45.しばらく好きな事をしようと決意
頭がクリアになり、ご飯もおいしくなり、行動力を取り戻した私がまずした事がある。それは就職……ではなく、遊ぶことだ。好きな事を好きなだけしようと思った。しばらく、好きな事だけして失われた時を取り戻そう、と思っていた。
なので、まず母が私を施設に入れようと貯めておいてくれたお金で、パソコンと作曲ソフトと音源ソフトを購入した。久々の音楽活動は戸惑いだらけだったが、メンタル的にはそれはそれは充実する結果になった。それが売れてくれたらなお良かったが、そうはなかなか問屋が卸さない。でも、売れるために作っていたわけではないので、音楽制作が出来た事に私はひたすら喜びを覚えていた。
次に、私は母と方々旅行をした。温泉が主だったが、あちらこちらの観光地に行って、それはそれは楽しい時を過ごした。
Eさん(おいたん)とも旅行に行った。Eさんは当時、給料の全額を家に入れていたので、自由になるお金はほとんど無かったのだけど、その中からちょっとずつ旅行代金を貯めて、栃木県の那須高原や、長崎県や、千葉県の房総に一緒に行った。
その楽しい旅行の数々の記憶は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。『楽しい記憶で悪い記憶をアップデートしていく』というのはこういう事か、と思った。
それから、私は思いつく限りの楽しい事をいっぱいした。
母と表参道におしゃれなパンケーキを食べに行ったり、Eさんと釣りをしたり、集中力が持たなくて読めなかった本を改めて読んだりした。
この頃は、まだ社会が怖いという思いが残っていたので、就職しようという思いはなかなか強くならなかった。頭がクリアになったのがひたすら嬉しくて、失われた時を必死で取り戻すかのように遊んだ。M先生は、それで良いと言っていた。回復期には、好きな事を好きなだけする時期が必要なのだ、とも言っていた。
そんな私を、両親は嬉しそうな顔で見つめてくれていた。私が毎日にこにこと笑顔で過ごしているのを見ているだけで嬉しい、とも言っていた。
そんな生活を二年間くらい続けただろうか。ある日、ふと社会が怖くなくなった。そして私に就労意欲が猛烈に芽生えてきたのだ。それから私の必死の就職活動が始まる事になる。
次回は、その必死の就職活動について少しだけ書きます。専門学校を卒業してから十六年間の空白期間がある私がどう社会復帰の糸口をつかんだのか。無雲、勢いだけで人生突っ走ります!!
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