第28話 女子同士、密室、何も起きないはずがなく…淡い妄想はノンストップ!

 顔も要領もいい奴らには分かんないでしょうね。ほんっと、なんなのよもう。赤点から即留年コースだけは絶対に、なんとしてでも回避しなきゃ。


 そのためには毎日それなりに勉強すればいいんでしょうけど、愛理との接する時間が減ることに繋がってしまう。ただ、出し抜けに男四人組が愛理に近づいて精神的にも肉体的にも親しくなったりなんかしたら……っ!


「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛」


「桃尻さん大丈夫ですか!?」


「愛理先輩、話しかけない方がいいですよ~」


「でもっ」


「いいからいいから、早いとこお弁当食べちゃいましょうよ!」


 一人でポップコーンのように暴れ回る桃尻エリカを見かねて心配した天使の愛理は、雅人の言葉を聞かずに私の両手を手に取ってから、キリッとした顔つきでこう言った。


「桃尻さん! 私と勉強会しませんか?」


「勉強会?」


 ポカンとした。テスト勉強をするのが嫌で嫌で精神に異常をきたしていたので、申し訳ないけど思考が追い付かず。


「日程は二週間後のテストに向けて、前日の日曜日にラストスパートとして勉強会をするのはどうでしょうか?」


 さすがは私が惚れた女、松風愛理という子だ。思いつきではなく、具体的にいつなにをするかを最期までちゃんとしっかりと話をする。同時に暗く荒ぶりまくりだった心にお花畑がさーっと広がっていく。これは――まさしくヒロインからのお誘い! 


 仮に勉強会を愛理の家でやると想定しよう。彼女は親元を離れてワンルーム一人暮らし。教えてもらいながらも次第に距離も近づいていき、勉強会という名の「桃尻さん、私にはこっちの勉強も教えて」ってシチュにもってこいの展開。よっしゃこい、私があなたを全て受け入れる! 伊達に現世でアラサーまで生きていない経験値をぶつけてやるときが来た!


 堪えろ、堪えろ私の鼻血よ……っ。


「うふ、それは名案ですわね。ではいつになさいます?」


 鼻血が噴火しないよう、さりげなく鼻の穴を押さえて日程を組もうとすれば、シュババババ! 男たちが愛理の前に立ちふさがる。


「勉強会なら、僕たちの家でやるといいよ……」


「うん、睦月にいの言うとおり! みんなでやりましょうよぅ!」


「僕は三年だから分からない問題はなんでも教えてあげるよ。ああ、もちろん桃尻さんもね」


「俺はゲームすっからお前らでやれば?」


「ちょーっと待ちなさいよ! あんたら、なに勝手に……っ」


「わあっ! それいいかも!」


 あ、愛理――!?

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