第7話

「ここの街ってどんな街なのですか?私でも出来そうな、お仕事ないですか?」


「ここは王国内でそれなりに商業が栄えてる街、ゲルンダルという。名産は羊毛だ。それ目当てに各地から商人来て規模がどんどん大きくなり、出来た街だ。ここで食って暮らしたいなら商才が無いと厳しい。一文無しのお前が商売で上り詰めるのは無理だな。売れる魔物を狩って、商業ギルドに売る手もあるが、そこら辺に出る弱い魔物は買い取ってくれないし、お前戦えないしな。お前に出来そうな仕事っつったら、土木工事の荷運びくらいしかねぇわ」

「はぁ...商売もできない、狩りもできない。厳しい街ですね」

「一文無しに優しい街なんかある訳ねぇだろ!むしろここが優しすぎるくらいだ!」

「はぁ...」


商業メインの街か。

いかにも異世界だが、

商売するのも、魔物狩りも厳しいな。

そもそも売り物にならない弱い魔物でさえ狩れるかわからない。

異世界に来て土木工事かぁ...

やだなぁ...土木工事やりたくない!


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※土木工事に対して悪く言っている訳では決してございません。作中の演出です。不快に思われた方々に深くお詫び申し上げます。


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現代の知識を利用し、作りさえすれば、間違いなく売れるだろうが、素材を集めて、加工して売り、ここの奴らに

「うわぁ!これはすごい!どこの誰か作ったのだ!」

「こりゃ、いかん!今すぐにその者を抱え込め!」

「交渉に応じないだぁ?多少手荒な真似をしてもいいからなんとかしろ」

「まぁたぁ新たにすごい商品を開発したぞぉぅ!全くなんてやつだ!あの者がほしぃ!あの者の知識がぁほしぃぞぉぅ。金の成る木だぁ。最悪捕えて拷問してでもぉ!」

と、目を付けられて、どうたらこうたら以下小説で読んだテンプレの道筋が思い浮かぶ。考えるのも面倒くさいし、そもそも色々と根回しして、手順踏んで売るの面倒くさ。


「......い......、お〜〜い......お〜〜い!!聞いてんのか!!」

「はっ、はいっ!なんですか!」


いかんいかん。

つい妄想しすぎてしまった。


「聞いてなかったのか?物も無いのに商売は無理だって話しだ。そこで、せっかくいい剣も持ってる訳だし、戦闘訓練を受けて戦える状態にしたらどうだ?もちろん訓練も飯も無料だ。領主様が民に対して最低限の自衛が出来るようにと、戦闘訓練を二日に一度開催している」

「ほぉう...それは素晴らしい制度ですね。無料とは、それだけこの街が経済的に余裕があるという事ですか」

「そうだ。現役の兵士が基礎から教えてくれるから間違いない。優秀な兵士候補を見つける場ともなる。魔物は放っておくとどんどん増えるから毎日狩らないといけないんだが、国中で兵士が慢性的に足りていねぇ」

「なぜ兵士が慢性的に足りてないのですか?」

「それはお前に説明しても意味がない」

「なるほど」


ふむ。商売はやめよう。

いつ収入になるかわからないし、新規開拓営業するのとか絶対にできない。


無一文のこの状態で、タダ飯も食えてタダで戦闘の指南もしてもらえるなら私にうってつけではないか。

授かった覚えないけど、無いけど、ここで秘められたチート能力を爆発させて

「必殺...」...ピカッ...ジュゴーン...

