第2話 何もなかった
彼女と目線が合う。
鷺沼愛梨。
うちの高校の中で最も可愛いとの呼び声高く、品行方正、誰にでも優しく、文武両道。
完璧な存在、神に選ばれたと言っても過言ではない。
クセのない黒髪は腰辺りまで伸びており、パッチリとした目に小ぶりな唇、左目の下の泣きぼくろが更に魅力を引き立てる。
告白された回数は3桁にも及ぶと言われる張本人。
そんな彼女が鼻を押し付け、エサに飢え、死に物狂いでエサを探す犬の如く俺の体操服の匂いを嗅いでいる。
頬はほんのり赤く染まり、恍惚の表情を浮かべている。
ちなみに俺は山川拓也。
別に何か取り柄があるわけでも無い。
陽キャでも陰キャでもない。
どのクラスにもいる、いなくなっても特に何も思われない。
そんな存在。
なんで俺のを?と思わないこともないが、それ以上に気持ち悪さが勝った。
そして俺はそっと掃除用具箱の扉を閉め帰路についた。
俺は何も見ていない。
記憶よ消えろ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます