8.無雲、T先生に陽性転移する

【陽性転移】

精神分析(フロイトによる)の用語。転移とは、患者が持つある人に向けられる無意識の感情を、治療者に投影してしまう現象。転移には陽性と陰性があるが、陽性には「好意」や「愛情」が含まれる。陰性はその逆で「憎しみ」や「敵意」を含む。


 さて、いきなり精神分析の話から始まった今回。タイトルから何となく流れを読み取った方もいるかもしれませんが、心理学を勉強していない限り特にこの用語に触れることは無いと思いますので、解説から始めました。


 タイトル『無雲、T先生に陽性転移する」』で終了してしまいそうな今回ですが、そうです、無雲はT先生に恋してしまったのです。


 精神科医っていうのは、患者がどんな話をしても優しく(これは医者によって様々ですが)聞いてくれて、何となく心の頼りにしてしまったりしてしまうものである。


 心が弱っている時に話を聞いてくれる存在というのは神々しく見えてしまうもので、そこで患者は時として治療者に恋してしまうのだ。


 私の場合もそうだった。T先生はいつも優しく話を聞いてくれる。それだけで心の支えになっていた。しかし今なら分かる。「いや、それが仕事だし。だから通院精神療法でけっこうな点数(代金)取ってるよね!」と。


 しかし当時の私にそんな知識無いんであるし、そもそもボーっとしていてただ死にたいだけの生き物だったもので、心の矛先がおかしな方向に行ってしまったわけである。


 これはもう私の黒歴史です。笑い飛ばすしかありません。あはは。(笑)


 でもね、けっこういるんです、治療者に恋愛感情を抱いてしまう人。


 私の病気仲間も、複数名が主治医やカウンセラーにガチめに恋してしまっていました。やはり、弱った心を受け止めてくれる人は神様に見えてしまうのですね。


 その人たちにも、傍に居て寄り添って包み込んでくれる相手が現れていることを、切に願わずには居られません。


 

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