33.突然の全身痙攣
Eさんとお付き合いを始めて一カ月もたたない時期だった。私は自宅でいつも通り母と二人でまったりとボーっとしていた。なんてことない。いつも通り。何もない。なんてことないただの日だ。そんな平凡な日に、それはいきなり訪れた。
ビクッ。
ビクッ。
体が痙攣する。意識が霞んでくるような気がする。
ビクッ。
ビクッ。
痙攣は止まらない。意識してビクッとなっているわけではない。意識には関係なく体が痙攣するのだ。母は、すぐに私の異変に気付いた。五分……十分……しばらく様子を見ても痙攣は治まらない。
痙攣が始まってから一時間くらいしただろうか。父が帰宅した。母は、父に「今日はお酒飲まないで。無雲がおかしいの」と言った。父は一瞬怪訝な顔をしたが、私の様子を見てすぐに血相を変えた。
母はB病院に電話をした。Y院長が職員に指示を出したが、信じられない内容だった。内科の病院へ行けと言われたのだ。しかし、どう考えても精神科の薬でおかしくなっている、と両親は判断していた。だから父は電話口で職員を怒鳴りつけて、半ば強引に私をB病院に連れて行った。
私は、いよいよ死んでしまうのか、と思った。痙攣が苦しすぎて、同時に怖くて、涙がとめどなく溢れていたが、自分ではどうする事も出来なかった。
この時、痙攣が内科的なものではなく精神科の薬からではないかと判断した両親はさすがとしか言いようがない。これはもう直観的なものだったのだろう。それでなくても私は普段から副作用で手の震えが止まらなかった。全身が震え出してもおかしくはないだろう。
この頃、私はある液状の頓服を一日に十本まで飲んでいいと言われていた。一本飲んでも充分強い効果がある薬なのだが、不穏が治まらない私に対してY院長は「不穏が治まらなかったら十本まで飲んでいいから」と指示を出していた。
痙攣が起きた日は平凡な一日だったが、不穏が治まらずに日中B病院に電話をしていた。その時に他の医師から出た指示も「その薬は十本まで飲んでいいから」というものだった。だから私はその日その薬を十本近く飲んだ、という事を覚えている。
そんな、強い頓服をいっぱい飲んだこともあって、母は私の痙攣は薬から来ていると思ったのだろう。とっさの時の母の判断力は素晴らしいものがある、と思う。
結論を先に書いておくと、この痙攣は私を救うことになる。この痙攣を止めて、私を救ってくれた医師こそ現在の主治医M先生だ。
次回はM先生とのエピソードを書こうと思います。それは同時に、離脱症状との闘いの始まりでもありました。
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