「今の攻撃は...なんだ!何者だっ!!!」

「ッぅわぁが名はスェンデュリ伯爵ぅっ」

「スェンデュリ伯爵...!聞いたことがない...だが!強い!強いぞこやつは!」

「隊長を......一撃で...ありえないっ!」

「是非うちの領地の兵士長として!どうか!」

「...伯爵?だと...どこの国の伯爵様が何用だ...」

「至急詳しく調べろ!!国王陛下に早馬を出せっ!!」

「他国の密偵やもしれん...」

「出どころが怪しかったら最悪始末しておけ!!」

「いや、あの実力だ。こちらの損害が大きくなる。叙勲でもして領地与えて、国内に縛り付け飼い殺しにしておけ!!!」

「片時もこやつに目を話すな!!」

「ばっ、ッバカナッ!王国最高の暗殺部隊が一瞬で見破られただとぅ!?」

なんて中二病全開の妄想が簡単にできてしまったぞっ!ふふ...グフフ...。

見てる分にはいいが、本当にそうなってしまったら面倒くさ。


「......おい!聞いてんのか!」

「はい!だからなんですか!?」

「だから、戦闘訓練は午前と午後でやってるから、午後から参加すれば夕食無料って話だ!お前の剣返しておくから参加するならさっさと行け。今からなら十分間に合う。場所は街の中心にある広場から西側に進んだ兵舎がある建物の目の前の訓練所でやってる。行けばわかる」

「はい!色々とありがとうございました!あ、ボロボロになった前の衣服を捨てる場所ありますか?」

「いらないなら、こちらで処分しておく」


剣を受け取り、変態門兵にお礼を伝え、別れる。

...あの服でまた勘ぐられそうだけど、ゴミだしな。

なんか聞かれたら記憶喪失設定で知らぬ存ぜぬで通そう。


まずは、ただ飯もとい、兵舎を目指す。


城門内から出て、街の中心を目指して歩く。城門から続く幅15m位の段差も隙間無く綺麗に整えられた石畳の道を見ると、この街の技術力の高さ、経済力の高さを感じざるお得ない。


左右には木造2、3階建ての建物が隙間なく立ち並んでいる。

1階部分は店舗になっていて、生鮮食品から衣類、生活用品まで様々な物が売られている。


時間帯だと思うが、人の往来は混んでるとは言えないけど、少ないとも言えないくらい。

馬車もそれなりの頻度で行き来している。


ちらほら獣人らしき革鎧着た狼とか猪だのが二足歩行してる光景に驚く。

あんまり見つめると絡まれそうなので、見ないようにしておく。


「活気があるな〜。いかにも異世界な感じだ」


目覚めてから森と狭い臭い空間にしかいなかった故、目の前の光景を直に見て、異世界に来たんだとやっと実感できた。


ここに何の目的で来たのか、何をすればいいのか、目標も何も無いが、せっかく来たのだから、とりあえず異世界を満喫すればいいのだろうか。


「っはぁっ!!!異世界!さらに獣人まで存在している!これはもしや!崇高すうこうなあのお方が存在している可能性が大いにありえる!後でさっきの変態門兵に聞いてみるか!...いや、この世界でのあの方の立ち位置が不明瞭な状態でむやにやたら人に聞いては、後にもしかしたらトラブルになるかもしれない!それとなくあの方の存在を確認するのだっ!!」


あっ、興奮してまた独り言が出てしまった。

異世界に来て目先の目標ができた。


買い物客がジロジロこっち見てる。

恥ずかしいので、足早で商店街を抜け、街の中心と思われる広場についた。


広場は環状交差点みたく出来ており、馬車などは反時計回りで回って右折して環状交差点を抜ける。

各大通りには親切に方角が書かれている。

さすがは商業の街か。交通がよく考えられている。


広場の中心には、地球にあった古代神殿とそっくりな縦長の白く大きな石造建築があり、大きな円柱が何本も並んで重そうな装飾が施された屋根を支えている。


頻繁に多種多様な人々が出入りしていることから、公共広場アゴラだと思われる。

公共広場の横に馬車を何台も停められる駐車場まである。


色々と街中を巡りたいが、そんなことを言ってる状況では無い。先を急ごう。






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ここまで読んでいただき、

ありがとうございます!!


話の展開が遅めですみません!

おじさんの長話が長くて、すみません!

何卒、お付き合いしていただけるとうれしいです

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