第19話 発見

 


 全員のステータスを確認してみた。


 俺はレベルアップか。やっぱり自分で倒さなくても経験値は入ってくるのな。でもそれだとスキルが育たないんだよなー。


 クー太とランはレベルと【気配察知】が上がっているな。ハクも【気配察知】のスキルを新しく覚えている。

 まあ三匹に索敵任せっきりだから妥当だな。


 そして何故かクレナイとハクは【指導】のスキルを…。

 アキがそれほどまでに手が掛かるってことなのかね。

 少し笑いそうになったわ。クレナイ、ハク、ご苦労様。

 まあ大きな変化はなかったな。アキ以外。アキはすぐにでもレベル上限に達しそうだな。本当育成が楽だがスキルは全然伸びないな…。


「よし。アキはクレナイと組むことは変わらないが敵が出たら積極的に戦ってもいいぞ。ハクやクー太くらい強い敵が出なければ、クレナイもいるし大丈夫だろう」


『やったのです!認めてもらえたのです!』


「じゃあみんな後は頼むな。クー太は俺と齋藤さんが襲われた方角を歩き回りながら、人の匂いを探してもらう」


『わかったー。任せてー』


「じゃあ行ってくる。後はよろしく」


『いってらっしゃーい』


『お気をつけて』


『はい。気をつけて行ってきてください』


『いってらっしゃいなのです!』


 クー太を肩に乗せ、聞いた方角へ歩いていく。

 なぜか見捨てられなくて助けることになってしまったが、正直早くレベル上げしてクレナイとハクの進化先を拝みたい。なので少し急ぎ足だ。

 急ぎ足だけども歩くだけではつまらないので、クー太と他愛もない話をしたり、撫でたり、頬に当たる毛の感触を楽しみながら歩いた。


 感覚的には15分とか歩いたか?そんな時クー太が耳をピクピク、鼻をピクピク。


『たぶんいたー』


「お、ほんとか?」


『うん。お猿さんー』


「猿か」


 人間の匂いを見つけたのかと思った。


『あ、でも人間もいる、のかなー?血の匂いがするよー』


「急いで案内頼む」


 それを早く言ってくれ。

 クー太は肩から降り普通サイズになる。


『こっちー』


 クー太と小走りし、移動する。

 それにしても出血か。猿って肉食じゃない、よね…?

 殺されたり、万一食べられていたりしたら勘弁なんだが…。精神耐性のレベルが急上昇する案件だ。そうならないことを祈る。


 五分ほど走ると、デカい猿が見えてきた。成人男性と変わらない大きさのやつが四匹いる。その近くには人が倒れていた。


「クー太。俺らであいつら倒せるか?」


『ヨユーだよー』


「じゃあこのまま突っ込もう」


 クー太が大丈夫というなら大丈夫だろう。

 猿達がこちらに気づいたが何もさせるつもりはない。森狼を吹き飛ばした時のように体当たりをし吹き飛ばす。

 すぐさま吹き飛ばしたやつの近くにいた猿の顔を殴りつける。よろけたのでそのまままた顔面に蹴りを放つ。その猿は起き上がってこないので死んだか気絶したかだろう。吹き飛ばしたやつが起き上がっていたのでそちらに向かう。

 チラッとクー太の方を見たらクー太はすでに1匹を倒し、もう一匹の相手をしている。

 なので俺は安心して吹き飛ばしたやつの元に向かい顎を殴りつける。


「ギャッ」


 あ。顎を殴ったつもりが鼻っ柱を殴ってしまった。まあいいか。そのまま拳を振り上げ顎へ。

 沈黙したのでクー太をみるとクー太も終わらせたようで魔石をさがしているみたいだ。

 俺は倒れている人に近づく。


「ちっ」


 はぁ。精神耐性上がるかね。明らかに首が曲がり、事切れていた。五十歳くらいの男性だろう。あの大猿たちに殴られたり蹴られたりしたようだ。

 気分が悪いな。


「クー太、悪いんだけど俺が倒した方、死んでなかったらトドメ刺して魔石取ってくれるか?すまんな」


 齋藤さんに十徳ナイフでも持ってないか聞けばよかった。大猿に殺された人は登山服のような格好だが、手ぶらだ。ポケットを漁る気にはならない。

 まあ齋藤さんの友人と知り合いじゃなさそうな点が気休めか。もし友人だったらなんて言えばいいか…。安請け合いしすぎたな…。もう少し考えればよかった。考えても見捨てられなかっただろうが。


