第21話 あの子が幸せになるなら、他に望むことはない!

 次に生まれ変わったらどんな生き物に転生するんだろう。


 猫? 犬? 魚? ミジンコ? 弱肉強食だったら食べられる側より食べる側の方がいいけど、神様に贅沢を言えば愛理と、愛理ともう一度巡り合いたい。現実世界のOL生活をしながらゲームと出会うのでもいい。またゲームの世界に入って最悪モブキャラになるのでもいい。もっと最悪なことを言えば愛理の子どもに生まれるのでもいい。男側の方は、そうね。認めたわけじゃないけど、あの四人兄弟の中なら誰でもいい。私なんか忘れさせて、愛理のことを最期までちゃんと幸せにしてくれるならね。


「あとは、任せたから」


 雅人、三咲、睦月、恵のメンツが脳内でエンドロールさながら流れていき、幕を閉じるのを表したかのように瞳も閉じていけば――ちょっと待って。やっぱ起きる。だってもう地上に落ちているはずなのに全然痛くない。というか、なんか体中がふかふかしてて……? 


「あっ、起きた!」


「寝顔ぶっさ」


 両目をしっかりと開けると、雅人と三咲が私のことを覗き込むようにガン見している。


 雅人と三咲の子どもに転生? いや、冷静になろう。男同士で兄弟だった。ぐちょメモの世界にがBL要素追加とかしたのなら納得がいくけど、ハッキリとした事情が飲み込めていない。第一私は死んだのか、まだ息絶えてないのか、それとも――。


「いやいや、マットレスを用意してよかったよ」


 三咲の真後ろでいきなり恵が現れてはそう言った。私はマットレスの単語にピクリと反応を示してから、慌ただしく起き上がった。すると辺り一面を軽く覆いつくすかのような白いマットレスがド派手に設置。金持家の使用人らしき数名が睦月にペコペコと挨拶をしては、もう何人かの使用人は生徒を近寄らせないように要領よく通行を整理させている。


「私……生きてる……?」


 心臓辺りに手を置いて動いているを確認すれば、どっと冷や汗が流れ落ちてくる。このマットレスがなかったら確実に、絶対に死んでいた事実に身震いはずっと止まらないでいると、四人兄弟は私を取り囲むやいなや、


「学校やみんなに迷惑かけて……どうしてこんなことしたの……」


「桃尻家のお嬢様が金持家に借りを作ったってことでいいですよね~? 桃尻パイセ~ン?」


「お前ならマットレスなしでも絶対に生きてた」


「まあまあ、そんなに責めちゃいけないよ。だけど桃尻くんも今回は無事だったからよかったものの、最悪怪我だけじゃ済まなかったこともよく考えるようにね」


 ひえぇ~! やばい! ぐうの音も出ないんですけど!


 身を小さくして四人に尋問されていれば、こちらへ尋常ではない急ぎ足で駆け寄る砂を蹴る音がする。この歩幅、微かに香る匂い、息づかい……分かる!


「桃尻さんっ」


「愛理! ごめんね! 心配かけ……」


 喋り終えていない、本当に中途半端な部分で口を動かすのをやめた。四人がいる前で、サリバンがムンクのように顔を両側から挟んでいる近くで、外にいる生徒や校舎の窓から見る生徒が見守る中、目に涙をためながら抱きついてきた彼女を受け入れる私の両腕は突然のことで耐えきず、本日二度目の上半身ごと後ろへ転がっていく。

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