第2話
「っがはぁぁっ!!はぁ...はぁ...はぁ...死ぬかと思った!!崖から落ちて...あれ?夢か??」
何がどうなっているんだ。
気を失っていたのか??
時計を確認するが落下の衝撃で破損している。
どうやら崖から転落したのは本当のようだ。
自分の状態を見てみる。
「服もズボンもズタボロだ。あれだけ転げ落ちて
崖から転落して無傷だと?え?どゆこと?
辺りを見渡すが私物は見当たらない。
あるのは登山開始前に腰に装着しておいた狩猟用
登山リュックはおそらく崖のどこかに引っかかってるだろうが、回収するのは無理だな。
スマホは登山リュックに入ってる。
「とにかく生きてるし、なぜだか体の調子がいいから、なんとか下山できる...はず...ここは山のどの辺だ?落ちる前は山の中腹あたりだったが、転落前に下を見たとき川なんかなかったぞ...」
なぜ目の前に川があるんだ?
「勘違いか?いや現にあるのだし、有る無いはどうでもいいか。それより時刻は?」
落ちる前は昼頃だったはずだ。
今の太陽の位置を見ると朝方だと思う。
と言うことは1日近く意識を失っていたのか?
「ここが山のどの辺りなのかわからなくなってしまった。が、こういう非常事態こそ落ち着いて行動しよう」
と、自分に言い聞かせながら、今後の作戦を考える
「 う〜ん......とりあえず川沿いを下って山道を見つけるか、下りながら登山者を見つけて道を聞こう。遭難したからっていきなりサバイバルするのは間抜けだ」
遭難して警察に救助を求めるニュースを見て自己責任だろ!自力で脱出しろ!とバカにしてたのを思い出した。
まさか自分が遭難するなんて...
辺りを見渡しながら、川沿いをジャリジャリ音を立てながら下る。
足裏に優しい。
辺りを見渡し、視界に映るのは
「森に入って山道探すか?いや、だめだな。もし近くにヘリが飛行していたら森の中だと気づいてくれないだろうな」
いや。そもそも登山届出してないから警察に捜索されないし、通りかかったヘリに手を振ってもまたバカが手を振ってるよとしか思われないんじゃないか!?
「うわぁーー!!やっちまったぁーーー!!うっわあーーーー!!」
つい大声で叫んでしまった。
遠くで誰かが声を聞いて来てくれるかもしれないからいいか。
川下に向かってひたすら歩く。太陽はもう真上にある。
「歩き過ぎて足の裏が痛い。休憩しよう。...ついでに川の水飲むか」
いくら歩いても誰とも遭遇しない、山道らしき道も見つからない不安と足の痛みで精神的にきつい。
ふと川下に視界に向ける。
「...なんだ?人か?」
遠くに木々の間から川周辺の様子を見てる様な人影がうっすらと見える。
「なんの様子を見てるんだ?釣れそうな魚か?川を見るのに夢中でこっちに気が付かないか」
人がいるということは近くにキャンプ地とか山道とかがあるはずだ。
足裏が痛いから川沿いの砂利道を歩くのやめて、足裏の保護をしないとな。
少し森に入って足元が砂利から土に変わったところで川下で見つけた人影の方向をゆっくり目指す。
「人を見かけただけでも大分安心するな。今日が日曜日なら終電までに帰らないと明日の出勤に間に合わなくなる。上司に怒られる。てか、帰りの電車賃も無いじゃん。どうやって帰ろう...下山したら警察に相談だな...」
ブツブツと独り言を言いながらゆっくり歩いていると、さっき見た人影が木々の間から少し見えてきた。二人のようだが、歩みを止める。何かがおかしい。
「なっ...なんだ...?やけに細いな?」
相変わらず川の方ばかり向いてて、こっちにはまだ気が付かないようだ。もう少し近づいて隠れながら目を凝らす。やはりおかしい。
「コスプレ...か?山に来てコスプレ??完成度高すぎるだろ...!!」
視界に映るのは後ろ向いてて顔は見えないが、身長160cm位。全身ピンクっぽい薄紫色の肌でやせ細っている。腰には臭そうなボロボロの茶色の布が巻かれている。髪の毛はハゲ気味でほぼ無いに等しいが、肩くらいまで伸びている。血色の良いミイラに見える。最近の特殊メイクすごい。
「レ、レベルたけぇ〜!!」
私は聞いたことがある。
あまり登山客がいない山に未確認生物に扮して、その姿を遠目でちらっと登山客に見させて姿をくらまし、本当にそういう生物が存在するのだと登山客に思い込ませる者たちがいるとっ!!昔からあるビッグフットとかもこういう奴らの仕業だよね?そういう秘密結社でもあるのか?
「ヴッ!ウゥ〜アァ〜...」
「ア゛ァ゛〜〜〜っ!!!」
発声練習も抜かりない。本気のようだ。役に入りきってるところ悪いが、私は只今遭難中だ。このいたずら野郎共にキャンプ地と下山できる道を聞こう。
離れたところで隠れて様子を見るのをやめて、びっくりさせない様にゆっくり歩み寄りながら話しかける。
「こんにちは。練習中のところ、
すみ...ま.........せ...............ん.....................」
声を掛けて振り向いた姿に驚愕した。そこには、顔全体のミイラの如く乾燥しきっており、目元が木の洞みたく穴だけ空いていて、眼球が無い。口をだらしなく開けていて、鼻が無い。ただ黒い穴が空いている。簡単に言うと皮付きの頭蓋骨。
「「ア゛ァ゛〜〜〜〜〜!」」
目の前にいる異常な光景に混乱する。
「えっ...えっ...なに...」
「ヴァ゛ァ゛ァ゛!アァ...」
「ア〜〜〜ァ...」
干からびた人間みたいなのが、一歩、また一歩、おぼつかない足取りでこっち来る。
「き、きっっもっ!!...怖い怖い!!...冗談ならもうその辺で勘弁してください!崖から落ちて遭難して困ってるんです!!助けてください!」
相手の一歩に合わせて無意識に後退する。
「「ヴア゛〜〜〜〜ッ!!!」」
リアルミイラが急に全力疾走でこっちに向かってきた。
「いやぁ〜〜〜!!こぉ〜っわっ!!」
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