第11話 川へ
とりあえず水が綺麗な川があるとのことで移動する。
正直川の水って良くないと言うが、元々丈夫ってのもあるし、ステータスがあって、そこに異常状態になったら表示されるだろうからな。
なんとかなるだろう精神である。
歩き始め大赤蛇と二回ほど遭遇した。先頭にいたハクが気付き襲いかかり一撃。その後ランが魔石を取り出し食べ移動。これが二回。
レベル差と種族差かね。大赤蛇がすっかり雑魚扱いである。あ、クレナイはそんなことないよ?クレナイはレベル上がって身体能力がかなり上がってるしな。
そんなわけで二回大赤蛇をたおしたがレベルも上がらず、テイムもしなかった。
もう一匹くらい大赤蛇を仲間にしようと思ったが、一気に増やしても育成できないし、脳内アナウンスがうるさいことになるし、と色々考えた結果テイムするのはテイムしてない種族をとりあえず各1匹にすることにした。
まあ種族や個体差など関係なくどんな魔物もテイムできるのかはわからないが。テイムに失敗したらどんな状況だとできないかとか推測できるんだがな。
なんかしらの制限が無ければ魔王軍できちゃうよ?作らないけど。
『大赤蛇が来ます』
「ハクありがとうな。おれも気配察知とか索敵系スキル覚えられないかなー。とりあえずこの蛇は俺1人でやらせてくれ」
『わかりました』
蛇はクー太と俺だけのときに戦闘した以外はみんなに任せきりだったからな。どれくらい戦えるか試そう。
赤い蛇が姿を現しやっぱり逃げようとする。レベル差とか強さの差がなんとなくわかるのだろう。
逃げられては訓練にならないので追いかける。
やっぱ身体軽いんだよなー。しかもこんだけ歩き回ったりいきなり走り出したりしているのに息切れも特にない。意識するとレベルアップやテイムの能力上乗せとかで身体能力が上がってるのはなんとなくわかる。
クー太の体当たりには突き飛ばされたが…。
難なく追いつき顔の部分を掴み木の幹に向かって投げつける。それだけでかなり弱ったようで動きが鈍い。
このまま倒せるだろうが踏み潰したりするのは嫌だしな…。刃物もないし。
「大赤蛇なら問題なく倒せるのがわかったし、とどめはランに任せていいか?」
『はーい』
ランが瀕死の蛇に駆け寄り首にガブっと。慣れたものだ。
大赤蛇ならいいが、森狼や魔狸とはまだ1人で戦いたくないな。魔狸はただ単に戦いたくない。
「ランありがとう。ハク。まだ川があるのは先か?」
『もうすぐです』
「なら急ごう。本格的に喉がカラカラだ」
『わかりました』
それから数分、魔物に遭わず川に着いた。
相変わらず移動する時はクー太は肩に乗っている。
川は浅いが意外と流れが速く水は濁ってはいない。もっと上流に行けばもう少し澄んでいる水があるんだろうが、まあいいか。
川の縁はコンクリートで舗装されていて、なんか久々に文明の跡を見た気がした。
早速靴を脱ぎズボンを巻くって、水の流れでバランスを崩さないところまで行き水を掬って顔に浴びる。
気持ちがいい。
季節的にはもう秋に入っているがまだそれなりに暑さは感じるし、昨夜は風呂に入れていないから特に水が気持ちよく感じる。
同じ要領で水をのみ、その後は頭を水に浸け髪についた埃やら油分やらを軽く流し川縁に戻ると、クー太達も水を飲んでいた。意外だったのはクレナイも舌をチロチロとだして水を飲んでいる。
……あれで飲めているのか?
川縁には上がらず踝が浸かるくらいのところで、クレナイがチロチロと水を飲んでいるのを眺めていると、全員が一斉に顔上げコチラを見てきたのでびっくりした。
「ど、どうした?」
『あっちに変なのがいるー』
『何かいるわね』
『結構大きいですね』
『匂い的に多分猿だと思いますよ。ご主人様と会う前にここら辺でご主人様くらいかそれより大きい猿がいましたし』
ハクくらいって大きくないか⁉︎ハクが大型犬のふた回りくらい。同じくらいの猿って。チンパンジー?
