第5話

「お前みたいな特別怪しいやつは見たことが無い。念の為だか...」


なんだよ...ここまできてもったいぶるなよ。

もう丸裸にさせられた以上、恥ずかしさをこれ以上感じることはない。


「後ろ向いてこっちに向かってケツの穴を開いて見せてくれぇ...」

「ブフゥーーっ!!」


思わず吹いてしまった。

はぁあ!?裸以上に恥ずかしいことあった!何言ってんだこいつ!!

最後なんで小声になったんだよ!

恥ずかしがるなよ!

こっちも余計に恥ずかしくなるじゃねぇか!というか、なんで検問ごときで丸裸にさせられた挙げ句、公衆の面前で尻の穴まで開かなきゃならないの!?

この門兵の方がやましさ全開なんだけど!!私より先に私情を仕事に持ち込んでくるこの門兵を取り調べしろ!


「どうした!こっちは忙しいんださっさとしろ!」


はやく見せろと言わんばかりに急かされる。

ここで引いたら怪しまれて、拘束されるに違いない。


後ろを向いて列に並んでる人と目が合う。

目を逸らされる。ニヤついている人もいる。


門兵に向かってお尻を付き出す。


「......おりゃ...ぷすぅぅっ......」


やべ!指先を力みすぎた!

空気が入ってしまった!


...おじさんのシリのアナは年々弱くなってきており、空気が中に入ってしまうのだ!


「...フハハッ...あっ...オ゛ォホン」


門兵貴様!笑うな!咳払いで誤魔化ごまかすな!

通行人や列に並んでる人もクスクスと笑っている。

門兵顔は覚えたぞ!いつかボコボコにする!!


気を取り直した門兵は、目を見開き、

食い入るように私の尻の穴を見ている。


「よし、異常は無いな!...ッフッ!......ッフフっ......」


おい!

お前は俺の尻の穴の異常を見つけて何がしたいんだ!?クソがっ!


「......ッン最後だ......」


笑いを堪えながら喋るな!

まだなんかやらせる気が!


「最後に...正面を向いて足を肩幅くらいに開け。そして、○玉を下から上にかき上げるようにすくってくれ。掬った後の手はそのままお腹辺りまでゆっくり滑らせろ。シワひとつひとつ伸ばす気持ちでやれ。いいな」


え?意味がわからない。なんだって??


「ちょっと意味がわかりませんでした。もっとわかりやすく、お願いいたします。」

「...っだから!○玉の裏側全て俺に見せつけっ、見せろって言ってんだよ!早くしろ!」


はぁあ!?なんで?

なんで見せつけなきゃいけないの!?

この門兵相当危ないやつだ!!


いつの間にか立ち止まってこっちを見物してる人がちらほら見える。


これ以上目立つのは今後の行動に支障が出るかもしれない。

早く終わらせよう。


「はいっ!見てくださいっ!」

「「っく...っくっくくく...」」


焦ってまた変なこと言ってしまった。

集まってきた見物人に笑われてるが、周りを気にする余裕もなく、言われたことを実践する。


足を肩幅くらいに開く。

見やすいように腰を前に突き出す。

持ち上げる。


...モチ...グイ......


ゆっくりと、シワを伸ばすように...


......ポヨ~ン...


最後に...手をおへそ辺りまで持っていく。


......デロ~ン

「「「あ〜っはっははは!!!」」」


周囲の人々は大爆笑する。

クソ!もう嫌だ!お家に帰りたい!!

思ってた異世界違う!!!


「っんぁははっ!...っよし!どうやら害はなさそうだな。服を着て、取り調べ室までついてこい!!見世物は終わりだ!!散れ!!」


変態門兵の謎の確認に合格した。

郷に入れば郷に従えを実践したけど、

ほぼただのセクハラだったぞ。

普段から怪しい奴にはあれやってるのか?

やってなかったらあの門兵いつかボコボコにしてやる!


ズタボロの衣服を重装兵から受け取り、急いで着て、変態門兵の後を追う。

重装兵は私の後ろに付く。

城門の裏側まで案内され、重装兵は持ち場に戻った。

裏側から城門の中に入れるのか。


「この部屋で少し待ってろ」


変態門兵にそう言われ、城門内で案内された部屋に入り、扉を閉められる。


部屋は4畳ほどで、簡易的な椅子2つと机しかない。奥の椅子にとりあえず座る。

窓もないため、明かりを灯さないと真っ暗。


10分位待っていると、扉が開く。


「待たせたな。これより取り調べを行う」


野太い声が響き渡る。

部屋に入ってきたのは、フード付きの鎖帷子くさりかたびらが筋肉で盛り上がり、ピッタリ体に張り付いた、大柄な兵士。

身体がさっきの重装兵の防具込みで同じ大きさじゃないか?デカイ。

なかでも特徴的なのがしゃくれた大きなケツアゴ。

フードをかぶっているからなおさらケツアゴが目立つ。


鎖帷子兵士は向かいの椅子に座る。

それとさっきの変態門兵が部屋の中に入り、何か悟った顔つきで、一度深呼吸してから、扉を閉めた。


なんだ変態門兵。そんなに取り調べ嫌か?


「話はそこにいる部下から聞いている。目覚めたら森の中に居たと。最初から詳しく話してくれるか」

「...っぅ...」

「........っぁ.....」


むわぁぁがぁぁ!!!!

息くぅぅっっさっ!!!

野太い声でゆっくりと喋る筋肉兵士。物理的にも精神的にもニオイ的にも威圧感がすごい!!

後、息がものすごく臭い。


それは、例えるなら何年間も清掃されていない利用客多めの公衆便所の糞尿を濃縮し、水に溶かし、顔全体に霧吹きで吹きかけられるような濃密な、かおり。

窓も無く、扉も閉められた密閉空間にこれはきつい。


変態門兵のあれに続き、今度はこれを耐えなければならないのか。

この街変なやつしかいないのか...?


「...っぅ...わかりました。今日の朝…」


目覚めてからここまでの経緯を口臭便所兵に伝えた。


「そうか。話にできた干からびた人間みたいなのは、はぁぁぁ......人間の死体が元のフレッシュマンと言う魔物だ。弱い魔物だが、討伐対象になっている。おい、明日、こいつが言う場所に兵士を派遣して討伐しとけ。」

「......っぅだぁっ.........はっ!!」


くさぁっっ!!くさぁぁっ!!

一気に喋るなっ!

会話の途中にため息つくな!!

取り調べを変態門兵と替われ!

扉の前に立って鼻呼吸してろ!

お前この仕事向いていない!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る