階のバルコニーを兼ねた張り出し屋根になっており、バルコニーには紋章が施された旗が三りゅう斜め上に道路側に突き出ている。


ここで間違いないだろう。


中へ入ると、ホテルのロビー見たく、天井は高く、広々としている。


ロビーには6人ほど打合せできる机がたくさんあり、仕切りがないものと、半個室みたく仕切られている箇所もある。実際に何個かの机は使用中で、熱心に打合せが繰り広げられている。


奥の長いカウンターには窓口がいくつも並んでおり、窓口係は男女比半々で対応していて、どこも3、4人は列ができている。

商業の街は繁盛しているようだ。


辺りを観察していると、なんだか話が聞ける雰囲気ではない。

見た感じここはプロしかいないぞ。

圧倒的場違い感。


道の邪魔にならないように隅の方に移動して、さらに人の動きを観察していると、窓口の横にある従業員出入り口から綺麗なお姉さんが出てきて、ゆっくりとこっちに向かってくる。


目が合ってる気がする。


「あの〜?お客様?なにかお困りですか?」


わぁ〜...とても綺麗なおねえいさんだぁ...

ふへへ...

とてもお姉さんが綺麗。大人の女性の色気ムンムンだぁ〜。きれいだ!ぅわぁ〜...

思考が停止する。


「あのぉ〜...お客さまぁ?」


くそぅっ!!

お姉さんはお仕事中だお仕事中だお仕事中だ落ち着け落ち着け落ち着け!!!

勘違いするでない!!

誠之助せいのすけよ!

別にお前に気があって話しかけてる訳ではない!

お仕事中なんだ!!勘違いするな!!


「はっ、はい!はいっ!!お客様ですっ!」


落ち着け!兵舎の窓口のお姉さんと一緒だ!!同じなんだ!同じはずだ。


いや違う!兵舎の窓口のお姉さんとは物理的な壁があったから大丈夫だったんだ。


今のお姉さんとは物理的な弊害はないっ!!抱きつこうと思えばいつでも抱きつけるのだ!!はぁ〜っ今すぐ飛びつきたいっ!


っやめるんだ!!

お仕事中のお姉さんに失礼だ!!


「はい、お客様。なにかお困りですか?」

「ぅえ...ぅあの、はずぃめぇてで、とても緊張しています...」


そうっじゃねぇだろっ!!!

気持ち悪いんだよおっさん!落ち着け!


「は、はぁ...???」

「い、いえ...は、はじめてなんですけどここのししこ仕組みを説明してもらえる方はいますか?」


早口にまくし立てる


「簡単でいいのでしたら、私からご説明いたしますが...???」


こちらの綺麗なお姉さんだと説明は無理だ!!!

理性を失う!

そんなにおじさんを見つめないでくれぇ!!

刺激が強すぎるぅ!!


「だ、だん、だん、だ、だ、だん、「大丈夫ですか?」だ、ど、だ、だだいじょうぶです!!」


綺麗なお姉さんは困り果てた様子で、顎に人差し指を置いて、首をかしげる。

か、か、か、かかかわいいいーーー!!

今すぐに抱きつきたい!


「っくっ!!!いそ...急いで!だん、だだ、だ、男性の職員をか、か代わりによ、呼んできてもらって、い、いいですか?っく...!っはやくっ!」


まずい!このままだとぉっ!!

異世界おじさんの冒険たんはここで終了してしまうっ!!


「は、はぃ...た、ただいま...呼んで、参ります...」


お姉さんは従業員出入口に入り視界から消える。


はぁ〜助かった。

お姉さん危ないところだったね。

君は危うくおじさんにいたる所をペロンチョサレルトコロダタヨ。ヨカタネ。


綺麗なお姉さんには悪いけど、36歳まで童貞拗ごじらせた私を相手にまともに会話ができると思うなよ!?


気を取り直し、3分ほど待っていると、従業員出入口からおじさんがやってくる。


「お待たせいたしました。お客様。初めてということで、此処ここの使い方をご説明いたします」


やったぁ!おじさんだぁ!

別におじさんが好きな訳ではない!


この切羽詰せっぱつまった現状で、綺麗な女性と至近距離で会話して、己の制御を失い、暴走して抱きついたりしてしまったら、女性が嫌な思いをするから、自ら回避しているのだ!!

ハァ...ハァ...ハァ...


この世界の若い女性可愛い子が多い気がする。


ただでさえ、会社に新卒で入った普通そうな女性の大卒研修生をかわいいと思って、テンパって相手にできなかった私が、ここの世界の綺麗、可愛い系女子を相手にできるとは思えない。

最終的に理性を失った私は、抱きつくか、ペロペロモミモミするはずだ。


尚更避けなければ、いずれ処刑される。


「お、お客様...お客様。大丈夫ですか?」

「はい!考え事をしておりました。失礼いたしました」

「では、席でご説明いたします。どうぞこちらへ」


半個室の打合せ場所へ案内され、椅子に座る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る