『ご主人さまー。持ってきたよー。あとお猿さんはしんでたー』


「そうか。ありがとうな』


 口元に着いた血を袖で拭ってやり頭を撫でる。

 さてと、魔物はそのうち朽ち果て消えるらしいからいいとして、この人だな。流石に担いで何処かに、ってのは無理だし。墓穴掘るのもな。街がこことは違って正常に機能していたらそれはまずいだろう。


 ここだと血の匂いで他の魔物が寄ってくるかもしれないので少し離れたとこまで移動させてやり、上着を脱がして、それを顔から上半身にかけ被せておく。何もしないよりはマシだろう。

 街に戻ったら警察にでも連絡しよう。


「クー太。ここから離れよう。考えが甘すぎたな。齋藤さんの友人たちを助けるならもう少し急ごう」


『わかったー。ならボクも走っていくねー?』


「ああ。悪いな」


『大丈夫だよー?』


 もう一度頭を撫で、移動する。

 駆け足程度だがこんな森の中なのにかなりの速度がでていると思う。

 走っていると大猿二匹を見つけたのですぐさま突っ込んでいき、俺とクー太で一匹ずつすぐさましとめクー太が魔石をとる。


「あ、クー太。そんな大きくないと言っても邪魔になるし、今のもさっきのも食べちゃっていいぞ」


『ありがとー!』


 ポリポリとスナック菓子を食べるように食べていく。

 硬そうなのにな。俺も後で一つ食べてみるか…?もちろん洗ってからだが。


「クー太は魔石が好きなのか?アキとかは美味しくないって言ってたが」


『んー?そんなに美味しくないよー?ただこのポリポリするのすきー』


 おやつ感覚か。

 さて、先を急ぐかね。


「まだ人の匂いはしないだろ?」


『するけど、ここら辺にいた匂いー?さっきの人のとかかなー?』


「わかった。見つけたら匂いのする方に移動してくれ」


『わかったー』


 そしてそんな時間をおかずまた大猿が現れる。こっちの方は猿の縄張りなのか?少し傾斜になってきている?から山の麓辺りなのだろうか。

 ここが○尾山の麓だったら…俺がいたところって本来なら林とか草むら程度の場所で、山とは全然関係のない場所だったんじゃなかろうか。

 現れた大猿は一匹だったので俺が突っ込み倒れたところにクー太が襲いかかりあっという間に魔石を回収。

 クー太は口をモゴモゴ動かしながら移動する。


『ご主人さまー。人いるー』


 どれくらい移動しただろうか。方角を変えようかと思っていたらクー太が何かを見つけたようだ。

 報告してきてすぐさま移動する方向を変える。

 数分ほど駆けるとクー太が突然止まった。


「どうした?」


『この先に人が二人いるよー。ボクはどうするー?敵もいないみたいー』


「あぁ。そういうことか。流石にポケットに入るくらい小さくはならないよな?あ!鞄とか帽子に変化できるか⁉︎」


『ぼうし?はわからないからむりー。鞄ならご主人さまのやつと同じのなら大丈夫ー』


「ならそれで頼む」


『わかったー』


 パッと光るとそこには置いてきた鞄があった。

 おおー。すげぇ。変化ってめっちゃすごくないか?

 無機物にもなれるのか。顔はどこだろう?

 少し弄っていたらクー太に抗議された。


『ご主人さまーくすぐったいよー』


「あ、ああ。すまない。顔はどこだろうかと思ってな」


『なんていうか全身が身体?って感じー。周りは見えるけど自分でもどこが顔かとかはわからないー』


「そうなのか」


 不思議だ。まあそういうものなのだろう。

 クー太が変化した鞄…クー太鞄を持って歩いていく。


「この先か?そういえば俺はクー太と念話みたいなもので会話できてるが他の人には声は聞こえるのか?」


『わからないー。多分聞こえないと思うよー』


「そうか。なら目的の人物で、齋藤さんのところへ戻る時は案内頼んでいいか?」


『大丈夫ー!』


「頼むな」


 クー太に確認しながら歩いていると2人の人間が座り込んでいるのが見えた。

 休憩しているのだろうか。俺が立てる音を聞きつけた2人がバッとこちらに顔を向ける。

 俺は敵意はありませんよアピールのつもりで両手をあげる。

 齋藤さんの言っていた特徴の二人だ。確認しよう。


「敵意はない。森田ミミさんと高山ナオキさんか?」

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