第9話 海辺にて

海辺の日差しが明るい。

 今日はいいお天気だ。


フェンリルのフェンは早く背中に乗れと言った。


「ありがとう。でも お昼ご飯を先に食べませんか?」

「そういえば 人間は決まった時間に飯を食うのだったな。

 わしは時間にはこだわらぬが。お前が食べたいのならその間は待つ」


「それでは お言葉に甘えまして。

 よければ おにぎりをどうぞ。フェンさんも ドラ君も」

「フェンでいい 」


「はい。こちらが鮭。これは牛肉のしぐれ煮 こっちは梅干しが中に入っています」

「梅干しは酸っぱいよー 初めて食べた時、びっくりしちゃった」とドラ君

「ふむ ではわしは 牛肉から」


「あっ フェンは 塩分とか調味料とかだいじょうぶ?」

「ドラゴン同様 ほどほどならいけるぞ」

「よかったー。」


「それではいただきます」リンは両掌をあわせる

  ドラも翼を少し上下させて「いただきます」


「それは 何かの儀式か?」とフェンが問う。

「僕は リンにあわせているだけ。そのほうが気持ちよいから」


「母方の教えで、食べられることに感謝して、天の恵み 地の恵み そして作物を育てて収穫して運んで加工して調理してここまで用意して下さったあらゆる人に感謝して 手をあわせて その感謝を示すのだと。これは習慣でもあり その都度感謝の心を呼び覚ます行為でもあります」とはリンのこたえ。


「その習慣、気に入った。料理を食う時だけは わしもつきあおう。

 さすがに狩りの獲物に頂きますを言っては 嫌味にしかならぬと思うがな」とフェン

ドラ君も首をかしげて「そうだねぇー。狩りと料理は別だよね」とうなづいた。


 私はおにぎりとお茶の昼食に満足した。

ドラ君やフェンは 私へのお付き合いでおにぎりを1個づつ食べただけ。

 フェンは 「悪くはなかった」がしぐれ煮の感想

 ドラちゃんは「今日は梅干しの気分」だったそうだ。


とりあえず東から西へ 海岸沿いに突っ走り、人も建造物もないことを確認した。

 本当になにもない領土だ。


それから 今度は少しだけ内陸よりを 西から東へ折り返して突っ走った。


そうやって周囲の状況を確認しながら 東から西へ、西から東へと折り返しつつ確認すること2往復。

 やがて日が暮れてきた。


見落としのないように 今日はここまでにしましょう。

 かくして 修道院設立宣言後4日目が過ぎようとしている。


☆ ☆ ☆

フェンは 夕日に向かって海の中を泳いだ。

 海の水が目にしみた。


浜辺に上がると、濡れたからだに砂がくっついてとれない。 砂まみれだ。


リンの水魔法で体を洗った。

 リンは程よい湯を出してくれた。温風で体全体を乾かした後、

 くしとブラシを使って砂をきれいに落としてくれた。


ドラゴンが海中から浜辺めがけてはねあげた魚を わし(フェン)とリンの二人でキャッチした。

 丸のみしようとしたら、魚の骨は、硬くて小さいからと、

 リンが、魚を塩焼きにしてから 身をほぐして皿にいれてくれた。


気に入ったぞ、この娘。 力を貸してやろうと内心思った。





  

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