第16話








そこに、美しくたたずんでいたのは...














エルフおじさんだった。



まぁたおじさんかよっ!!

くそがぁぁ!!!

そうだと思ったけど。


まぁ、ここで美少女エルフだったら、聞きたいことも聞けないし、どもりまくりでまともに話せなかったし、正直、美しいおじさんで助かった。



「あ、朝早くからお邪魔してしまい、申し訳ございません。私、セイノスケと言います」

「いいよ。最近は暇を持て余しているのに、誰も話し相手になってくれないのさ。私はセクンドゥス・セクッストゥスだ。ここの人たちにはただ、先生と呼ばれているけどね」


なっなに!?聞き取れなかった。

セ○クストゥ先生だって?

おとなしく先生と呼ぼう。


「セ、セ○クストゥ先生...では皆にならい、先生と呼ばせて頂きます...」


はぁ〜!なんとか小声ごにょごにょで名前のところ誤魔化したぁ!


「先生!実は深淵の赤霧について教えていただきたいことがございます!」

「そうか。珍しいね。深淵の赤霧を聞いてくる人は。いいよ?なにが聞きたい?その前に座ろうか」


思ったより優しい人なのかな?

硬めのソファーに座り、おじさんエルフと机を挟んで向かい合わせになる。


この流れだと、タダでは教えん!

あれこれあの素材、あのモンスターとかのお使いクエスト発生パターンだと思っていたのに。


「ありがとうございます。実は二日前より以前の記憶がなくて、一般常識なところが欠けており、かなり基礎的な事を聞いてしまうと思いますが、ご容赦ください!」

「ほう。おもしろい。時間はたくさんある。続けて」

「はい。まずは、深淵の赤霧を蓄積した時、この街の兵士にに捧げると能力が強化されると聞きました。とは、何でしょうか?」


まずは、蓄積した深淵の赤霧をどうにかしないと、この世界で生きていく上では死活問題だよね。


「そこからだね。赤霧を吸収してそれと引き替えに、自分の能力を強化してくれる神のことだよ。詳しい名前は今回省略するとして、今現在、は、わかりやすく言うと、力の神、魔力の神、精神の神、才能の神というところかな。その神に赤霧を捧げればそれに当たる能力を強化してくれるということさ。必ずしも深い信仰心が必要な訳ではないから安心していいよ。ただし、一度、神に赤霧を捧げれば、他の神には捧げられなくなる」


なるほど?

例えば、力の神に一度、深淵の赤霧を捧げれば生涯脳筋ということか。


「わかりました。では、どうやって深淵の赤霧を神様に捧げればいいのですか?」

「それは簡単だ、この街含め、各街の地下に祭壇場がある。各神の祭壇があるから、その前で跪き両手を地面に付けば、勝手に赤霧を吸われ、能力が勝手に強化されるよ」


勝手にレベルアップするのか。好きにステ振りとかできるのかな?


「特に神様と会話をして強化したい能力が選べるわけではないのですか?」

「神と会話?記憶が無いからかもしれないけど、不吉なことを言うね。さっき行った通り、能力は勝手に強化される。例えば、自分が腕力を強化したいと念じても、それ通りには行かない。当たるときもあるけど」


残念。

能力の極振りもできないということか。


「そうなのですね。先生は神との会話がと仰っていましたが、どういう意味ですか?」

「そうだな。今の時代、だからもはや、神として信仰されているが、あれは、明確には神などではない」


な、なんだと?


「では、なんなのですか...?」

「そうだな。あれは、どちらかと言うと邪悪な存在だな。かなり上位の悪魔か魔物か、悪魔の神に当たる存在の一部とも言われている。詳しい正体は、いにしえの文献に記載されていたと聞いているが、うの昔に失い、どうにもわからない。だから、酔狂すいきょうなヤツを除いて、会話をこころみようとする者など、いるはずがない」


え?なんだと?


「因みに、会話を試みようと思った先人たちはどういう運命になりましたでしょうか?」

「悪魔に殺されたのか、周りに殺されたのか知らないけど、死んだやつもいれば、理解できない言語で返されて、意思の疎通ができなくて目玉をくり抜かれたとも聞いている」


殺すのは悪魔がやりそうなことだから予想通りか?一応会話をしようとする悪魔もいたということか。目玉没収されてるけど。


「で、では、悪魔やらが存在しているのならば、神も存在しているということですよね?」

「あぁ。神も存在してい

「してい?」

「うん。私達エルフの言い伝えでは、はるか昔に悪魔やら魔の者などの邪悪な存在によって、滅ぼされたと言い伝えられている。正直どんな神が存在していて、どのような力を行使でしたのか、もうわからない。もしかしたら、本当の神は、今もどこかで細々と生き長らえてるかもしれないが、を見ると、存在していたとしても役に立たないだろう」


なんだこのバッドエンドやらかした後の世界みたいなのは。

クソ最悪だ。胸糞悪すぎるぞ。


「バカな...では、なぜわざわざ皆、悪魔だと知りながら神に見立てて深淵の赤霧とやらを捧げているのですか?」

「先に言ったように、どんな神がいたのかすらエルフでさえわからない。寿命の短い他の人種なら尚更、わからないだろうさ。そして、赤霧を捧げ続けることでしかどの人種も生きられない。街を作り、助け合い、今まで生きながらえてきた。街を維持するためには、周辺に湧き続ける魔物を倒し続けなければならない。魔物の発生原理は不明だが、放っておけば際限なく増え、街に危険が及ぶため倒すしかない。倒せば、赤霧が蓄積される。蓄積されれば、副作用が発症する。が、赤霧を捧げれば、副作用は治り、能力まで強化してくれる。結果的に私達は強化され、より長く生きながらえる事ができる。これを今、この世界で神と呼ばずしてなんと呼ぶ」


「...じゃ、じゃあ、神様なんじゃ...」

「......そうだね。その考え方で良い...」


な、なんなんだ...腑に落ちない。


「せ、先生はとかと言っておりましたが、そんなにひどいのですか?」

「あぁ...人間が今すぐ気にするほどの短い期間ではないけど、確実に世界は終焉しゅうえんに向かっている。正しくは生物が。だね」


生物が終焉に向かっている?


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