第4話

城門から100m手前まで来た。

城門の前に攻撃力が高そうな槍、大きな丸い盾を持ち通行人を監視しているフルプレートアーマを着た重装備の兵士が2人。その手前に革鎧を着ている門兵4人が城門に出入りしている人の事務手続きをしているようだ。


「バカな...これ現実なのか?まるで海外の超弩ちょうど級中世ファンタジードラマを見てるみたいだ。崖から転落して偶然過去にタイムスリップした?仮にそうだとしたら、さっき会った幌馬車の人も、目の前の光景も辻褄つじつまが合う。だが、目覚めてから一番最初に会ったリアルコスプレミイラはなんだったんだ?あれも本物だとしたら化け物に遭遇そうぐうしているじゃん...タイムスリップどころじゃないぞ...」


だからほろ馬車の人が「よく無事だったな」って言っていたのか?偶然出会わなかっただけで、化け物がうようよ居るのか?


「化け物がうじゃうじゃいる世界といったら...ゲームの世界か...最近ハマった無料で読める異世界に行く物語のやつ」


え?でも、どういうのがお決まりなのか、おじさんまだよく分かってないけど、読んだ中では、綺麗な女神様に異世界転生手続きみたいなのしてもらって、女神様の恩恵おんけいとかチート能力もらってから異世界に行くんじゃないの?

それか、イケメンまたは美少女現地人に自分の記憶が植え付けられて最強なおかつモテモテになるとかが熱いはず........

寝てる間に勝手に異世界来てしまってる...?


「本来の手続きみたいなのすっ飛ばして勝手に異世界に来てしまったから、女神様と会わずにチート能力も無い、若返り、イケメンにならず、ハーレムも無い......最悪だ...悪夢だ......だが、来てしまったんだ。ひとまず、目先のことだけ考えて生きるしか無いか。この世界の情報収集をして今後どうするか決めよう」


よし、門兵を話を聞いてみよう。自分の服装から間違いなく怪しまれるだろう。むしろさっきからここに立ってぶつぶつ独り言を言っている時点で怪しまれてる。


城門に目を向ける。

門兵にチラチラ見られてる気がする。

並ばずに通過している人もちらほらいるが、きっとここの住民だろう。

そして、城門の20m手前で10人くらいの列ができている。

馬車の列もできており、5台ほど並んでいる。

ふむふむ、門兵がこっちに手を上げたら門兵に向かって歩けばいいのね。

最後尾に並んで順番を待つ。

一人あたり5分くらいの手続きで中に入っている。


色々と自分の設定に思考を巡らせると自分の番となり、焦る。

結局何も思いつかなかった。

記憶喪失そうしつ設定でやり通してみせる!

緊張しながら門兵に向かって歩く。

門兵との距離が4m位に近づいたところで、


「おい!そこのボロ雑巾ぞうきん!止まれ!お前だよ!後ろ振り返るな!目が合っただろ!それ以上近づくと刺殺さしころす!」


えぇっ!!いきなり!怪しまれすぎだろ!クソ!川の水浴びとけばよかった!確かに服装はこの世界では浮いてるけども、殺すって…

通行人にジロジロ見られ、距離を空けられる。


「お前!何者だ!どこから来た!」

「私はセイノスケと言います。目覚めたら山の中にいて名前以外まったく思い出せないのです。親切なほろ馬車の御者ぎょしゃにこちらの町までの道を教えてもらいました」


門兵が納得いかない顔で私を見つめて、何かを考えている様子。


「名前以外思い出せないだぁ?記憶が無いと言うことか?荷物はどうした?腰のそれだけか?」

「はい。山で目覚めたときすでに腰に装着されておりました。目覚める前の記憶が思い出せないので本当は山のどこかにあるのかも知れませんが、よくわかりません。」


門兵に疑いの目を向けられる。


「......そうか。お前の言っていることを今すぐに信じることはできない。街へ入りたいなら、これからお前の取り調べを別の場所で行う。良ければ腰の剣をお前と俺の間辺りに投げろ。もちろん預かった物は取り調べ終了後問題なかったら、全て返却することを保証する。それができないなら、立ち去れ」


なるほど、確かに何しでかすかわからない人物は無力化しておくのが賢明だな。


迷うと怪しまれそうなので、私は即座に腰の剣鉈けんなたを外して、門兵との中間点に投げた。


「ピーー!ピュフィッ!ピーー」


門兵は視線をこっちに向けながら、完全には後ろ振り返らず、顔を横に向けて首にぶら下げてる笛を吹く。

すると、城門の前で立っていた重装兵がこっちにゆっくり歩いてくる。


「どうした」


190cm以上はあるであろう重装兵が門兵に問いかける。


「これから目の前にいる見たことない格好したやつに取り調べを行う」

「わかった」


取り調べの決まりでもあるのかね?指示がなくとも重装兵が勝手に動く。

重装兵が投げた剣鉈を回収し、さやから剣鉈を半分ほど抜いて戻し、裏側も同じ動作を繰り返す。最後は剣鉈を鞘から完全に抜いた。


「............」


しばらく角度を変えながらながめ、特に何も言わず、また鞘に戻す。

重装兵は門兵に目配せをする。


「それでは、上下の服全てその場で脱げ!脱いだら服を同じように投げて渡せ!その後は両手を頭の後ろに組み、両ワキを俺に見せろ!俺が合図したらゆっくりその場で1回転しろ!」


門兵がとんでもないことを言い出した。驚いて呆然と立ち尽くす。

門兵あなたおじさんの裸がそんなに?ですか?


「どうした!やましいことがあるから服を脱げないんじゃないのか??」


やましい気持ちがあるのはお前だろ!

だが、ここ以外に行くアテが無い。

脱ぐしかない。


「やましいものはございません!脱ぎます!」


脱ぎますとか言っちゃった。

みんなの視線が痛い。

36歳おじさんのだらしない裸を見て誰得だよ。

あぁ、たるんだお腹が恥ずかしい。

脱いだ服を重装兵の足元を狙って投げ捨て、両手を頭の後ろに組み、両ワキを門兵に見せつける。


「......ッフッ......っまわれ!!」


ん?アイツ今笑わなかったか?気のせいか?

ゆっくり1回転する。

辺りの景色が視界に入り、ジロジロ見られていることにまた恥ずかしくなる36歳のおじさん。


「よし、いいだろう」


その間に重装兵は服を裏っ返しにしたりして入念に何かを確認し、また門兵に目配せをした。








────────────────────

ここまで読んでいただき、

ありがとうございます!!


趣味で執筆活動を最近初めましたが、作中のご指摘、矛盾点などございましたら、お手数でなければご教授いただけると幸いです。


また、話の展開が遅めかもしれませんが、何卒、お付き合いしていただけるとうれしいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る