6.修正型電気けいれん療法(m-ECT)
T医師の治療は続いていた。投薬されている薬も複数種類になっていた。その日の診察で私が発したのはこの一言だけだった。
「死にたい」
診察したT医師は、私に『修正型電気けいれん療法(m-ECT)』を提案してきた。修正型電気けいれん療法とは、全身麻酔を掛けた状態で頭部(脳)に電流を流すというハードなものだった。私はとにかく救われたい一心でこの治療法を受け入れて入院をする事にした。
修正型電気けいれん療法は全身麻酔で行うから、楽なものだと思っていた。しかしそれは違っていた。治療後に訪れる激しい頭痛に高熱。精神状態が良くなっていく実感も無く、とにかく頭が痛いのと発熱が苦しくて仕方なかった。その治療は計十一回行われ、入院期間は大体一カ月くらいだった。最終的には血液検査の結果が良くなくてそこで終了になった。
そして私は家に帰るのだが、びっくりした事に帰りの道順が分からないのだ。これが修正型電気けいれん療法による記憶障害であったのだ。帰宅してからネットで友人とやり取りする事もあったが、誰だか分からない人がいたり、自分のやり取りを覚えていなかったりもした。そして希死念慮やうつ状態は別段良くなっている感じもしなかった。記憶にぼこぼこ穴が開いているのは、徐々に分かっていった。今は大分記憶も回復しているが、それでもじわじわと思い出せない事があって気持ちが悪い。
余談だが、この時入院したA病院は、恐ろしく病院食が不味かった。食欲がほぼ無い時期に加えてあまりの不味さに憂鬱な気分はさらに憂鬱になった。これの十年後くらいに父が倒れてこの病院に入院したのだが、やはり病院食が不味すぎて父も憂鬱になっていた。何故だ。何故一向に病院食が改善されないのだ。私の幼少期に姉が入院した時から不味いらしいじゃないか。ちょっとは改善せぇよ。(笑)
あ、深刻なお話の中にもたまには笑いも必要かと思いまして。ははは。はい。この通り令和三年の無雲は元気にしておりますので、安心してこの先もっと重苦しくなる本作をお読みください。本当に、いつもお読み下さりありがとうございます♪
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