第9話
森を緊張しながら進んでいると、
「君たち、気がついていないみたいだから教えるけど、目先に一匹魔物がいるぞ、ロッテンラットだ。腐った鼠だ。動きは遅いから頭に剣を突刺せば倒せるけど、毒を持っているから攻撃を受けないように二人で協力して倒そうか」
兵士が指した方向に少女とゆっくり歩きながら目を凝らすと、20mくらい先に1.5m位の横腹をこっちに向けている大きな鼠がいた。
全身の黒色の毛があちこち抜けて、皮膚は
お、恐ろしい!!バ、バ○オ○ザードだ!
「よし、とりあえずやつの注意を引きつけてくれるかな?注意を引きつけて怖くなったらそのまま全力で逃げてもいい。その間に私が倒そうと思う」
私は迷いなく少女を平気で
そして、表向きには危険な役を率先して行なう
どうせ、異世界に来てイケメンに生まれ変わっていない、若返っていない、チート能力をもらってない時点で、私のハーレム展開など無いのだ!!くそぅっ!!
いい人ぶるのも辞めるしかないっ!!
ならば、第一に身の安全を確保するまでだ!
悪く思うなよ!少女よ!!
「.........わ、わかりました!気をつけてください!」
「あぁ、私が合図をしたらなんでもいいからやつの注意を引いてね。あと、足元に気をつけて」
少女の身を心配する。
......ような、演出も抜かりなく行う。
私は近くの木に隠れて、少女に向かって合図を出す。
少女は頷き、
「.........っやぁ〜〜〜!!わぁ〜〜〜〜〜!
えっと...おらぁ〜〜〜!!」石ころポイポイッ
......
...............少女とってもかわいいでしゅ。
ロッテンラットが少女に気が付き、振り向く。
顔の皮膚も
少女に向かってロッテンラットが走る。
が、そんなに早くない。
「わっ、わぁ〜〜〜!!
うっ、うお〜〜〜!!」石ころポイッ
少女は後ずさりしながら、
注意を引きつけてくれている。
なかなか勇敢な女の子だ。
ロッテンラットが、私が隠れている木を通過した瞬間、私は行動を開始する。
動きが遅いので、すぐに追いつき、こちらが接近していることにも気が付かない。
ふっ、ッバカめ。
既に
「っふん゛!......あっ...」
私は格好つけて野太い声を出しながら突き刺したつもりだったが、森に響いた声は、力みすぎた甲高い声だった。
くそぅっ!!!
剣鉈はすんなり頭蓋骨を貫通し顎の間から剣先が飛び出し、ロッテンラットの動きが止まった。
我が愛刀の威力を見たか!
「お、お見事」
「やったぁ!!」
はぁぁー緊張したー。
声の件は無かったことにした。
剣鉈を頭から引き抜き、近くの葉っぱで血を拭き取る。
すると、ロッテンラットから薄い赤いモヤみたいな霧みたいなものが噴出し、私目掛けて勢いよく襲いかかった。
「っなぁにぃ!?っやだっ!!こわいっ!!助けてっ!!」
しまった!
討伐時に毒霧撒き散らすタイプだったか!?
いや、呪いか何かか!?
私は混乱して赤い霧を払うようにジタバタしながら兵士に助けを求める
「君!!落ち着いて!!それに害は無いよ」
「おじさんその赤いのは大丈夫ですよ」
「はっ?そうなの?なにこれっ?」
「それが、
深淵の赤霧だと?
いかにもやばそうな名前じゃないか。
ラストアタックした人が獲得できる特別報酬みたいなものか?
昔流行ったオンラインMMORPGのボスのラストアタック決めた人のみもらえるレアアイテム報酬目当てで、誰がラストアタック決めるかで競争が激化、重課金の火力インフレ、人間関係もドロドロな展開か?
そういう展開ならまかせろ。
心得ている!
「はい。実は記憶が無くて、一般常識的なところはほぼわかりません」
「そうだったのか。気が付かず申し訳ない」
「...ぁ...」
「いえ、気にすることではありません。それよりこの
深淵の赤霧とやらが頭以外の体全体的にまとわりつき身体に吸い込まれるように、吸収されていることを眺めながら問う。
「それは世界ができた当初からあったとされているけど、詳しい正体は未だによくわかっていないんだ。ただ、深淵の赤霧は体内に吸収、蓄積され、自身の身体能力、才能、精神力、魔力など様々な能力を強化することができるんだ」
「ん?んほぉお!!!」
なんだか一気にゲームっぽくなったぞ!
レベリングができるのか!?
とても面白そうだ!!
「なんとなくわかったかな?だけど、ただ深淵の赤霧を体内に蓄積し続けていれば、強くなれる訳じゃないんだ。己が信仰する神に深淵の赤霧を捧げることによって神からお返しに能力を強化してくれている、と言われている」
ふむふむ、魔物を倒してもその場ではレベルアップせずに、神様に経験値を捧げるとレベルアップしますよってことか。
教会みたいな所で祈りを捧げてレベルアップ的な感じか?
んっ?!
それもまかせろっ!!!
ダークなゲームで干からびる程たくさんの
ソウルを捧げてきたんだ!!
「そして、その深淵の赤霧だけど、これがかなり扱いが厄介で体内に蓄積されすぎると、様々な副作用を発症するようになるのさ。今現在、確認されているのは第一から第七副作用なんだけど、ここまでいいかな?」
「......はい」
「...ん!?つまり魔物を殺しすぎてもだめってことですか?」
「そういうことになる」
あら?思ってたのと違う。
副作用とやらによって、魔物を殺しまくりレベル上げまくり、ボクつぇぇんだっ!!
ができないということか。
「城門の兵士が慢性的に兵士が足りていないと言っていたのは、これが原因ですか?どんなに強い兵士でも副作用によって一騎当千ができないから?」
「ご名答。そうだよ。個人差、魔物の強さによって違うけど、さっきの倒したかなり弱い部類の魔物でさえ一人あたり40匹から50匹で第一副作用が出てしまう」
「......」
バ、バカな...
思っていたゲームみたいな展開とは違うようだ。
想像していた異世界より、かなりハードモードな異世界に来てしまった予感。
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ここまで読んでいただき、
フォローしてくださり、
応援してくださった読者の皆様
心から感謝申し上げます!!
今後とも楽しんでいただけるよう、
努めてまいります。
よろしくお願い申し上げます。
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