まあ対岸に居るみたいだし今は合わないからいいか。猿は…可愛いとも格好良いとも思えないからテイムはいいや。
「襲いかかってくるかんじではないんだろう?」
『警戒して様子を伺っているだけではないでしょうか?敵意は感じられませんし』
「ならいい。少しここで休憩していこうか」
『わかったー』
『わかったわ』
『『はい』』
「そういえば。みんなテイムされる前は自我とかはっきりあったのか?テイムされる前とされた後の敵意と好意の差が激しい気がしてな」
『んー。わからないー。ボクは初めからご主人さますきだよー』
『そうねー。なんとも言えないけどこんなはっきり会話したり考えたりしたことはなかったと思うわ。私は敵意向けてないしね』
『私はなんというんでしょう。敵と出会ったら倒さなければって考えしかなかった気がします』
『そうですね。ここまで意識ははっきりしていなかったかと。個体差はありそうですが。私の場合はただ自分より強い群れと会ったから攻撃的になったといえばいいでしょうか…』
ふむ。確かにクー太とランは最初から攻撃的ではなかったし、クレナイとハクは狩られる可能性を感じたから本能的に敵意を向けるしかなかったといえばいいのか。
不思議だなー。
「あ、でもテイムされる前の記憶はあるんだろう?どうだったんだ?」
『ボクは小さな赤い蛇が襲ってきたから何回か倒したくらいかなー?』
『私は体調が悪くて寝てて、起きて移動してたらご主人様に会ったわ』
「ランからは聞いたが、クー太の小さい赤い蛇は初耳だ」
『んー、とね。クレナイの小さいやつー!』
「クレナイは知ってるか?」
『はい。多分ですが…。私の話になりますが主様と会う前はもっと身体が小さかったのです。そして私が覚えてる中で古い記憶は同じ種族達が争ってるところですね。そこで同種同士で争い勝ち残った数匹だけが身体が大きくなりバラバラに散っていった。といったところです。
私はその後間もなく主様に会いました』
ん?てことはクレナイは1度進化してるのか?それにクレナイは魔物になったあとの記憶しか持ってない…?
それとも産まれてまだ間もないのか。
クー太やランは人が住む場所があることも知っていたし魔化する前の記憶はあるようだしな。
「そうか。ハクはどうだ?」
『私は小さかった記憶もありませんし、目が覚めたら色も元々白かったです。あとは同種だというのに灰色のやつらに襲われ撃退しつつ移動していたらご主人様と出会った。って感じです。あ、でも少しは身体が成長した気はしますね。気がする程度ですが。よく考えると昔の記憶というものはあまりないですね』
クレナイは産まれて間もないか、ハクとクレナイ共に変革されてから産まれたってことか。ファンタジー系作品からいうと魔素から産まれた的な感じかね?
本当よくわからない。
アナウンスさん、アナウンスするか解説してください。
「了解。ありがとう。ところで猿はまだいる?」
『いえ、私達が話している間に何処かに行ったみたいですね』
「そうか。なら俺はもう一度川に入ってくるよ」
クー太達には待機してもらってもう一度水を浴びる。
はぁー。サッパリ。電波あればネットに情報とか流れてそうなんだけどなー。
まあこの状況も充分楽しませて貰っているしいいか。
そういえば川魚は魔化したりしていないのだろうか?肉食の魚の魔物とかいたら嫌だな。
考えたら背筋がゾッとした。無警戒過ぎたな。と反省して急いでクー太達のところは戻る。
「じゃあもう少し上流に行きながらレベル上げするか。クー太はここから俺と出会ったところに戻れるか?戻れないならこれ以上先には行かないが」
『大丈夫ー。ちゃんと戻れるよー』
「そうか。なら帰りは頼むな。それじゃあハクはまた先頭で頼む」
『わかりました』
肩に戻って来ていたクー太を撫でてやり、移動を始める。川縁ではなく、少し木々の中に入り川沿いに進んでいく。
にしても小さい赤蛇は見なかったな。小さくて見逃している虫の魔物とかもいるのだろうか。
カブトムシとかクワガタならテイムしていいかな。芋虫やムカデみたいなのは絶対むりだが。
ハクが言うには他にも猪や栗鼠、黒い蛇がいるらしいし、森ならばムササビやアナグマ、モグラとかもいそうだ。
モグラと猪はテイムするか悩むが他はテイムしたいな。
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