A病院編(大学病院)

第一の主治医、T先生

3.二十歳のある日、突然精神科に連行された

 当時の私は音楽系の専門学校の二年生で、卒業制作の真っただ中にあった。クラスの紅一点であった私は持ち前の気の強さをもってしてクラスのリーダーとして卒業制作に携わっていたが、母校の卒業制作は別名と呼ばれるほど過酷で、毎年うつ病患者を輩出してしまうほどのものだった。


 当時私達のクラスの卒業制作は私の作戦ミスその他諸々で全く軌道に乗っておらず、私に対しての一部のクラスメイトの不満は限界を迎えていた。それでクラスメイトは度々私を責めたてた。しかし私はこの当時自分のメンタルが不調をきたしているなどとは全く思っていなかった。だからの訪れは私をただただ驚かせただけだった。


「無雲、起きなさい。病院に行くから」


 その日の朝七時、母親が部屋に私を起こしに来た。私は前日クラスメイトから糾弾を受けて、かなり落ち込んでいて学校を休んでしまおうと考えていたのでゆっくりと寝ていたのだ。


「は? 病院って何?」


 私としては何の病院に行くのか想像も付かないし、どっか悪いの私? くらいの勢いである。


「精神科に」


 えぇっ。精神科? 何で??? とは思ったが、私はこの時こう思ったのだ。「今の苦しい状況を助けてくれるなら、誰でもいいし、何でもいいや」と。


 まさかこの選択が自分の人生を大幅に変える事になろうとは思わなかった。現主治医M先生は後にこう言った。「精神科っていうのは、最初にトントンと扉を叩いて中に居た医者によって人生が変わってしまう。かわいそうだよね」と。

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