第4話 集え!個性豊かなイケメンたち!

「今日もすごい制服ですね~! 胸焼けしそうですよぅ」


「あ? それは褒めてらっしゃるの?」


「あっ、ごめんなさい! フリルが生クリームに見えちゃって☆」


 う、うぜええ――!!


 さっきから私を小馬鹿にした感じで話しかけるのは金持兄弟でも末っ子の雅人。愛理と学年はひとつ下の一年生。かなりの童顔で可愛い系男子。長めのパーカーを羽織っては、少し身長が低いことがコンプレックスなのか常に先端がコンドームのようにへにゃっとしたピンク色のニット帽を身に着けている。年下だし、あまり接点がなさそうなキャラに感じるかもしれないが、意外にも愛理と一番最初に出会った人物である。見た目とは裏腹の大食漢でよく食べる。そして親密な関係になればなるほど男の顔を見せつけたり、愛理の母性本能をくすぐりながらもグイグイくるドS。よって今すぐ愛理と接触を絶たなければならない要注意人物。


「つーか、なんでお前ここにいんだよ」


「おほほ、よくぞ聞いてくれましたわ。たまにはダイエットのため徒歩通学をしようかと」


「ダイエットよりその巻きうんこみたいな髪どうにかしろうお。切れば軽く十キロは落ちるだろ」


「うんこ!? レディーにむかってあーた失礼でしてよ!」


「授業中にその髪が前にあるとクソ邪魔なんだよクソ尻」


 口ぶりがとんでもなく汚いのは金持兄弟の三男の三咲。愛理と桃尻エリカとは同じクラス。髪は兄弟で唯一赤く染めており、校則禁止のピアスをあけては制服を着崩す絶賛思春期のツンデレ属性。学校へ来ても授業をサボることが多く彼だが、成績は学年でもトップレベル。ツンデレなせいで恋人関係になるのは四人の中で一番遅いほうでもあるが、愛理もそんな彼に惹かれていくのを多々あるイベントごとにこれまた丁寧に描かれている。一番好きなルートを選べといわれたら三咲ルートを選ぶけど、それはそれ。親しい関係になればなるほど愛理の番犬みたいな立ち位置となって一度だけでなく、かなりの回数嫌がらせをする桃尻をボコボコにしている要注意人物。


「桃尻さん、おはよう……」


「あら、ごきげんよう」


「…………」


「…………」


 三咲の横にいる挨拶を交わして会話終了した人物は次男の睦月。実は三咲と二卵性の双子であり、こちらが兄となる。色白でミステリアスな風貌を構えており、こちらも同じクラスで生活態度は弟と違って良好。校則違反もなし。寡黙で何を考えているか全く分からない。意外にもギャグ漫画が好きらしい。愛理とは同じ図書委員でよく放課後は二人きり委員会の仕事をでしていた。最初こそギクシャクの関係でも次第に打ち解けていき、居場所がないと感じていた愛理が真っ先に心の拠り所だと明言していたシーンも存在する。だが油断はできない。夕暮れの図書室でナニ未遂までした男でもある。打ち解けたら一巻の終わり。よって要注意人物。


「おや? 桃尻くんのスカート、破けているね」


「そうなんですの。来る途中に私ったら転んでしまいましたの」


「それは大変だったね。ちょうどソーイングセットがあるから応急処置だけど手縫いしておくよ」


「あら、どうも」


 深い緑色のカーディガンをブレザーの下に着ては紳士的に接する彼こそ金持兄弟の長男の恵。学年はひとつ上の三年生。学校一頭がよく、そのうえ生徒会長。仕事が早いので教師から頼られるのはもちろん、誰にでも優しいので男女問わず信頼されている。転校してきた愛理を心配して学校案内を率先しては、裏でクラスや生徒会室に愛理の居場所を作り上げたこともある恵。金持家の未来は明るいが、彼はぐちょメモで唯一のヤンデレルートを持つ非常に厄介な存在である。愛理が幸せだとしても、一生監禁されてしまうのなんて耐えられるわけがない。私が。いわずも要注意人物。


 ここまでのまとめ、全員要注意人物。誰ひとり愛理に近づかせるわけにはいかない。


 そして、


「ところでパイセン、ここに愛理先輩が来るんで先に行ってもらえますかぁ?」


「お前が影で嫌がらせしてんの知ってるからな。二度と愛理に近づくんじゃねぇぞ、クソ尻」


「塩撒くよ…」


「睦月、食べ物を粗末にしちゃいけないよ。桃尻くんに撒くなんてもったいないだろう?」


 向こうも私、桃尻エリカのことを愛理を貶める最悪の要注意人物と見なしているのだった――!


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