B病院編(単科精神科病院)

第二の主治医、S先生

14.入院、速攻で決まる

 単科精神科病院であるB病院。家から自転車で行ける範囲にあり、私はこの病院を昔から知っていた。知っていたというか、あんまりよくない評判を聞いていただけなのだが。だから、私は最初B病院への転院と言われた時一歩引いた気持ちになった。「そこはやだ」とT先生に訴えたが、T先生曰く「今時の精神科は鉄格子も無いし綺麗だし何より専門病院だからレクとかもある」だそうで。私は従うしかないので、不安なままB病院に転院した。


 B病院はひっそりとした小高い丘の上にあった。入口に『外来』とかも書いていないのでとりあえず迷子になった。看板(令和三年では出来たが)が無いのは単科精神科病院だからなのか? とか疑問だったが、親切そうなおじさんに入口を聞いて何とか外来が分かった。


 中に入ると、確かに広くてキレイだった。診察室がカーテンでしか仕切られていないA病院やでっかい病院とは違い、ちゃんとしたドアもあった。


 私の担当医になったのは、診療部長であるS先生だった。穏やかな口調で話を進めるS先生に、ちょっとした安堵を覚えた。


 私はこの時入院前提での転院だったのだが、でっかい病院での経験から「どうせまた〇週間後に来てとかなるんだろ」と思っていた。だが、B病院では違っていた。


「じゃぁ、いつから入院しますか?」


 え。もう? すぐ出来るの? というわけで、私は数日後に入院することになった(病院の事情でちょっと伸びたが、何とか入院できた)。


 この時両親は私の入院は長期間になると予想していた。治って出てくるまでに何年かかるのか、費用はいくら掛かるのか、もしも何年も出て来なかったら家を手放さなきゃ……そんな事まで考えていたらしい。しかし、この時は両親も私も知らなかった。B病院における”入院”の概念はそういったものではないのだ。


 次回はB病院での初入院の事を書きたいと思います。

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