第13話 マナーモード?

 



 クレナイとアキのやり取りをちょっと心配になりながら見ていたらクー太たちが周りを警戒し始めた。


『ご主人さまー』


『ご主人様!』


『ご主人様。灰色の森狼が複数近づいてきます』


「何匹だ⁉︎」


『たぶん四匹かなー?』


『そうですね』


「逃げたほうがいいか?」


『大丈夫だよー。今ならボク1人でも狼さんくらい倒せるー』


『多分大丈夫よ!』


『私は正面からだと難しいかと…』


『灰色くらいに遅れはとりません』


『私は囮りですか⁉︎』


 クー太は大丈夫と言って肩から飛び降り変化の光に包まれ、普通サイズの二回り大きく、初めて遭遇した灰色の森狼と同じくらいになった。

 アキのネガティブ勘違い発言は放置だ。


「ならクー太とハクはそれぞれ一匹ずつ。ランとクレナイは二匹で一匹を。アキはラン達に付いて頑張って攻撃してみてくれ。俺は残りの一匹をなんとかする」


『わかりました!食べられないようにするのです!』


『ご主人様大丈夫なの⁉︎』


「多分なんとかなる」


『ランー。ご主人さまならだいじょうぶだよー。多分1番強いよー?』


 そうなのか?クレナイとハクも同意するように頷いている。アキはアワアワしてるが。

 ガサガサと音が聞こえてきた。すぐそこまで森狼がきてるのだろう。クー太たちが早めに察知してくれて助かった。


「よし、さっき言った通りの作戦で!」


 灰色の狼は姿が見えるとこまで来ると4匹同時にこちらに向かって吠える。


「ガァッ!」


 四匹で半包囲するよう間を空けて近づいてきたおかげで各個撃破しやすい。勝てればだが。

 クー太が飛び出したのを見て俺も飛び出して森狼へ向かう。


「⁉︎」


 確かにレベルアップして身体が軽くなった感じはしていたが、驚くほどスピードがでた。

 想像外と言うほど、あっという間に森狼との距離が縮まったので攻撃するタイミングが掴めずそのままの勢いで体当たりする。


「ギャンッ」


 蹈鞴を踏み止まり、吹き飛んだ森狼を見ると倒れて起き上がろうともしない。

 まじか。いや、驚く前に他の援護しなければ。

 そう思い他の戦闘を見るとクー太とハクは首に噛み付きもう終わりそうだった。

 ランとクレナイとアキの三匹はクレナイが身体に巻きつき、ランが首に、アキは胴体に噛みつき離れまた近づいて噛みつきとヒットアンドアウェイといえば聞こえはいいが、ただ弱腰なだけに見える。実際そうだろう。

 まあ戦えるってことで良しとしよう。


 援護する必要もなさそうなので俺が吹き飛ばした狼へ向かう。


「うっ…」


 当たりどころがよかったのか悪かったのか首が変に曲がっている。俺の攻撃力というより当たりどころの問題だったようだ。にしてもあれだけ盛大に体当たりをかましても俺の身体は全然痛くない。凄いな。


『ご主人さまーおわりー』


『終わりました』


『こっちも倒したわよー』


『はい、問題ありませんでした』


『食べられずに済みましたです!褒めてくれるです?』


「お疲れ様。怪我もなさそうで良かったよ。アキも頑張ってたな」


 順番に全員を撫で、アキのことは念入りに撫でてやる。


『ご主人が優しいのです…。非常食から名前にジョブチェンジです!』


「だから食べないっての。心配するな」


『はいです!』


 アキを撫でていたらクー太が光りチビクー太に戻った。チビクー太はちょこちょこ近づき肩に飛び乗ってきた。


「クー太肩に乗るのはいいが魔石を取ってきてくれないか?」


『もうとってきたよー。そこー』


 クー太が先程までいたとこにはちゃんと魔石があった。


「ありがとう。俺が倒したやつもお願いしていいか?」


『それなら私がとってくるわ。私が優先的に貰ってるからそれくらいするわ』


「ランありがとう」


 それにしても…森狼を倒したのに誰一人レベルが上がってない。俺とハクは種族の問題で他より上がりにくそうだから仕方ないとしても、進化してレベル一になったクー太やアキはレベルが上がらないのはおかしいだろう。クレナイやランもレベル上がってないと変じゃないか…?


 …確認してみるか。

 アキのステータス表示!



