第10話 5日目の出会い
今日はフェンにまたがっての 領地南部の視察を日の出より始めた。
西から東へ 東から西へのローラー作戦
今夕には館につく予定なので、ドラ君は フェンの為の新鮮な肉を手に入れる為、領地の北の森へと飛んでいった。
さすがにドラゴンの体で血抜きと皮はぎは無理なので マジックバックを渡しておいた。
「いやいや わしは別に皮をはがずとも新鮮ならばそれでいいぞ」とフェン
「でも運ぶ間に鮮度が落ちるのを防ぐために マジックバックはあったほうがいいよ。僕も獲物を運ぶために何往復もする手間が省けるし」と ドラ君
本日何度目かのリンド国との国境線に到達。
リンド国側に何人かの人がいた。私達に向かって手を振ったり叫んだリしながら
結界沿いに走ってくる。
結界の中からその一人一人を鑑定すると「移民希望」「孤児」などの表示あり。
グレーはいたが、ブラックではないので、「フツーの人」かな?
今現在、敵意や害意を示す者はいなかった。
そこで結界の外、リンド側にはいって問いかけてみた。
「何か御用ですか?」と。
「お姫様 リンド国の王女の娘ごであらせられるリン様!」
「このたび 修道院を設立されると聞きました」
「御領地からデッドの乱暴者たちを一層されたとのこと おめでとうございます」
「どうか私達を 修道院の一員にお加えください!」
「お願いします!」
皆口々に叫びながら ひざまずき哀願してくる。
「その話をどこで聞きました?」
「3日前から リンド国はその話でもちきりです。」
「4日前の夜ランドの連中がリンド国に侵入してきて 警備隊につかまったのです」
「その時に聞きました。姫様が修道院を設立し 結界をはってデッドの者達の侵入を阻んだと」
「俺たち デッドの連中の略奪にずっと悩まされてきました」
「今ではやつら 首都にまで手を伸ばしやがって」
「でも 姫様の結界のおかげで もう デッドの奴らは逃げられねぇ。
リンド国内の盗賊・盗人どもはことごとくつかまえてくれると警備隊の皆さまは 張り切っておられます」
「姫様 ぼくたちを修道院で雇ってください!」
「姫様 私も結界魔法がつかえるようになりたい。一生懸命働いて 一所懸命に勉強しますから どうか魔法を教えてください」
「父さん母さんのように 悪い奴らに襲われたり殺されるのは嫌だ。身を守る力を身に着けたい!」
「だから 修道院で勉強をさせて。お願いします!」
「そのために 僕たち孤児院を抜け出してきたのです」
うーん困った。受け入れるのは良いのだけど、子供の行方不明事件にはしたくない。
「皆さんの気持ちはわかりました。」皆の目を見ながら話しかける。
皆も 一斉に私に注目する。
「ところで 皆さんは いつからここにいるのですか? なぜここに集まったのですか? 」
「噂を聞いてすぐに村を出ました」
「あとからもっと人が来ると思います」
「村からまっすぐ東に歩いてきました!」
「僕たち 同じ村から来ました」
そうか だから固まってここにいたのね。
そしてこの村よりも遠くの村や町からも 人が集まってくる可能性があるということか。
「最後に食事をしたのはいつですか? 今持っている水と食料は?」
どうやら、3日前の早朝に朝食を済ませて村を出て、めいめい5日分程度の食料は持ってここまで来たらしい。だからおのおのまだ2日分の水と食糧はあるとのこと。
子供たちがそれだけの荷物をもってよくも歩けたものだと思い尋ねてみると
最初に村を出ると言い出したのが 孤児たち。
孤児たちの世話をしていた老婆は歩くのが無理だからと村に残り、
代わりに村のその日暮らしの住民達が、孤児とともに村を出ることに決めたらしい。
少しでも自分の家や農地を持つ者は、わざわざ村を出る気はなく、首都のスラムから流れてきた貧民や孤児、そして村の中でも盗賊に襲われ、家を焼かれたり財産を奪われ無宿ものになってしまった人達が 脱出を図る気になったらしい。
だから 同行の子供たちの水と食料の一部は大人たちが運んできたそうだ。
それにしてもこの3日間雨が降らなくてよかった。テントも何もない野宿をしていたというのだから。
「わかりました。 皆さんを我が領地に受け入れるにあたって一つ条件があります。
それはリンド国からの証明証を持つことです」
皆の顔に失望の色が浮かぶ。
「しかし 勇気をもってここまで来た皆さんを 十分な水も食料も持たずに追い返すほど、私は無情ではありません。」
互いの顔を盗み見て、安心していいのかどうか確かめあう人々。
「今から 私が王都に行き、確認してきます。
明日の夜には ここに戻ってきますから それまでここで待っていてください。
その間夜露をしのげる仮小屋を今から作ります。
明後日の朝 我が修道院の領地に入ることができるのは リンド国での身分が確認された者だけです。
今、ここにいる方々は、名前と出身地を私に言ってください。それをリンド国で確認してきます。身分証を持っている人は今見せてください。
しかしこれは 今回ここに居る方だけの特例措置であって 今より
そのことは 今後ここに来た人達にも あなた方からきちんと伝えておいてください。
あなた方がほかの人とトラブれば、全員の入領を認めることができませんから、注意してください。」
もう一度一人一人の目を見て確認する。
というわけで 本日の予定を急遽変更し、
ドラちゃんを念話で呼び寄せる一方、リンド国の辺境に仮小屋を建てて、難民希望者さん達の寝床を用意した。
そして フェンにはドラちゃんが運んできた獲物の1匹を渡して、結界内からリンド国との国境線を見張るようにお願いし、私はドラちゃんの背にまたがってリンド国首都へと飛び立った。
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