第15話

次の日



よく眠れた。テントなくとも快適に寝れるんだな。


ん?空が赤いな?

この世界の朝の空は真っ赤が普通なのかな?

まるで夕日みたいだが、それより赤い。

不思議なものだ。


異世界だからそんなものかと思いつつ、

古い服を回収して辺りを見回すとモコモコ羊に囲まれていた。

そして、ウジ野郎が羊が私の方に来ないように静かに追い払っていた。


「セーノスケ殿、お目覚めになら、っごめんなさい!起きたのですね!おはようございます!」

「......」


私が寝てる間、羊から守ってくれていたのか?

まぁそんな、反省してますパフォーマンスをしても、許しはしないがな。


「この羊たちはなんだ?」

「はい!ゲルンダル名産の羊毛の元の羊たちです!城壁の外周辺で放牧されております」

「コイツは放牧してて遠くに逃げないのか?」

「それは大丈夫です!ここからだと背丈の長い雑草で見えませんが、あ、この辺りに勝手に生えてる雑草が羊たちの餌です!それで、城壁からかなり離れたところに柵があって、グルッと城壁を囲むように柵が囲っています。街道だけは柵はないですが...」

「......」

「あ、セーノスケ殿!どこへ...」


ウジ野郎を無視して、城門へ向う。


おじさんを怒らすと面倒くさいのだ。

本当におじさんというのは、面倒くさい。





「セーノスケ殿、おはようございます」


どの重装兵だ?防具のせいで曇り声だし、顔が隠れていてわからない。


「おはようございます」

「よく眠れましたでしょうか」

「快適でしたよ。外で寝るのも案外悪くない。ちなみに、今何時だかわかりますか?」

「ふふ...それはよかったです!今は朝の5時くらいかと思います!」

「そうですか。ありがとうございます。兵舎に深淵しんえん赤霧あかきりに詳しい先生がいると聞いてますが、今日行けば会えるでしょうか?」

「先生は毎日いるので、いまから行っても会えますよ」

「わかりました。ありがとうございます」

「いえ、お大事になさってください」


もう誰が誰だかよくわからない重装兵と別れ、城門をくぐり、街へ入る。


この先、狩人で食っていくとしたら、まずは敵を知らなきゃだめだよね。


ゲームはクリアするまで攻略情報絶対に見ない派だけど、流石にゲームっぽいとはいえ、チート能力無しにこの世界でいきあたりばったり、ぶっつけ本番してたら、初見で殺される。

この世界に来て今日で3日目だけど、わからないことだらけだし、先に攻略情報を見てから魔物刈りでレベル上げするんじゃ!


体力的な心配はあるけれど、歳を取った状態で転移したのが救いだな。


後、15年早く転移していたら、

異世界だぁぁ!ヒャッハー!!

で、即日フレッシュマンの仲間入りしていたのかもしれん。


考え事をしながら、南の商店街を歩いていると、急にお腹が痛くなった。

森の中では自由に垂れ流してたし、監禁されていたときはトイレ使えたから特にする場所困っていなかったけど、公衆トイレみたいなのあるかな?


怖いけど、それどころではないため、すれ違った赤いトカゲ獣人に話しかける。


「す、すみません。このへんで用を足せる場所ありませんか?」

「なんだ?各大通りの真ん中辺りに案内看板あるから、そこの道曲がったところに共同便所あるよ。石造りの柱が並んでるからすぐわかるよ」

「ありがとうございました!」

「大通りで漏らしたら罰金だから気をつけろ!ハハッ!」


やばい!急がないと!


なるべく身体に振動が行かないような走り方をして商店街の真ん中に向かう。


これか!

そこには、街の広場の共同広場アゴラを小さくして、石柱と石柱の間を木の板で塞ぎ、屋根は木造家屋の屋根の骨組みだけつけたみたいなスカスカな屋根だった。


案内に従い、男性の方に急いで駆け込む。


中が意外と広い事に驚いたが、いわゆる立ちション便器が無いと言うのと、大の方は便座があるが、仕切り壁が無いことに戸惑い、呆然と立ち尽くす。


「…その子に思い切り言われたんだ、世界の終焉がすぐそこまで来たとしても、「ぶぶぶ...」お前と結婚なんかするわけがないってなっ!「ぶぶっ!」ぅわぁはっは!「ぶっ!」」


う○こしながら何言ってんだこのドワーフ。


「さっすがだぁよ...っふん!「ぶぶぶっ!」あの子はっ」


豚の獣人も楽しそうに話す。


「ははあっ!これを「っぶぶ!」いわれときのおれは…」


あぁ〜そういうスタイルね...

みんなでワケあいあいとするスタイルね...


同様に地球。時代は古代ローマ初期。かつて、そこでは共同便所が存在し、皆分け隔てなく、会話を楽しみながら用を足していたと。共同便所が憩いの場となっていた。


という話は聞いたことがない。



ふむ。これはこれでいいのかもしれない。

天井を見上げると木の骨組みの間光が差し込み、青空が見え、神秘的で清々しい気分になるな。


皆が当たり前のようにやってるのなら、

恥ずかしくないよね?

それより、漏れるっ!!


共同便所の演奏会に飛び入り参加し、

皆の目を独り占めするほどの素晴らしいハーモニーをかなで、とてもスッキリした気分の私は今、兵舎に到着した。


「先生とやらはどこにいるのかな?」


兵舎の入り口の窓口に聞いてみようか。


「おはようございます。深淵の赤霧に詳しい先生がいると伺っているのですが、どこに行けば、会えますか?」

「おはようございます。あ~。それでしたら二階の…」


ふむ、分かった。


二階にある教えられた場所についた。

ここだな。

ドアをノックする。


「すみません。失礼します」

「どうぞ。開いているよ」


ドアを明け、中へ入るとそこには、


目を奪われるほどの美しい灰色の髪の毛は惜しくも短く整えられている。髪を長く伸ばせばもっと美しいものが見れるのに、と思わずにはいられない。

全体的にゆったりとした薄手のロープを羽織り、体型はよくわからないが、そこからちらりと見える肌色は、褐色かっしょくで灰色の髪の毛とよく合っている。

尖った耳をしている。

これが本物のエルフだろう。


そこに、美しくたたずんでいたのは...











────────────────────

次回!!

ついに!おじさんが待ち望んでいた

異世界ヒロイン!?が現る!!



ここまで読んでいただき、

ありがとうございます!

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