15.九日間の入院生活
初診から数日後、私はB病院に入院した。病棟は解放病棟で、両親の計らいで個室に入る事になった。
個室は風呂トイレ完備で、ベッドと箪笥があった。けっこう広いし、ここで過ごすのは快適そうだ、と思った。ちなみに、窓に鉄格子は無かったが、その代わりちょっとした隙間程度にしか開かないようになっていた。
専門病院に入院するのは初めてだったから、どんな精神療法やレクがあるのかちょっとした期待感はあった。しかし、そこで待っていたのは延々と続く暇な時間だった。
入院してから、何もする事が無かった。レクも特に無いし、集中的な治療が行われたわけでもない。診察は週に一回S先生が病棟に来る。それだけ。薬を飲んでただボーっとしているだけ。この時は”友達を作る”という概念すら無かった。ただ、部屋に籠って病棟の間にあるバラ園を眺めていた。
暇。
とにかく暇。
母は頻繁に面会に来てくれたが、他の時間はほんっとーに暇。書くネタが無いくらい暇!!! 唯一の楽しみはそれなりに美味しい病院食の時間だった。
というわけで、一週間経過くらいで私はここから出たくなった。なので、週に一度しかない診察でS先生に「退院したい」と言ってみた。すると、あっさりと許可が下りた。
「なんなんだ」
と私は思った。特に何もされないし、しないしで、何のための入院だったんだ。これには両親もびっくりしたらしい。私の病状は特に良くもなっていなかったし、まさか九日間で退院してくるとは予想だにしていなかったからだ。
しかし、私達はこの時知らなかっただけなのだ。このB病院は、簡単に入退院を繰り返せる恐ろしい性質を持っていたのだ。私はこの後二桁回数の入退院を繰り返すという入退院地獄に陥ってしまう。
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