41.失ったもの⑦スレンダーな体

 学生時代から二十代前半(多剤まではいかない段階)の無雲は、身長百六十八センチで体重四十キロ台という、かなりスリムな体型だった。

 ご存じの方もおられるかとは思うのですが、精神科の薬は副作用に『体重増加』と明確に記載されている薬があったりする。色々な薬を飲まされていた無雲も、ご多分に漏れずこれらの薬を服薬する羽目になった。


 その薬がやってきたのは二十代前半の時だ。その時の主治医はA病院T先生だ。ジ〇レキサは私の元に唐突にやってきて、何も知らずに服薬した私はみるみる体重が八キロも増加した。その時少しだけお付き合いしていた人から「君は詐欺師だ」呼ばわりされ、明らかに体重増加が副作用だと思った私は、すぐにその薬を取り下げてもらった。そうしたら、体重はまたすぐに元に戻った。ちなみに、この時の彼氏さんとはすぐに破局したのでこのエッセイでは触れた事がない。


 その後しばらくスリムな体型を維持していた私だが、K君とお付き合いを始めて一、二年経った頃、また何かしらの薬(けっこう薬が増えていた)が私の体重を増加させ始めた。この頃の主治医はT先生もしくはB病院のS先生だった気がする。


 体重増加を加速させたきっかけは今でも覚えている。


 あれは、K君と某有名ホテルのビュッフェに行った時だった。今までそんなに大食いではなかった私の食欲が止まらなくなった。欲望のままに食べた。苦しくなるほど食べた。そんな事今までしたことが無いのに、ばかばか食べた。そして、お腹がぷっくら膨れた。

 そうしたら、その日からずっと食欲が暴走してしまった。その暴走は留まる事を知らなかった。私は空腹に任せてばかばかとモノを食べ続けた。体重はみるみる増えていった。K君もびっくりのペースで体重は増え続け、あっという間に三十キロ太ってしまった。


 K君、よく私を捨てなかったな。と感心してしまうくらいの激太りをしてしまった私は、K君と破局した後も食欲だけは失せなかった。何が起きても食事だけはばかばかと食べた。

 

 時には、お代わりをねだる私を母が止めた。しかし私は泣きながらご飯をよそって食べ続けた。


 はい。こうなったのは、多剤による脳の破壊が原因です。これはM先生が言っていた事なので確実ですが、「頭が働かなくて訳分からないまま欲望のままに食べた」結果、私はぶくぶくと太りました。


 初めての激太りは、ジ〇レキサという原因がはっきりしていたから止められたのだけども、多剤になってからの激太りは、徐々に破壊された脳によるモノだったので止められなかったのだ。


 その後多剤から抜けた無雲が何故今も太っているのか。それはまた別のエピソードでまとめようと思います。


 このエピソードの最後に、ちょっと笑えるかもしれないエピソードを書いておきます。


 あれは、K君と横浜中華街に行った時の事でした。私は初めての中華街にはしゃいで、美味しそうな大きな肉まんを買いました。そこでK君が一言。


「肉まんが肉まん持ってるwww」


 ブラックジョークです。K君渾身のブラックジョークです。私は未だに根に持ってるくらいこのセリフを忘れたことは無いです(笑)。


 というわけで、今回はライトに書いたつもりの体重増加のエピソードでした。今回で『失ったものシリーズ』は終わりです。暗い話ばかりですいませんでした☆


 次回は! あの人が再登場します! 

 離脱症状と戦っていた時、おいたんはどうしていたかです。おいたんと死にかけていた私の関係性について書きます! おいたん、かっこいいですよ( ´∀`)bグッ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る