第47話 マサル❤️シンヤ お別れです。
「オイ、シンヤ、オレと別れても朝のトレーニング欠かすなよ!」
「……なんだよ、その口の聞き方は。言われなくてもやるから、黙っとけ!」
マサルは相変わらず口が悪い。別れの挨拶くらいしんみりしてもいいじゃないか。俺だってへこんでんだ。
「オイ、シンヤ、これからもアキラを大切にしろよ。マサヤの物になったって大事な友達には変わりないんだからな!」
「オイ、マサル。オイって呼ぶのやめてくれる?命令ばっかすると持ち上げて振り回すぞ!マサルは乗り物に弱いもんな。弱点見つけたし、ハハ」
一緒に遊園地行ったじゃないか。妖精だか都市伝説だかそんな事どうでもいいんだよ、今、目の前にいるこの小さいオヤジは俺のダチじゃん。
「……マサル、お前みたいなオールバックでサングラスのいかついオヤジ、買うやついるのかね!なんなら俺がずっとお前をレンタルしてやってもいいけどな」
あえて買うって言ってやった。マサルはスルーしてサングラスを外す。
「……シンヤ、シンヤ君、この顔をよく見てください。この顔は女子高生の好みなんです。ハイ、残念でした。オレは可愛い女の子の用心棒として活躍するんです」
マサルは竹刀を振り回す。剣道四段って嘘言ったくせに。オヤジギャグ思い出して、笑ったあと、寂しくなった。
「……オイ、シンヤ、そこらへんでカッとなって喧嘩なんか売るんじゃねえぞ。いいか、オレはすぐに助けにいけないんだからな。分かったか?」
「フン、何を言うかと思えば、もう俺、喧嘩しねえの。もうアラサーだよ」
マサルはまだ俺の事を心配してくれているのか、少し焦った。
「そうだな、お前の根性叩き直してやったからな。ありがたく思え!」
「ったく。調子に乗りやがって。誰も頼んでないって〜の!」
マサル、本当は感謝してる。お前と出会わなければ一生逃げる人生だったかもしれない。素直にありがとうが言えない。けどあと五分もない。焦る。
「オイ、マサル、あり、ありがとな。過去の自分を吹っ切って今、清々しい気分だ。まあ、一応マサルのおかげだ。マサル、サンクス」
「フン、英語なんか使いやがって。……シンヤ、風邪引くなよ!」
えっ、なんでそうなる。唐突な言葉にもっと焦る。
「マサルは風邪引かないよな。バカは風邪ひかないって……嘘、うそ」
マサルがサングラスをかけた。威嚇してるのかな。怒らせちまったかな。
「……シンヤ、あゆみちゃんを幸せにしろよな。あんな可愛い子お前にはもったいないけど、オレはお前の幸せを願ってる!オレもこれからシンヤみたいな……シンヤのような単純だけど根が純粋な……グスン、根がまっすぐな……グスッ」
マサルが突然背を向けた。泣いてるのか?まさか、マサルが泣くわけないよな。
「……シンヤみたいな奴が大好きだ!サヨナラなんかしたくねえ!」
マサルは泣いていた。照れ隠し、涙を隠すためにサングラスかけたんだ。
「オイ、マサル、なんで泣くんだよ、移るじゃないか、俺だってマサルと別れたくないよ。けど仕方ないんだろ、お前ら人間の幸せのために働くんだろ?だったら俺もマサルにエールを送るよ!」
諦めるしかない。だったら、男同士、お互いの幸せを願ってエールを。けど無理だ。こんなバカバカしい話があるか!
「マサル、マサルと出会えて良かったよ。ありがとう。元気でな」
「シンヤも元気でな!」
マサルは俺の肩に飛び乗り、頬擦りをしてきた。お前ヒゲ剃ってないだろ。痛いじゃねえか。マサルは笑って俺の頭を竹刀でパシッとする。何で?
俺はマサルと最後の握手をした。
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