 ————————————————————


 個体名【アキ】

 種族【魔栗鼠】

 性別【メス】

 状態【 】

 Lv【7】6UP

 ・基礎スキル:【噛み付きLv2】UP【回避Lv2】new


 ・種族スキル:—


 ・特殊スキル:—


 ・称号:—


 ————————————————————



 おい。レベル1から7って。上がりすぎじゃない?そうでもない?栗鼠が狼を殺せば変じゃないか…。

 まあレベル6あがったたとこで弱そうだが…。

 じゃなくてアナウンス!なんでアナウンスなかったんだ。


 ……もしかしてアレか?

 レベルアップの脳内アナウンス中止!って願ったから!?

 いやいや。アナウンスさん。アナウンスを中止します、とかなんとかお返事くれませんかね。いや、ありがたいんですけどリスポンス無しじゃわかりません。


 いや、まじか。念じるだけでアナウンス中止できるとか超謎システム。これだけ時間が経てば夢や幻覚を疑う気もない。紛れもなく現実だろうし、本当謎だ。

 はぁ。アナウンスないなら小まめにステータス見ればいいか。忘れそうだが。


 んじゃ順にみていこうかね。

 あ、その前に。


「ラン。魔石食べるのは待ってくれ。ステータス確認する」


『え。私とクレナイが倒したやつの食べちゃった…。ごめんなさい』


「ああ。一つくらいいいさ。他のはまだ?」


『うん。今ご主人様が倒したやつの取ってきたところ』


 クー太が魔石を置いていたとこを見ると3つ置いてあった。


「ハクもありがとう。ちょっと待ってくれな」


『はい。気にされなくて大丈夫ですよ』


 進化できるかもしれないし、ランから見ていくか。



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 個体名【ラン】

 種族【魔狸(亜成体)】

 性別【メス】

 状態【進化可能】

 Lv【★10】UP

 ・基礎スキル:【噛み付きLv4】【体当たりLv2】

 【気配察知Lv2】UP


 ・種族スキル:—


 ・特殊スキル:—


 ・称号:—


 ———————————————————



 気配察知のレベルが上がったな。それとやっぱ進化可能になってたか。先に進化させてやろうかね。

「ランすまん。アナウンスがなくて気づかなかったがもう進化できるようになってる。進化先は妖狸でいいんだよな?」


『ほんと!?うん!』


「了解」


 ランの進化を選択。



 ————————————————————


 ○ランの進化先を選んでください。


 ・妖狸

 ・大狸


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 選択内容はクー太と同じだな。妖狸を選択。

 クー太の時と同じようにランが光に包まれ尻尾が二本に増えた。


《進化により個体名・ランが称号【進化・使役魔獣】を獲得。称号:【進化・使役魔獣】を獲得したことによりスキル:【制限解除】を獲得》


 やっぱりランも称号が手に入ったか。何匹までって制限はなにもないようだ。


 身体を確かめるように振り向いたり尻尾を振ったりしている。にしてもこのアナウンスはあるのね。戦闘後とかレベルアップだけで称号やテイムのアナウンスはしてくれるのかね?

 その方がありがたいが。


『ランいっしょー』


『そうね。追いついたわ。じゃあ早速!』


 パッと光に包まれチビランが…ん?クー太より小さくないか?


『小さくなってる⁇なってるわよね?じゃあ左肩お邪魔しまーす!』


「いや、それはいいんだが、元の大きさはクー太とほぼ一緒なのに、今はあきらかにクー太より小さくないか?」


『んーとね、イメージの問題だと思うわ。私はクー太より小さくなるようにイメージしたけど、クー太はそのサイズまでしか自分の小さい姿をイメージできなかったんじゃないかしら?』


 ふむ。そういうものなのか。本能でやり方がわかるんだろう。ランは早速肩に飛びついてきて位置を調整している。


『ボクもランと同じくらいになるー』


 パッと俺の肩で…眩しいわ!先程より小さくなったクー太が現れた。


「クー太眩しいから変化する時は降りてからしてくれ」


『ごめんなさーい』


「ランもクー太も肩に乗っててもいいけど邪魔にならない程度にしてくれな」


『もちろん』


『がんばるー』


 次はクレナイかな。



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 個体名【クレナイ】

 種族【大赤蛇】

 性別【オス】

 状態:【 】

 Lv【9】2UP

 ・基礎スキル:【噛み付きLv4】UP【隠密Lv1】new


 ・種族スキル:【脱皮】


 ・特殊スキル:—


 ・称号:—


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 クレナイは二つ上昇と噛みつきが一つ上昇。それと【隠密】か。

 隠密はアキをテイムした時にでも覚えていたのだろう。

 体色的に隠密を覚えても隠密に向かなそうだが。

 詳細を表示。



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【隠密】

 ・気配を消すことが上手くなり、認識されにくくなる。


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