第43話 With love from small G
十二月二十八日 月曜日 午後 第二会議室
「うむ、よくやってくれた。君たちは最高のオモチャだ!私の期待をはるかに超えている。特にシゲル、あゆみ君のピンチを救ってくれてありがとう。君が機転をきかせてくれたおかげで我が社の評判を落とさずにすんだよ!」
私は五人の報告を聞いたあと、一人一人を労った。コンセプトも完璧だ。明日の会議後、プレゼンがある。総仕上げをして臨むつもりだ。
「……ここでキャッチコピーを先に君たち五人に伝えよう!」
私はホワイトボードに大きく文字を書く。── With love from small G──
「ワタル、どういう意味か分かるかな?まず読んでみてくれ」
「……ウイ、ウイズラブ スマル、あっ、スメルジーでっか?意味は……愛と一緒にGが匂うでんがな。ジーはあれや、わしらの事やな。だから加齢臭の愛でっか?」……ワタルに聞いた私が悪かった。
「ワタルさんはおバカさんですね、小さいオジさんから愛を込めてっていう意味だと思います」ミツルが答えた。
「その通りだ。さらに G はジャージという意味も含まれている。君たちはオモチャとして人間たちに愛をプレゼントする尊い使命があるんだ。すごい事だろ?でマサル、キャッチコピーをもう一度言ってみなさい!」
「はい。ウイズラブ、フロムスモールジー!小さいオジさんから愛を込めてです」
マサルは大きな声で言った。ワタルが悔しそうだ。ほっておこう。
「では次にCM についてだが、テレビやWebで流す事に決まった。みんな事前に渡したビデオは見たかな?各自練習の成果を見せて欲しい」
「まずは簡易ステージに上がってくれ。立ち位置はこうだ。💚💙❤️💛💗。
この順番で並んでみてくれ。……センターは赤ジャージマサルなんだが、うん、やはりサングラスは取ろうか。インパクトが強すぎる。はい、よし。青ジャージシゲル、いい笑顔だ。だがもう少しリラックスして。ちょっと気取りすぎているね。水谷さんの真似はしなくていいから」
こんな感じでどうだろう。黄色ジャージのミツルが弱いかな、ピンクジャージのワタルの横だとせっかくのイケメンが潰されちゃうかな。
「……ワタル、頭をいじらない。バーコードが売りなんだから。はい、緑ジャージサトル、勝手にジャンプしない!白衣姿に変身したら浮くよ!みんな私を見て!」
うん、なんとなくバランスが悪いな。
「ピンクジャージワタル、一番背が低いから真ん中に移動して!❤️💚💗💛💙で行こうか!……ワッ、ワタルごめん、なんかごめん」
身長で立ち位置決めたら、イケメンの緑ジャージサトルと黄色ジャージミツルに挟まったよ。より不細工さが際立ったな。お腹も出てるし。まあ仕方ない。
「じゃ、練習した決め台詞の確認しよう。マサルから言ってみなさい!」
❤️この世に悪がある限り、オールバックで迎え撃つ、赤の戦士マサル参上!
💚病んだハートに名言を、白衣に君もいちころさ 緑の戦士サトル参上!
💗玉子の食べすぎ要注意、臭くなったらそれ屁です。ピンクの戦士ワタル参上!
💛家族に愛を、心に歌を、ハハハのハサンセンコクです。黄色の戦士ミツル参上!
💙君の記憶は僕のもの。君のハートも僕のもの。青の戦士シゲル参上!
「はい、次、ここでみんなそろって決め台詞、よーい、ハイッ!」
『世界中に愛と平和を届ける戦士、スモールジーファイブ!』
「よし、いい出来だね。ただ、ジーファイブのジーの部分、ワタルだけイントネーション違うから気をつけて。君はイケボなんだから、大きめに!」
イケボの褒め言葉が嬉しいのか、ワタルは自主練を始めた。ジージーうるさい。
「 決め台詞の前に音楽入れるから。十秒間踊るよ!ワタルは座ったまま、そうだね、あぐらかいて指パッチンしていて欲しい。両脇のサトルとミツルは足が長いからそれを活かしてあげてみようか。マサルは竹刀でパフォーマンスしてみるかな。シゲルはスマートにその場でターンもいいね。試しにやるよ!スタート!」
♫ トントンタタタン、トンタタタン、トントンタタタン、トンタタタン♫
「いいね、いいよ!ワタルよそ見しないで。笑顔のままで。マサル、やっぱりサングラスかけようか。決め台詞の寸前に竹刀を振り下ろして男らしさをアピールしよう!あとは完璧だね。サトルは踊り慣れてるね」
褒められて嬉しいのかサトルは顔を赤らめた。
「最初から通しで行くよ!よーいはじめ!」
十回は練習しただろうか、どこに出しても恥ずかしくない出来になった。
「部長さん、すいません。わし、ミナと一緒に帰りたいんですけど。朝、コンビニのあんちゃんに声かけられて、告白されるかもしれんのです。ユージと別れたばっかで付き合う気はないと思いますが、阻止してきやす!」
ワタルが時計を見ながら言った。もうそんな時間なのか。そろそろカケルも来る時間だが、ワタルを帰らせた。
「……ではみんなも解散しようか、明日の企画会議では人間モードの声と耳で対応するように。企画部の五人は初めて君たち五人を認識する日となる」
「お疲れ様でした」「また明日」「楽しみです!」
私は小さいオジさんたちに手を振った。
これはかなりインパクトのある宣伝になるであろう。あとは企画部の者たちの前で披露し、営業にも力を入れてもらおう。そのあと、シゲルの出番だ!
明日が楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます