第3話 どうなる桃尻エリカ!?イケメン、来襲!
全力ダッシュをすること数分、無事に愛理が降りるバス停へと到着した。バス停には誰もおらず、私が一番乗りの。
「はぁ、はぁ……っ。つかれたぁ~……」
こんなに走ったのは学生以来。前髪が汗ではりついておかしなことになっていた。そしてスケバンかってレベルの長いボリュームスカートに履き慣れていないので、来る途中派手にずっこけてスカートの一部が破けたのは言うまでもない。
「うへぇ、汗べちゃべちゃ」
今すぐシャワーを浴びたい気分に陥るけど――雲ひとつない快晴、小鳥たちの歌声にささやくように揺れる木々たち。
「未だ信じられない。ここがぐちょメモの世界だなんて……」
すごっ、細部のところまでゲームで見たまんま! 何気なく車で通勤するおじさんも歩道を歩く小学生たちも全員がゲームの人物なのよね。なんだか不思議。記念に深呼吸しとこっと。
「これが愛理も吸ってる酸素……そう思うとなんだか一段と美味……」
これからあの最高に可愛い天使に会えるなんて興奮して胸がドキドキなんてもんじゃない。鼻から爆発しそう。ああ、愛理……会ったらすぐに抱きしめたいよ。なんなら頬にキッスをしてあげたい。舐めてもいいよ。
よだれをじゅるじゅると垂れ流していれば、遠くから何人か男子高校生がやって来てはバス停で待機していた私の後ろへと並ぶ。
初見は同じ学園の制服を着ている。そう気にもとめず愛理との妄想を脳内で繰り広げていれば、甘ったるいねちょっとした口調が私に届いた。
「あっれれ~? 桃尻パイセンじゃないですかぁ?」
は!? この口調は……まさかっ!?
驚いて口を大きく開けたまま振り返れば、そこには「ぐちょぐちょメモリアル」の顔とも呼べるイケメン四人組、言い換えるとイケメン四人兄弟がいたのだ。その名も金持兄弟。苗字の通り、家が大金持ちの資産家の息子たち。公式ファンブックによれば、桃尻家とどっこいどっこいとのこと。学園でも女子生徒のファンがたくさん。花の四人組ならぬ、金の四人組。F4ならぬM4的な存在。
もう一度伝えるが、この四人兄弟はなんせ顔がとびきりいい。周囲にいた通勤途中のお姉さんに集団の女子中学生は奴らに心臓を鷲掴みにされたように目をハートにして棒立ち。それは太陽まで同じらしい。さらに強い日がいっそう眩しくなり、四人の背後に光を浴びせては神々しい演出が加わった。
ぐぬぬ、天まで味方につけるとは……っ!
驚愕していた心から威嚇の心へと変化していく。何を隠そう、こいつらは愛理と結ばれるルートのある男たち。ライバルなんて甘い響きは不要。こいつらは敵でしかないのだから。
それにしても不覚だった。ぐちょメモの世界に入れたことが嬉しすぎて肝心の毎朝一緒にドキドキの通学イベントがあることを忘れていた。
私の馬鹿。浮かれすぎるのもよくない。どう考えたって向こうはルートが存在する男四人で圧倒的有利。ここに桃尻ルートをどう加えていくか冷静にならなければ……。
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